商業施設新聞
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No.1014

ハワイアンカフェ2ブランドの異なる戦略


安田遥香

2025/7/15

 5~6月にかけて、「ハワイアンカフェ」2ブランドを取材した。筆者自身、特にハワイに思い入れがあるわけではなく、むしろハワイには行ったことがないのだが、飲食業界の中でもとりわけ存在感が高まっている業態だと感じたため取材を敢行した。ここではその取材の内容を一部紹介したい。

 まずは現在、旗艦店である原宿店をはじめ都内に3店を展開する「ホノルルコーヒー」だ。2022年に一度日本から撤退したことが記憶に新しいかもしれない。現在ホノルルコーヒーを運営するホノルルコーヒージャパン(株)の萩原利貴社長の手により昨年再上陸を果たし、昨年12月に再上陸後1号店の原宿店をオープンした。「今後10年間(34年まで)に少なくとも30店、可能であれば50店を出店したい」(萩原社長)という。

 ただ、イオンモールやアウトレットなどに出店していた再上陸前よりも路面店の比率が増えそうだという。これは「1店1店外観・内装を作り込みたい」という萩原氏の意向があるからだ。例えば既存店だと、原宿店では「今と昔のハワイ」を表現しているが、5月にオープンした銀座店には倉庫をイメージしたデザインを、同じく5月オープンの麻布十番店では街並みに溶け込むデザインを施しており、店舗デザインは三店三様だ。今後も各店で異なるコンセプトの店舗デザインを施すには、商業施設内よりも路面店のほうが融通が利きやすいかもしれない。

24年10月にオープンした「コナズ珈琲 板橋店」は平日も多くの人で賑わっている
24年10月にオープンした「コナズ珈琲 板橋店」は平日も多くの人で賑わっている
 そしてもう1つは「丸亀製麺」などを展開するトリドールグループの「コナズ珈琲」だ。「いちばん近いハワイ」をコンセプトに掲げ、店内ではBGMやデザインなどで「ザ・ハワイ」を表現。メニューもパンケーキやロコモコなど、ハワイで親しまれている料理が多数ラインアップされている。

 ここにホノルルコーヒーとの違いがある。ホノルルコーヒーの店舗デザインは「洗練された都会的空間」といった雰囲気で、メニューもハワイだけに寄っているわけではない。一方、コナズ珈琲は私たちが思うベタなハワイの姿を全力で表現している。そうしたスタンスの違いは両者の経営側も明言しており、ホノルルコーヒーの萩原社長は「ハワイはここ数年で急激に変わっており、ホノルルコーヒーでは近代化した最新のハワイを表現している」と話す。他方、コナズ珈琲を運営する(株)KONA'Sの阿部和剛社長は「実際にハワイに行くとイメージと違うところもあるが、コナズ珈琲では“日本人が思い浮かべるハワイ”を表現している」と言う。

 ほかにも、都心での出店が続くホノルルコーヒーに対し、郊外のロードサイドを主軸とするコナズ珈琲と、同じハワイアンカフェでも戦略を異にする2ブランド。今後それぞれどのような展開を見せるのかが気になるところだ。
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