電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第558回

シリコン列島ニッポンの様相は四国にも波及効果を期待するのだ!


高松テクノポリスは20周年を迎えて、高松帝酸の活躍が引っ張る

2023/12/1

 四国の高松に3日間も滞在している。四国第一の都市は、やはり松山であるが対岸に岡山がすぐ、という立地状況にある高松は物流の拠点であり、事実上四国の中核を担う都市である。また、文藝春秋を創刊した菊池寛の生まれたところなのだ。彼がいなければ、芥川賞も直木賞も誕生することはなかった。

 それはともかく、今年で20周年を迎えた高松テクノポリスで講演し、地元のレクザム香川、アオイ電子そして徳島の日亜化学工業などの方々と交流するためのツアーである。大阪からは日本スペリア社の西村哲郎社長も駆けつけて、この高松テクノポリスの意義を称え、お祝いの言葉を述べていたのだ。

 高松帝酸にあって代表取締役社長の任にある太田貴也氏は、このイベントが四国全体の活性化につながるとして、こうコメントしていた。

 「弊社はひたすら酸素ボンベを届けるだけの会社でした。しかして、高松テクノポリスを主催し、開催を重ねることで多くの学びと交流が生まれた。とりわけ、半導体産業との出会いがあり。そこから様々な企画も生まれた。四国の多くの有力企業が一堂に会することで、団結力も高まっていった」

高松帝酸の太田貴也社長
高松帝酸の太田貴也社長
 高松帝酸は、最近になってフッ素の総合研究棟を立ち上げ、半導体やプリント基板などに応用する開発に注力している。また、エアコンの世界的な大手であるダイキン工業とも協業を強化している。もちろん、日亜化学などのデバイスメーカー、住友重機械イオンなどの装置メーカーなどにもガス供給をきっちり行っており、まずもって四国ナンバー1のガス会社と言っていいだろう。

 ただ、ここに来て九州にはTSMCの熊本第一工場、第二工場、ソニー熊本の大型新工場、ロームの宮崎の新工場進出などがあり、東北では台湾パワーチップの宮城新立地などが相次ぎ、広島ではマイクロンの工場増設の動きがある中で四国は取り残されている感がある。三菱電機の高知工場撤退もあり、ルネサス西条の活気も一時ほどではなく、半導体の新工場立地にいたってはまったくないという状況が続いているのだ。

 シリコン列島ニッポンの様相がある中で、四国の存在感が薄れている。かつて明治維新を担ったのは土佐であり、坂本龍馬をはじめ多くの有能な人材が四国から出ている。半導体をはじめ、電子デバイス分野で四国の可能性を見直す機運が出てきてもおかしくはない。人材は豊富であり、土地も豊かで、日本の原風景があるところなのだ。お遍路さんに象徴される人々の優しさもある。

 高松の地政学的な強みは、大阪まで2時間で行けることだ。広島大学が提唱する瀬戸内バレーの一角にもなれるところだ。山口と連携できれば、九州ともつながる。さらに文化的にも優れており、瀬戸内国際芸術祭は世界にその名を知られている。

 ところで、レクザムの本社は大阪であるが、四国一円に多く拠点を構えている。高松、宇和島、丸亀、徳島、愛媛に展開しており、電子コントローラをはじめ半導体製造装置関連機器、自動車部品など多岐にわたる製品群を持っているカンパニーであり、今回の高松テクノポリスはレクザムホールで開催された。

 高松の美術館通りを歩き、讃岐うどんを楽しみ、ニッポン半導体の行く末を深く考えてみることにしよう!


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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