商業施設新聞
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第313回

(株)小田急SCディベロップメント 常務取締役 中島良和氏


小田急線の広域で運営・開発
地域特性に合ったリノベも展開

2022/1/11

(株)小田急SCディベロップメント 常務取締役 中島良和氏
 (株)小田急SCディベロップメントは、2020年4月に小田急電鉄のSC事業を承継して設立され、小田急グループの商業施設の運営や開発事業を一貫して担う。小田急沿線という広いエリアで事業展開しており、中核駅での大型施設から地域密着型の施設まで、幅広く事業を行っている。同社の常務取締役の中島良和氏に話を聞いた。

―― 概要から。
 中島 当社は小田急電鉄SC事業部を母体として設立した企業である。また従来の小田急グループでは、プロパティマネジメント(PM)を行う会社が数社あり、ご出店者からすると窓口がたくさんあると分かりづらいこともあり、プレゼンスを高めるためにも一つの会社にまとめることが必要とのことから、設立に至った。
 主に小田急沿線の商業施設の運営と開発を一体的に担っており、そのほか駅構内の商業区画の管理なども行っている。総賃貸面積は約54万3000m²で、賃貸区画は駅構内なども含めると1810区画に及ぶ。

―― 事業範囲が東京から神奈川までと広域ですね。
 中島 新宿などの大型ターミナル駅から、座間や狛江といった“くらしの拠点駅”まで、幅広く手がけている。ブランドも複数展開しており、主に大型商業施設は「ミロード」、「コルティ」のほかに、「相模大野ステーションスクエア」や海老名の「ビナウォーク」、藤沢の「ODAKYU 湘南 GATE」などがある。事業範囲が広いため、それぞれの地域に合わせた展開を意識している。

―― ODAKYU 湘南 GATEは、百貨店からの転換で話題となりました。
 中島 ODAKYU 湘南 GATEは、19年3月に開業した。開業後は好調に推移しており、新型コロナウイルスの影響も食料品を中心に比較的少なかった。施設全体を通して「湘南スタイル」というコンセプトで運営しているので、湘南の暮らしを大切にされている地元の方との相性が良く、地元発祥のヘアサロンや歯医者なども好調だ。また、施設内に公立の藤沢市南市民図書館も入居しており、これも集客に寄与している。
 小田急百貨店のときは、年間約400万人の来店客数だったが、ODAKYU 湘南 GATEとなってからは年間約500万人にまで引き上がった。また、従来の主要顧客の年齢層は高めであったが、SC転換後は30~40代の方も多く訪れているほか、カフェなども充実したため学生の姿も目立つようになった。

―― 神奈川県内では海老名でも開発事業が進められています。
 中島 神奈川県では、海老名周辺でも「ビナガーデンズ」として小田急電鉄が開発事業を進めており、すでに「ビナガーデンズ TERRACE」が開業している。今後、ビナガーデンズは22年度内に商業・サービス棟の開業を控えており、ますます賑わいが増す予定だ。

―― 地域密着型施設で実施した事業などは。
 中島 小田急グループでは、各駅停車駅を暮らしの拠点駅に位置づけており、駅前の商業施設を核に、それぞれの地域特性に合ったリノベーションを行っている。神奈川県の座間駅では駅前広場「ざまにわ」や、コワーキングスペースとしても活用できるレンタルスペース「ざまのま」を整備した。これらは地域や行政と共創したもので、駅前にもう一度賑わいを創出したいという思いから行われた。中間駅のモデルケースとも言えるだろう。
 そのほか、東京都狛江市と当社は、20年に包括連携協定を締結した。連携の第1弾として狛江市内の小田急マルシェ和泉多摩川に創業支援シェアキッチン「FORT MARKET」を、第2弾として小田急マルシェ喜多見に「醸造所・レストラン・酒屋」と「サテライトオフィス」を組み合わせた店舗「SAKE-YA喜多見」をオープンしている。
 我々のように、駅前に商業施設を持つ企業が、地域が持つエリア特有の課題などをヒアリングし、それらを協働して解決に寄与できたらと思っている。

―― 大型ターミナル駅の新宿については。
 中島 新宿は新型コロナウイルスの影響を最も受けており、現時点でも20時以降の客足の戻りが遅い。積極的なてこ入れを行うよりも、ひとまずは様子を見る。また新宿では今後、小田急電鉄が主体となる西口エリアでの大型開発なども控えており、それに伴い一部施設の一時移転や休館などを行う予定だ。

―― 今後の抱負などをお聞かせ下さい。
 中島 当社の商業運営の基本的な考え方としては、「ご出店者に寄り添う」「地域共生」が大きな柱だと考えている。新型コロナウイルスによって、施設運営も大変な時期になっているが、一番大変なのはご出店者の方たちだ。手と手を携えて、これからも一緒にやっていきたい。また、地域共生については今後も強化していく方針で、開発事業だけではなく地域と連携してイベントを開催するなどコミュニケーションも図っていきたい。
 我々は、商業施設の運営・開発の会社として独立したため、将来的には外部のPMも受注したいが、まずは「小田急沿線で出店するなら、ここに任せよう」と思っていただけるような企業に成長したい。沿線では「小田急」という文字に非常に信頼がある。それを傷つけないよう、より信頼を得るように頑張っていきたい。


(聞き手・特別編集委員 松本顕介/新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2426号(2021年12月21日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.363

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