商業施設新聞
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No.1028

黄昏の大阪・関西万博


岡田 光

2025/10/21

 2025年も残り2カ月となり、あっという間に1年が終わりそうだ。今年は春に第2子となる長女が誕生し、人生で初めて育児休暇を取得した。4月上旬から6月下旬までの2カ月ちょっとであったが、長女が生まれてすぐ、7歳上の長男が小学校に入学することとなり、休暇と言っても慌ただしい日々を送った。育児休暇に入るタイミングで、大阪・関西万博が開幕したため、結局、プレスとしての取材は一度も行かなかった。「もっと国内外のパビリオンを見とけば良かったなぁ~」と閉幕後に思うかもしれないが、その代わりに育児休暇という貴重な体験ができたので、個人的には満足している。

多くの人が来場した「大阪・関西万博」
多くの人が来場した「大阪・関西万博」
 こんな私が行かなくても、大阪・関西万博は大盛況に終わりそうだ。開幕日からの累計来場者数は2682万8409人(10月4日時点)を記録し、運営費の黒字化が見込める2200万人を大きく上回り、累計入場チケット販売数も2200万枚(10月3日時点)を超えた。開幕前は「大阪で開いてお客さんが来るのか?」「未着工のパビリオンなど、建設が進んでいないが、開幕に間に合うのか?」と四方八方から集中砲火を浴びていたが、そのような声も7月ごろから聞こえなくなり、来場者数は右肩上がりに伸びていった。9月ごろになると閉幕が近づき、「今のうちに大阪・関西万博に行こう!」という声が増え、入場予約が満員になる日も目立った。「チケットを購入したら払い戻しは行いません」というのは、見直す余地があるのではないかと個人的に思うが、満員になるほど大阪・関西万博が注目されたことは良いことだ。

 大阪を担当する記者としては、この大阪・関西万博の賑わいを再び取り戻すには、何が必要なのかを考えてしまう。大阪・関西万博が立地する夢洲エリアではIR施設の建設が始まり、跡地活用の検討も進むなど、商業開発の勢いは持続している。オーバーストアと叫ばれる大阪市内でも、キタエリアで阪急ターミナルビルや大阪新阪急ホテルの建て替えなどを含む「芝田1丁目計画」が控え、ミナミエリアは心斎橋で商業施設、オフィス、宿泊施設などを設ける「(仮称)心斎橋プロジェクト」が進み、なんばでは関電不動産開発や南海電気鉄道らによる「(仮称)難波千日前地点再開発プロジェクト」も始動するなど、繁華街のランドマークとなる施設が誕生しつつある。

 ただ、これらが大阪全体を活性化するほどのインパクトがあるかと言うと、少し疑問が残る。前述の3施設が完成することで、大阪梅田駅も、心斎橋駅も、なんば駅も多くの人が訪れるかもしれないが、その人流の動きが大阪全体に波及するとは言い難い。逆に言えば、ランドマークと成り得る3施設を含め、どうすれば大阪全体に人が行き渡るようになるのか、その施策を考えなければならない。大阪・関西万博は世界で大阪しか開かれていないという名目で、日本全国、いや世界中から多くの人を呼び寄せた。大阪しか持っていないもの、大阪しか得られないもの、大阪しか体験できないものとは何なのか。府内で商業施設を展開する各事業者に突き付けられた、それこそが大阪・関西万博の次世代に受け継ぐべきレガシーなのかもしれない。
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