商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.827

アウトドアにも気候変動の波が


松本顕介

2021/10/12

 アウトドアブームと言われて久しく、さらにコロナ禍がそのブームを押し上げている。アウトドアと言ってもキャンプだけに留まらず、その種類は様々。先日オープンした渋谷パルコの“都市型”アウトドアゾーン「PARCO OUTDOORPARK」を見ると、おしゃれな切り口による提案が「ああ確かに、これもアウトドアだね」と思わせるパルコらしいラインアップであり、裾野の広さを感じる。絶好調のワークマンも多彩なウェアを投入し、機能性が高く、求めやすい価格で消費者をがっちり掴んでいる。かと思えば「ノースフェイス」はますますそのブランド力に磨きをかけ、ダウンジャケットなどは高機能・高価格で買うにはかなりの勇気がいる。

 数多あるアウトドアの中でも、釣りは王道と言えるのではないだろうか。そしてコロナ禍で釣りもまた人気が高まっているのだという。釣りガールもコロナ前にはブームになっていたと記憶する。釣りのフィールドもこれまた多種多彩であり、家の近くの小川でのフナやクチボソ系から、山奥に踏み込んでの巨大イワナ釣りは登山・キャンプの要素も加わり、アウトドア感満載だ。また湖での釣りはレジャー感が強く、キャンプ、サイクリングとカテゴリーが増え、まるで全部入りのラーメンのようだ。

神奈川県内の海釣り公園施設。潮に晒されて傷みが早い。維持管理が大切だ
神奈川県内の海釣り公園施設。潮に晒されて傷みが早い。
維持管理が大切だ
 そして海。防波堤、砂浜、磯、船と何でもござれだ。そのなかでも手軽に楽しめるのが海釣り公園施設である。釣りブームで釣り人口が増えている一方で、日本釣振興会によると港湾では釣り禁止区域に立ち入るトラブルも増えているのだそうだ。そういった面でも海釣り施設の存在は貴重なのだという。今、海釣り施設は入場制限もかかるほどの人気。ソーシャルディスタンスの観点から、さらに制限がかかるため、休日は入場倍率が上がっている。ただ、最近はWEB予約も活用されており、朝早くから並ぶ必要もなくなってきた。

 手軽さが受けて人気の海釣り公園だが、衝撃のニュースが飛び込んできた。神戸市垂水区にある須磨海釣り公園が2018年の2度の台風で施設が大きなダメージを受けている姿が報じられた。須磨海浜公園沖に約500m延びる桟橋型の釣り場で、桟橋のエキスパンドメタルと呼ばれる金属製網がはがれ落ち、欄干は曲がり、電気系統も修復困難となっている。市の担当者によると、復旧の試算は三十数億円以上が見込まれ、民間から資金援助など探っているが、手を挙げる民間企業は今のところないという。蛇足だが、須磨海釣り公園は橋げたが沖に突き出している形状だが、くだんの市の担当者は、特に沖合あたりは潮の流れが速くてビギナーでは難しいと、ちょっぴり釣り心をくすぐるネタを教えてくれた。それにしても、ブームにありながらも施設が休園とは歯がゆい思いにさせられる。

 改めて、アウトドアは自然に左右されることを思い知らされる。その一方で、近年頻繁に大型台風が各地で猛威を振るう異常気象は、地球温暖化が主因とも指摘されている。その温暖化は、海流も変えて、日本の近海にサンマが寄り付かなくなり、漁獲量減少の一因とも言われている。先日、釣りに行って釣果が冴えなかったのも温暖化のせいにしていいのか。
サイト内検索