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第636回

住友ベークライト(株) 代表取締役社長 鍜治屋伸一氏


30年度に事業利益550億円目標
半導体材料は先端領域の開拓強化

2025/7/25

住友ベークライト(株) 代表取締役社長 鍜治屋伸一氏
 住友ベークライト(株)(東京都品川区)は、2025年4月30日付で社長交代の人事を発表、6月24日の株主総会を経て鍜治屋伸一氏が代表取締役社長に就任した。封止材料を中心とした半導体材料事業の今後の戦略について話を伺った。

―― まずはご略歴から教えて下さい。
 鍜治屋 1989年に当社に入社し、まずはフェノール樹脂の営業からキャリアをスタートさせた。その後海外赴任などを経て、07年から自動車部品樹脂営業部長、11年から封止材料などが含まれる情報通信材料営業本部に属して半導体業界と関わるようになった。途中で研究開発などを担当する時期もあったが私の根っこの部分は営業だ。直近では高機能プラスチック、QOL(クオリティオブライフ)関連製品分野などにも関わり、25年6月から社長として経営に携わるようになっている。

―― 直近は右肩上がりの成長を見せています。
 鍜治屋 24年度(25年3月期)の通期業績は、売上高が前年度比6%増の3048億円、事業利益が同12%増の308億円と長い間、目標に掲げていた売上高3000億円、事業利益300億円を初めて達成することができた。財務項目で我々が最も重視している事業利益では、現在の中期経営計画の最終年度にあたる26年度には400億円、長期目標である30年度には550億円の達成を目指している。550億円は大きなチャレンジであり、新しいことにも取り組んでいかなければならない。

―― 目標達成に向けた施策は。
 鍜治屋 当社では半導体関連材料、高機能プラスチック、QOL関連製品の3つの事業セグメントを持っているが、成長ドライバーとして特に期待しているのが半導体分野だ。

―― 半導体関連材料事業の戦略は。
 鍜治屋 当社は封止材料を主力に半導体関連材料事業を展開しているが、封止材料はグローバルトップメーカーとして、先端からミドルエンドまでを中心に事業を展開していくスタンスに変わりはない。ボリュームの出るミドルエンドに向けた施策としては、蘇州に新工場が竣工し、現在顧客認定取得に向けた作業を進めている。台湾・高雄でも生産ラインを増設している。先端領域については九州工場(九州ベークライト)を中心に開発・生産双方を手がけながら進めていく。

―― 先端領域の取り組みについて。
 鍜治屋 チップレットなど先端パッケージング分野は重要な領域で、新製品開発を含めてR&Dを強化しているところだ。期待値が高いのは顆粒封止材料やRDL(再配線層)材料だ。徐々に採用が増えてきている。また、TIM(Thermal Interface Material)や液状封止材料の開発も進めており、ボリュームゾーンだけでなく、先端領域での存在感もこれまで以上に高めていきたい。

―― モビリティ分野は。
 鍜治屋 xEV向けの戦略3製品(モーター磁石固定、パワーモジュール用、ECU/TCU、センサー一括封止)は、EV市場の減速で24年度売上高は期初計画と比べると若干下ぶれたが着実に成長しており、25年度も増収を見込んでいる。26年度には180億円の販売を目指しており、今後もステーター用封止材などの新製品を拡充していく。

―― 会社全体を見渡すと、他部門にも半導体関連製品があります。
 鍜治屋 高機能プラスチックではパワーモジュール向け放熱シートなどが大きく伸長しているほか、QOL関連製品でもウエハーダイシング工程用テープ、MLCC(積層セラミックコンデンサー)や半導体デバイスの搬送に用いるカバーテープなどのフィルム材料が主要製品の一角を担っている。今後部門変更など事業ポートフォリオの組み替えも視野に入れており、27年度から始まる新中計でこれを実現するように準備していく。

―― 最後に今後の投資戦略をお聞かせ下さい。
 鍜治屋 現中計ではキャッシュアロケーションとして設備投資500億円、成長投資200億円、戦略投資500億円の投資枠を設けている。このうち戦略投資に含まれるM&Aはまだ実施しておらず、30年度の事業利益550億円の達成に有効なM&Aを実行できるよう検討を進めていきたい。



(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2025年7月24日号10面 掲載

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