電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第109回

ローム(株) 常務取締役 高須秀視氏


新材料と異分野融合で新事業創出
単体から複合化へシフト

2015/2/20

ローム(株) 常務取締役 高須秀視氏
 今回はロームの将来を担う研究開発活動の陣頭指揮をとる常務取締役の高須秀視氏に話を聞いた。

―― 研究開発活動における考え方、方向性を。
 高須 研究開発本部では、10~20年後を見据えた要素技術の開発を行っている。当社は1990年代初頭から他社に先駆けてMore than Mooreを掲げ、シリコン(Si)半導体以外の分野の開拓を進めてきた。
 アプローチ方法としては2つある。1つは新材料で、演算、メモリー、センシング、アクチュエーターなどのアクティブな機能を持たせた薄膜とSiを融合することにより、新たなデバイスの創出を目指すもの。もう1つは異分野技術の融合だ。例えばフォトニクス、メカトロニクス、医療、バイオなどの技術を組み合わせ、エレクトロニクスの幅を広げていく。

―― ターゲットとする市場は。
 高須 安心・安全・健康・エネルギー分野にフォーカスしていく。具体例としては、IoT(Internet of Things)のセンサーネットワークが挙げられる。これは無線技術と各種センサーの組み合わせに加え、省エネ化のためのローパワー技術が必要である。当社は多様なセンサーと省エネ化に強みを持っており、これらを活かして参画していく。エネルギー分野ではSi、SiCパワーデバイスを展開し、センシング技術との組み合わせも図っていく。

―― 主な研究開発事例について。
 高須 SiCはデバイスそのものの高性能化に加え、モジュールや回路など周辺と組み合わせることで最大限に性能を発揮することを目指している。SiやGaNデバイスとの組み合わせにも取り組む。
 センサーはX線、γ線などの短波長から長波長のテラヘルツ帯まで幅広く手がけている。CIGSイメージセンサーは可視光と近赤外線の両方を見ることができるもので、血管をより明瞭に可視化できる。可視光と近赤外線とを切り替えると人体の表面と内部を見比べることができ、糖尿病検査やがんの観察に利用できると考えている。
 また、ロームグループとしては、UVセンサーの開発も進めている。CIGSと同じシステムに組み込むことで紫外から近赤外までをカバーし、分析に応用可能になる。これらのセンサーはいずれもSiデバイスでは見えない領域にも対応しており、より安心、安全な医療や食品などの検査にも展開していく。
 さらに、RTDを用いたテラヘルツダイオードも開発している。容器内を可視化することができ、有機物の分析や手荷物検査などに活用できる。医療用をはじめとした通信向けとして、総務省のプロジェクトに参画して開発を進めている。
 強誘電体の開発では、演算への応用を進めている。不揮発で、スタンバイのパワーがゼロで、ロジック状態の長期保持を実現。状態が変化しないロジック部をオフにすることも可能で、大幅な省電力化が図れるノーマリーオフコンピューティングへの応用を目指している。加えて、中国清華大学と共同で不揮発性プロセッサーを開発した。橋梁の状態を調べるセンサーネットワークに用いられ、省電力化のメリットを活かしている。

―― 今後の新製品開発の方向性について。
 高須 ビジネスモデルの変革を考えている。単体の部品を提供するだけでは利益を取れない市場環境になっており、複合化を進めなければならない。ただし、利益が取れる組み合わせであることが重要だ。
 例えば、SiCではデバイスに加えてリファレンスボード、モジュール、シミュレーション環境までを一貫で提供し、高付加価値化を図る。また、センサーネットワークでは直接の顧客より下流の顧客を含めたパートナーシップにより、付加価値の取り込みを狙う。エナジーハーベスト向け無線通信規格のEnOceanの主幹メンバーとして参画しているのも、その一環だ。これらの新たなビジネスモデルの立ち上げを進めるため、専任のマーケティング部隊を置いている。
 さらに、研究開発機能の拡充のため米シリコンバレーやシンガポールなどに拠点を設けることを検討している。欧州など各地域には、それぞれに盛んな研究分野がある。オープンなかたちで共同研究に取り組めるような体制とする方針で、早期に設置を進めたい。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年2月19日号3面 掲載)

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