商業施設新聞
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第365回

サッポロ不動産開発(株) 取締役執行役員 恵比寿事業本部長 川村浩一氏


恵比寿ガーデンプレイス、大改装で体験、近隣集客を強化
複合機能活かし企業誘致図る

2023/1/24

サッポロ不動産開発(株) 取締役執行役員 恵比寿事業本部長 川村浩一氏
 恵比寿ガーデンプレイス(YGP、東京都渋谷区)は、商業施設やシネマ、写真美術館、ホールなどの文化施設、オフィスが入るタワー棟やサッポロビール本社棟などからなる複合施設である。2021年2月末に三越恵比寿店の閉店を機に大規模なリニューアルを実施した。その狙いを、YGPの運営を担うサッポロ不動産開発(株)の取締役執行役員 川村浩一氏に聞いた。

―― 大規模改装について。
 川村 YGPは、1994年の開業から三越が核店舗として出店していたが、21年2月に閉店した。百貨店がかつてのパワーに陰りがあったこともあり、閉店以前から今後どうあるべきかの議論を進めていた。その結果、ターゲットを「ライフクリエイターズ(日々を自分らしく愉しみながら恵比寿のまちに暮らす・働く・訪れる人)」と定め、地下2階地上2階建て約2万2000m²の旧商業棟を「センタープラザ」として、新しい“すごしかた”を創造するためのリニューアルを実施した。今まで以上に近隣住民に商圏を絞るとともに、YGPで働くオフィスワーカーが帰りにちょっと立ち寄れる利便性の高いMDとした。併せて体験価値が得られる店を揃えた。

―― 具体的には。
 川村 22年4月15日、地下2階を「フーディーズガーデン」として先行オープンした。従前は百貨店型デパ地下で、日常使いのための品揃えが不足していたが、ライフコーポレーションの食品スーパー「セントラルスクエア」のほか、「明治屋」が出店した。この2店を核に食関連のテナントが充実し、好評価を得ている。都心でありながら約450台収容の駐車場も強みで、商圏が広がっている。

―― 11月8日にグランドオープンしました。
 川村 1階にゴールドウインが「プレイアースキッズ」「ザ・ノース・フェイス キャンプ」など3ブランドを関東最大の売り場面積で展開した。また、DCM DIY placeはDIYが体験できる店づくりで、来店客の反応はいい。「TSUTAYA BOOKSTORE」も子育て世代のニーズに対応したMDとなっている。またカジュアルレストラン「Atelier LaLa」のほか、カフェ3店も個性を活かした店舗とテラスを設け、滞在時間を増やす役割を果たしている。

―― オフィスは。
 川村 JR路線側の「グラススクエア」は飲食店がメーンだったが、大部分をREALGATEが運営するスモールオフィス「PORTAL POINT」とした。第1弾は19年秋に480坪で開業した。第2弾が22年8月で、残りの290坪をオフィスとした。
 センタープラザ2階はすべてプラスのショールーム型オフィスとなったほか、地下1階の3分の1は当社直営のスモールオフィス。賃借面積1万3000m²のうち、3分の2が商業、3分の1がオフィスとなり、タワー棟にはないオフィスニーズを取り込んでいる。

―― 来場者の変化は。
 川村 30~40代の子育て世代が増えるなど、客層が変わった。

―― イベントは。
 川村 コロナで開催できなかったが、一部再開した。「恵比寿文化祭」や、東京写真美術館との共催による「恵比寿映像祭」など従来のイベントに加え、今後はテナントとのコラボを増やしたい。開業時、ゴールドウインとDCMとの共創による「PLAY EARTH PARK」は多くのお子様連れファミリーにご利用いただいた。また、サッポロビール本社前のサッポロ広場でNPO法人アーバンファーマーズクラブが運営する恵比寿ガーデンファームにライフコーポレーションが加わり、食育や調理に関するワークショップを開催したところ盛況だった。

―― YGPのイメージは開業当初から変化は。
 川村 豊かな時間、豊かな空間といった価値を提供する理念は変わらないが、ややもすると当たり前にそこにあり、わくわくする感覚が薄れてきたのは感じている。商業テナントだけでなくオフィステナント、文化施設、地域との共創を進め、お客様ニーズに沿った価値提供に取り組んでいく。

―― YGPを選ばれるオフィスとするには。
 川村 建物自体は新しくならないが、機能面では最新施設に劣らないよう更新しながら、商業、文化施設といった複合施設としての付加価値を前面に押し出す。入居テナントの経営者の方に聞くと恵比寿の街がとても好きだ、こだわりがあるという意見が多い。その辺が今後のヒントになる。働き方が変わる中で、オフィスで働きたいという気持ちを起こさせる仕掛けが必要だと思う。

―― 今後の抱負を。
 川村 22年12月6日の「ブルーノート・プレイス」の開店をもって大型リニューアルは完了した。23年末ヱビスビール記念館がリニューアルオープンする。ヱビスビール発祥の地なので、ヱビスブランドとの共創を強化したい。また24年に開業30周年を迎えるが通過点に過ぎないと捉えており、100年続くブランドとなるよう運営していきたい。

(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2479号(2023年1月17日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.392

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