コロナ禍で筆者を悩ませたことのひとつは、街中で配っているティッシュの受け取りだ。コロナ禍前は潔癖症というわけでもないので、何も気にせずもらっていたが、コロナ禍のさなかは接触感染も気になって、欲しいと思っても受け取らないようにしていた。もちろん、配っている人はマスクと手袋を着用し、感染症対策はしていた。ちなみに現在は平気で受け取る。
最近では、配られるものはティッシュに限らない。大阪駅周辺を歩いていると、某エナジードリンクが配られていることがある。こうした無料で商品を提供して販売機会の拡大を図る「サンプルビジネス」に注目している。小売店の中にサンプル自販機なるものが設置されるケースも増えている。筆者が最初に発見したのは、23年にJR大阪駅にあるファッションビル「ルクア大阪」内にオープンした「@cosme OSAKA」で、自販機の「コスメサンプルスタンド」を導入した。@cosmeのアプリにあるバーコードをかざせば、1人1日1回好きなサンプルが無償でもらえる。運営する㈱アイスタイルのHPに掲載する@cosme OSAKAの開業1年目レポートによれば、コスメサンプルスタンドを設置したことで利用したい人が@cosmeアプリをダウンロードして新たに@cosme会員になってくれたり、購買率も来店客全体に比べ、コスメサンプルスタンド利用者のほうが高いなど、効果が生まれているようだ。
最近では、5月21日に移転オープンした「梅田ロフト」でも、ロフトサンプリングボックス「ロフボ」を西日本の店舗で初めて設置している。ロフトアプリ会員向けに自動販売機で試供品を提供するシステムで、最大12種類のサンプルに対応できるようになっているという。
小売店におけるサンプルビジネスは、来店客数の増加や会員獲得には大きな効果を発揮する。しかし、サンプル目的の利用者ばかりとなり、店舗全体の購買率拡大につながらないリスクもある。サンプル自販機などを設置した場合にこそ、より魅力的な売り場づくりに配慮する必要があるのかもしれない。