電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第102回

パイクリスタル 代表取締役 山口清一郎氏


大学発の有機半導体ベンチャー
IoTセンシング用途を視野

2014/12/26

パイクリスタル 代表取締役 山口清一郎氏
 パイクリスタル(株)(大阪市淀川区西宮原2-7-38、Tel.06-7507-1118)は、2013年2月に設立された有機半導体のベンチャー企業。デバイスの研究・開発をはじめとした有機半導体に関する様々な事業を展開している。代表取締役の山口清一郎氏に話を伺った。

―― 貴社の概要から。
 山口 当社は、有機半導体の権威である東京大学の竹谷純一教授(同社の最高技術責任者も兼任)が開発した高性能有機半導体の技術を実用化するために、13年2月に設立したベンチャー企業である。現在、有機半導体材料を用いた実用的なデバイスの開発のほか、有機半導体材料の販売や試作品の開発、コンサルティング業務など、有機半導体に関する幅広い事業を手がけている。

―― 技術の特徴は。
 山口 有機半導体は、フレキシブル化が可能、製造工程が簡易、低コストなどの特徴から、次世代技術として長年注目を集めていたが、デバイスにした際の安定性がなく、電荷の移動度が低い(1cm²/Vs以下)ことが実用化への課題であった。しかし当社は、独自の技術により、これまで多結晶が用いられていた有機半導体を単結晶化し、印刷できる単結晶有機半導体のトランジスタの開発に成功。従来に比べ1桁以上高い電荷の移動度(10cm²/Vs)を持ちながら、安定性の高い材料を実現した。
 13年にはNEDOの「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」ならびに経済産業省の「平成25年度戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択され、現在、開発した材料を用いたディスプレーやセンサー用回路などの開発を進めている。

―― 開発以外で注力されていることは。
 山口 有機半導体を普及させるパートナー作りも進めている。具体的には材料の提供、デバイスの試作サービス、コンサルティング業務など、有機半導体を新しい事業や開発テーマとして進めている企業に対して技術サポートを行っており、この分野で取り組みを進めている企業とは積極的に関係を構築したいと考えている。将来的な事業の中心は、有機半導体に関するライセンスビジネスと考えているが、高い付加価値を生み出せる製品分野については自社での展開や、セットメーカーとの協業なども視野に入れている。

―― デバイス製品の用途について。
 山口 様々な用途が考えられるが、有機半導体デバイス市場が本格化を迎えた際に、最大の消費先となるのはIoT(Internet of Things=モノのインターネット)関連のセンサーデバイスになるとみている。IoTのセンシング分野は、環境に応じて求められる仕様が変わり、かつコスト要求が厳しい分野になることが予想される。有機半導体は1000~1万個レベルの少量多品種生産にも適しており、技術の優位性が発揮できる分野であると考えている。

―― 今後の方針を。
 山口 1年~1年半後をめどに、有機半導体材料を用いた戦略的デバイスを発表したいと考えており、まずはそこに最注力していく。そのなかで量産化できるレベルに達したとき、まずターゲットになるのが、先にも述べたがIoTのセンシングになるだろう。
 それ以降は様々な分野に広がっていき、想像もつかない新しい用途が出てくることも十分に考えられる。例えば、将来的には3Dプリンターと組み合わせ、ボタン1つで有機半導体回路が組み込まれた製品を作るといったこともあり得る。そうした可能性も有機半導体は秘めており、そのような時代になったとき、市場からキープレーヤーの企業として位置づけられるように今後も事業を推進していきたい。


(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年12月24日号3面 掲載)

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