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第547回

(株)ハイテック・システムズ 取締役 FPD部長 鄭崗氏


FPD工場の再編案件を多数担当
メカトロ部門でPV工場も受注

2023/10/20

(株)ハイテック・システムズ 取締役 FPD部長 鄭崗氏
 (株)ハイテック・システムズ(横浜市港北区)は、2022年度に売上高280億円を達成し、いまや半導体・FPD中古装置業界で世界最大クラスの売上規模を誇るまでに成長した。個別装置の売買に限らず、製造ラインの移設・改良などリノベーション事業を幅広く手がける同社において、FPD事業を統括する取締役FPD部長の鄭崗氏に現在の取り組みや今後の展望を聞いた。

―― ご略歴から。
 鄭 中国吉林省で生まれ、幼いころから日本のエレクトロニクス製品に強い憧れがあったため、大学を卒業後にnmsホールディングスへ入社し、ソニー浜松テックでゲーム機用光ピックアップの製造に従事した。将来はその製造ラインを中国へ移設して生産規模を拡大する役割を担う予定だったが、リーマン・ショックで計画がなくなり、残念ながら浜松テックも閉鎖となった。
 一時は帰国を考えたが、09年に当社の求人に応募して、すぐに採用していただいた。当時の当社は、パイオニアのPDP工場の集約など複数の案件を手がけていたため、リーマン・ショックの直後だったにもかかわらず、大変忙しかった。

―― 業績が好調です。
 鄭 おかげさまで22年は過去最高業績を達成した。これまで主力だったFPD部門の売上構成比は29%にとどまったが、近年強化してきた半導体部門の構成比が66%に高まり、成果を出すことができた。
 ご存じのとおり、半導体業界には中古業者が世界に100社あまり存在し、中古装置市場も価格競争が激しく、薄利多売の様相を呈している。だが、FPD業界では、当社が30年以上にわたって培ってきた事業ノウハウや実績をもとに、国内の全ユーザーから当社にまずご相談をいただく流れができており、安定した収益が生み出せている。

―― 国内ではFPD工場の再編が相次ぎました。
 鄭 詳しくはお話しできないが、すでに公表済み・作業完了済みの案件としてパナソニック液晶ディスプレイ姫路工場、メルコ・ディスプレイ・テクノロジー泗水工場、ジャパンディスプレイ東浦工場、JOLEDの能美および千葉工場などを含め、大変多くの依頼を受けている。日本のFPD企業から多品種生産対応やデボトルに向けて中古装置を購入したいという依頼を受けた場合、海外から仕入れて移設・立ち上げを手がけるケースもある。
 当社の強みは、工場内の設備・備品の一括撤去業務を請け負うことができ、再構築や中古装置の売買・移設までをワンストップで手がけることができる点だ。加えて、特定建設業の認可を取得しているため、元請けとして工事を請け負えることも顧客の安心感につながっていると思う。

―― 23年の見通しは。
 鄭 受注残などから見て、売り上げ・利益ともに22年からほぼ横ばいになると想定している。当社は半導体部門とFPD部門のほかに、半導体・FPD以外の分野の工場再編やパーツ事業を手がけるメカトロ部門があるが、23年はこれら3部門がほぼ同じくらいの売上構成になる。ソーラーフロンティア国富工場の撤去工事を新たに手がけており、これがメカトロ部門の伸びにつながる。

―― 国内ではFPD工場の整理・集約がかなり進みました。
 鄭 日本の液晶産業で蓄積してきた撤去・移設のノウハウを、電子部品など他業界にも横展開していきたい。パーツ販売の強化にも注力する。また、当社が手がけるかは別として、液晶生産の歴史が15年を超えた中国でも今後、FPD工場のライン再編案件などが出てくるはずで、その動向に注目している。

―― 今後の抱負を。
 鄭 全社従業員100人のうち、FPD部門には20人が在籍しているが、人材はまだ十分ではない。あくまで「人」が大事な事業であり、若いエンジニアを増員して、教育やトレーニングの充実も図りたい。これに向けて、11月に本社を横浜駅前に移転する予定だ。引き続き日本のFPDメーカーと緊密に連携し、顧客の抱える課題を解決できるソリューションを提供し続けたい。


(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2023年10月19日号6面 掲載

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