商業施設新聞
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第378回

(株)東急モールズデベロップメント 執行役員 営業本部長兼事業副本部長 青木太郎氏


たまプラーザテラスを改装
地域に根差した施設運営で街を発展

2023/4/25

(株)東急モールズデベロップメント 執行役員 営業本部長兼事業副本部長 青木太郎氏
 (株)東急モールズデベロップメント(東京都渋谷区)は、「グランベリーパーク」(東京都町田市)や「二子玉川ライズ」(東京都世田谷区)など、東急線沿線の商業施設の運営を担っている。新型コロナウイルス感染が落ち着きを見せていることから、各施設とも最も厳しかった時期を脱却し、賑わいが戻ってきているという。また、「たまプラーザテラス」(横浜市青葉区)ではリニューアルを進めており、施設、そして街の魅力がこれまで以上に増しそうだ。同社執行役員の青木太郎氏に聞いた。

―― たまプラーザテラスのリニューアルについて。
たまプラーザテラスに新しく出店した「Kuradashi」(イメージ画像)
たまプラーザテラスに新しく出店した「Kuradashi」(イメージ画像)
 青木 開発計画を進めていたころ、周辺住民は60代以上のシニア層が中心だった。それから15年ほど経ち、その子供世代が孫世代を連れて戻ってきたり、子育てのしやすさなどに魅力を感じたファミリー層が沿線外から流入したりしている。そういった状況を踏まえ、多世代が集える場所にするため、リニューアルによるアップデートを実施することにした。

 今回のリニューアルで、改装5店に加えて新店5店がオープンした。新店の1つ「Kuradashi」では、捨てられてしまう可能性のある商品を販売しフードロスの削減を図っている。これまでポップアップを中心に展開していたが、「サステナビリティへの関心が高い地域に出店したい」という店舗側の想いがたまプラーザの土地柄にマッチし、常設1号店を出店することとなった。


―― 2010年開業当時と比べてMDに変化は。
 青木 郊外の商業施設は、大胆に変えていく部分と変えてはいけない部分がある。「10年ぶりに地元に帰ってきたら、馴染みのある店が閉店していた」というのは寂しいもの。たまプラーザテラスの場合、屋外には花屋や洋菓子店など街歩きを楽しめるような店舗を配置しているため、その顔触れはほとんど変わっていない。一方、インモールの店舗はその時のトレンドに合わせて大胆に変えている。

―― 一方、グランベリーパークの状況は。
 青木 おかげさまで好調を維持している。郊外型オープンモールという点がお客様に安心感を与え、コロナによるダメージを最小限に抑えることができた。商圏は20kmに設定しており、近郊の海老名や八王子などからの来街もある。また、想定よりもインバウンドの来訪も多い。

―― グランベリーパークはモールとアウトレットとのハイブリッド型ですが、両立させることの難しさはありますか。
 青木 他に先駆けてハイブリッド型を取り入れたことによる難しさはある。ただ、日本ではアウトレットかプロパーかをあまり気にしない風潮があるとも感じている。事業者側が違いを意識しすぎているだけで、実際は、消費者は良いものであればアウトレットでも買うし、逆にプロパーのものでも気に入らなければ買わないのだろう。その意味では、アウトレット・プロパーを問わず、お客様に気に入っていただける商品を揃えることの方が重要だ。

―― リニューアルや増床の計画は。
 青木 アウトレット、食物販を中心に、期間限定店舗区画を設け、常に鮮度の高い店舗構成を心がけている。また、東急グループは周辺にも複数の土地を所有しているため、街にとって魅力的な活用方法を検討している。

―― 二子玉川ライズも好調のようです。
 青木 非常に順調だ。コロナ禍で開催できなかったイベントが復活してきたことで、再びイベントと施設が一体となったライズらしい運営ができるようになっている。
 二子玉川には、おそらく個人事業主をされているような感度の高い若年層が増えている。ライズが彼らの受け皿として機能できていることが街の活性化につながっている。彼らのニーズに応え続けるために、郊外でありながらも渋谷や銀座などの都心に近いMDを構成している。

―― 貴社の施設づくりの特徴を改めて教えてください。
 青木 我々はあくまでも街づくりの一環として商業施設運営を行っている。その中で、お客様である地域住民とともに街を発展させていくことが必要だと認識しており、地域と共栄するという意識をハードにも反映している。例えばたまプラーザテラスは、あらゆる場所からエスカレーターなどで街に出ていけるようなつくりになっている。我々の施設だけで買い物を完結してもらおうとせず、周辺の店舗にも足を向けてもらう。そうした施設づくりがたまプラーザテラスにも頻度良く来ていただくことにつながると考える。

―― ECの台頭が目覚ましいですが、これからの商業施設に必要なものは。
 青木 実物を見て、店員と話しながら買い物をしたいというニーズはなくならないと思ってはいるが、それでも今後は買い物施設というだけでは商業施設の客足は減っていく。目的がなくても来てもらう施設であるために、やはり地元のお客様が快適に過ごすことのできる空間を提供することが必要だろう。

(聞き手・特別編集委員 松本顕介/安田遥香記者)
商業施設新聞2491号(2023年4月11日)(2面)

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