電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第574回

電気のない場所でもポータブル電源を活用すればスマホも動き、調理もできるのだ


EcoFlowの画期的製品は、地域貢献も果たしサスティナブル社会実現

2024/4/5

 世界には83億人が暮らしているが、その半分にあたる40億人がスマホもパソコンも持っていないということをご存知であろうか。そうした事情は未開発国に圧倒的に多いのであるが、もちろん貧困が一番の理由であろう。そしてもう1つの理由は、電気が来ていないからである。発電所もなく、電線ケーブルもなく、Wi-Fiも届かないという環境が世界にはいっぱいあるのだ。そうした時に、役に立つのがポータブル電源なのである。

 「能登半島地震の時には、電気が使えなくなり多くの人たちが大変な思いをしました。そこで私たちはポータブル電源76台を無償で提供しました。モバイルバッテリーもいっぱい届けました。石川、富山、福井の被災者の方から感謝の言葉をいただきました」

伊藤麗雅氏
伊藤麗雅氏
 こう語るのはEcoFlow Technology Japan(株)にあって、広報の任にある伊藤麗雅氏である。同社はポータブル電源の分野で世界トップシェアを持つカンパニーであり、2017年に設立された。この分野では後発であったが、テクノロジーおよび使い勝手の素晴らしさがユーザーを捉えて、業績を拡大している。

 100以上の国や地域に展開しており、全世界に250万人以上のユーザーがおり、1400億円以上の売り上げを持ち、この間400%を超える成長率を達成してきたのだ。

 「世界でアウトドアレジャーを楽しむ人は1億7000万人くらいいます。しかし電源のない山、海などにおいては凄く困ることが多いのです。また約5億人がオフグリッドのソーラー発電から電力を得ていますが、蓄電システムが問題になりますね。そこで必要なものは何といってもポータブル電源なのです」(伊藤氏)

 EcoFlowのポータブル電源は、太陽光発電や商用電源などの従来方法のほか、EV(電気自動車)充電スタンドからも充電することができる。また独自の冷却機能により、バッテリーの劣化を抑えて寿命を伸ばす役割も果たす。家電機器のほとんどに給電するわけであるから、停電、災害による電気の止まりにも、しっかりと対応できるのだ。どんな環境でもスマホは動き、調理だって可能なのである。

 最新製品は同社の歴史上、最大容量・最高出力のポータブル電源「EcoFlow DELTA Pro Ultra」が発表され注目を集めている。6kwh容量、6000W出力、5.6kWのソーラー入力という業界最高峰のスペックを作り上げた。エアコンなどの200Vパワーにも対応できるわけであり、自宅でEVやプラグインハイブリッド車の充電も可能。刻々と変化する電力ニーズに応えることができる優れものなのだ。

 EcoFlowのコンセプトは、電力へのアクセスは基本的人権であるという信念に基づいている。そして、世界の人々を電力不足から解放するための手法に着手したのだ。EcoFlowは環境にやさしいエネルギー・ソリューション企業として業界をリードするポータブル電源、ソーラー技術、拡張可能なエコシステムを備えた世界初のポータブル住宅用電源、そして様々なスマートデバイスを提供している。

 さて、日本での展開は70%を代理店が担っている。店頭販売では、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダデンキ、コストコなどの大手量販が扱っており、評判はいいという。大手商社では、丸紅が拡販を進めている。オンラインショップでは、楽天、アマゾンなどが取り扱っており、「RAKUTEN SHOP OF THE YEAR」を22年と23年に2年連続受賞しているのだ。

 「地域貢献活動にも全力を挙げています。電源の少ない南アフリカ、インドネシアの村への寄付、大きな山火事や吹雪で困っている人たちにも寄付活動を行っているのです。日本国内では、港区、品川区、長崎県、鳥取市など防災活動に対し支援すべく寄贈を行いました」(伊藤氏)

 思えば、日本という国は地震列島であり、火山列島であり、年がら年中のように大きな災害に見舞われている。大型地震だけをとっても阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など枚挙にいとまがないほどである。そうした折に常に人々が苦しむのは寒さであり、トイレであり、食事であり、そうした被災者たちの姿を見るにつけ「なんとかならないのか!」と思う人たちは多いだろう。当たり前の暮らしを守り続けるためにはどうあっても電源の確保がもっとも重要なのである。EcoFlowの今後の活動に大きな期待を寄せたいと思っている。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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