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第105回

ソニー(株) 業務執行役員SVP 上田康弘氏


技術で最先行し17年にデバイス1.5兆円
15年度は14年度を上回る設備投資

2015/1/23

ソニー(株) 業務執行役員SVP 上田康弘氏
 ソニー(株)(東京都港区港南1-7-1、Tel.03-6748-2111)の半導体事業は、ここにきてかなりの好調で推移している。半導体分野の売り上げは、2013年度に4700億円(うちイメージセンサーは3200億円)だったが、14年度は一気に20%を超える伸びを示し、5700億円(同4100億円)に押し上げる見通しだ。半導体の外販比率も12年度62%、13年度70%、14年度78%と急拡大しており、ソニー内部で使う率よりも外売りが充実していく方向にある。
 17年度にはイメージセンサーおよびそのモジュール、システムを含めた売り上げが1兆円に近づくとの見通しもある。現在のCCDを含めたイメージセンサーの月産能力は約1億個となっており、この分野で世界トップシェアをひた走っている。業務執行役員SVPであり、デバイスソリューション事業本部のイメージセンサ事業部長の上田康弘氏に今後のソニー半導体の事業展望および設備拡大について話を伺った。

―― まずはソニーのデバイス分野の事業現況についてお伺いします。
 上田 13年度におけるトータル売り上げは7423億円となっており、このうちイメージセンサーが最大分野で3200億円、モバイルやデジタルカメラ、さらには監視分野などで用途が拡大している。またLSI分野も1200億円となっており、ゲーム用LSI、半導体用レーザー、RFSWなどが主力だ。エナジー分野は1400億円、ストレージメディアは900億円、カメラモジュールは500億円となっている。
 14年度は1177億円を上乗せする勢いであり、8600億円に押し上げる見通しだ。営業利益は630億円に達するだろう。スマートフォン市場が好調であることに加え、イメージセンサーの収益改善を図ったことが大きい。

―― CMOSイメージセンサーの設備能力は。
 上田 長崎TECおよび熊本TECで量産しているが、現状では月産6万枚(300mmウエハー換算)で、まさに作りきれないほどの活況だ。このため、新たに加わった山形TECの設備導入を急いでおり、15年度上期の早い時期に本格稼働に持ち込みたい。なお、CMOSイメージセンサーの月産数量は7500万個、CCDイメージセンサーは同1200万個となっていたが、現状ではトータルで月産1億個水準まで引き上げつつある。CCDは鹿児島TECが生産を担当している。

―― 半導体設備投資の推移については。
 上田 12年度に720億円、13年度に670億円、14年度は800億円の見込みである。CMOSイメージセンサーに対する投資の推移は、12年度550億円、13年度450億円、14年度500億円の見込みだ。15年度の半導体設備投資については山形TECの本格立ち上げおよび長崎、熊本、鹿児島をそれぞれ増強するため、14年度を上回る規模を考えている。

―― CCDおよびCMOSを含めたイメージセンサーでは世界トップを走りますね。
 上田 ありがたいことに生産金額でいえば世界の約35%のシェアを持っている。今後も設備増強に手を抜くことなくシェアを引き上げていきたいと思っている。投資で先行するだけでなく技術開発でも現場に対して2年以上先行しろと言っている。当社のCMOSセンサーが強みを持つのは高感度、超高速、高SN比といった基本特性の高さにある。得意技の裏面照射で最先行し、さらに積層型で確固たる地位を築いた。今やソニーの作るCMOSセンサーは60%が積層型になっており、これは他社が真似のできないオンリーワン技術だといってよいだろう。

―― 1億画素も開発中だと聞きますが。
 上田 一般的なスマートフォンについては2000万画素、デジタルカメラでは2400万画素を出している。一眼レフでは3600万画素も市販している。1億画素は充分に作れる土壌にあり、画素数を上げていくことには多くのメリットがある。余っている画素を違う機能に使うことができる。電子ズームの解像度が上げられる。SN比もさらに引き上げられる。今後もスピード特性、高感度を追求しながら、画素数引き上げも図っていく考えだ。

―― M2Mの時代への対応は。
 上田 もちろん考えている。M2MまたはIoTの概念は、新たな社会インフラに半導体やセンサーを徹底的にフル活用しようということだ。CMOSセンサーは圧倒的に民生分野で使われてきたが、今後は橋の老朽化を見分ける用途や信号機、さらには道路などの社会インフラ系に、モジュールとしてよい製品を作り貢献していきたいと思う。監視カメラという分野では中国メーカーが世界でNo.1、No.2となっているが、そこにもソニーのCMOSセンサーが多く使われている。当社のCMOSセンサーがこうした社会インフラ系や自動車などに、今後アプリを拡げていくことは確実だ。この場合、テレビやビデオで培ったディスプレー用の画像処理を併せ持っていることが、ソニーの最大の強みだと考えている。いわば撮像と再生の一体化はお家芸の世界なのだ。

―― 中長期の見通しは。
 上田 市場の先駆者であり続けることを常に心がけたい。デバイス競争力を高めて競合を凌駕したい。システムソリューションで顧客価値を高めたい。技術の差異化に徹底注力したい。いわば、セットの競争力の源泉となるデバイスイノベーションを起こしたいのだ。17年段階でデバイス分野全体として1.3兆~1.5兆円の売り上げを目標にしている。その時点でイメージセンサーは63%を占めるだろう。半導体全体としては、カメラモジュールや各種LSIを含め、1兆円に近づくよう全力を挙げていきたい。


(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年1月22日号3面 掲載)

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