電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第507回

「半導体スーパーパワー国家」目指す韓国


韓国版imecも設立へ

2023/6/16

 韓国政府は、産官連携の総力戦で「半導体のスーパーパワー国家」戦略を打ち出した。韓国半導体メーカーが確保している先端半導体技術をベースに、大規模な設備投資や政府の積極的な支援などを通して、国際競争力の強化に取り組む。

半導体国家戦略会議を主宰する尹大統領(中央、6月8日)写真:韓国大統領室
半導体国家戦略会議を主宰する尹大統領
(中央、6月8日)写真:韓国大統領室
 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は6月8日、青瓦台・迎賓館にて第17次非常経済民生会議の半導体国家戦略会議を開いて、「グローバルの半導体市場はいま、いわば産業戦争の真っ最中だ」と位置づけて、国家総力戦で臨むことを強調した。尹大統領はこの日の会議で「スマホや自動車のほか、人工衛星や戦略武器体系などは、それに採用された半導体の性能に左右される」とし、「軍事分野に人工知能(AI)がマッチされつつ、半導体は国家安保のコア産業に浮上している」と切り出した。

 この日の会議では、韓国政府の関連省庁をはじめ、半導体学会やメーカーのCEOなど、半導体関連の専門家らが一堂に会し、今後の発展方向と戦略などを協議した。特に、メモリー半導体に対する「超格差技術」と非メモリー半導体の競争力確保、サプライチェーンリスクの管理や技術・人材確保の方策などについて真剣な議論を交わした。

 産業通商資源省(日本の経済産業省)は「今回の会議で提議された専門家らの意見と急変する半導体産業の環境や政策などを総合的に考慮し、韓国の半導体政策に反映したい」と意気込む。同省はこの日、韓国半導体産業の育成のための政策方向を提示した。メモリー分野での高いポジションを維持するために、プロセッシング・イン・メモリー(PIM)、電力半導体、先端パッケージングなど、「破壊的イノベーション」につながる有望技術を先取りするためのR&D強化に臨む。来る2028年までに総額4000億ウォン(約430億円)を投じるほか、PIMの設計技術と先端装置・部品の技術開発や29年まで1兆ウォン(約1075億円)強を策定した次世代知能型半導体プロジェクトなどを粘り強く進める。

 また、電力半導体や車載半導体、先端パッケージングなどの有望技術を先がけて確保するために、1兆4000億ウォン(約1505億円)規模の予備妥当性調査も進める。さらに、半導体メーカーの投資資金の確保をサポートするために、23年に5000億ウォンを支援するのを皮切りに27年までに総額2兆8000億ウォン(約3011億円)規模の政策金融を支援する計画だ。

先端ロジックなど非メモリー分野を重点強化

 韓国政府は、現状でメモリー中心の半導体サプライチェーンを先端ロジックなどの非メモリー分野にも拡大する政策づくりも急ぐ。ファブレスに対する試製品製作支援の拡大など、ファブレスとファンドリーとのエコシステム構築のための共生プロジェクトを強める。

 また、サプライチェーンリスクを低減するために、装置・部材の国産化のための先端半導体技術センター(ASTC)建設の予備妥当性調査を経て、官民共同で進める。ASTCは、韓国型imecとしてファブレスと装置・部材の国産化を目指し、新技術に対するテストベッドと優秀人材育成の前哨基地となる。

 韓国における半導体産業の位置づけは、全体貿易規模の20%を占めており、年間設備投資額の55%を担う国家の大黒柱産業と称賛されている。その半導体をめぐるグローバル情勢は、米中の覇権戦争で象徴されるように熾烈な競争が展開されている。米国はインテルの復活とサムスン・TSMCなどの外国半導体メーカーの工場誘致などを通して、自国内の半導体エコシステム復元に取り組んでいる。また、日本もTSMCの工場誘致などで活気を取り戻している。さらに、EUは域内の半導体生産割合を高めるための大規模な工場建設を推進している。

 こうした半導体主要国の動向について尹大統領は「政府ができる全ての政策を総力戦で支援し、半導体スーパーパワー国家に向けて邁進していきたい」と胸を膨らませる。

電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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