商業施設新聞
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No.1018

アナログレコード人気に思う


山田高裕

2025/8/12

ビックカメラAKIBAの外観
ビックカメラAKIBAの外観
 今、アナログレコードが売れているらしい。3年前に下北沢の「マスタードホテル下北沢」を取材したとき、アナログレコードを宿泊客に貸し出すというサービスを行うと聞いた。その時は、「さすが下北沢、感度が高い街だ。アナログレコードなどの好事家がここなら集まるのだろう」と思っていたが、アナログレコードをめぐる現状はどうも一部の好事家に留まっていないらしい。

 この前、秋葉原のビックカメラに足を運んだ時、アナログレコードやプレイヤーを専門に扱うエリアがあった。プレイヤーは最新の製品を取り扱っており、アクセサリーなども豊富に揃えていた。そして、レコードソフトについても、ジャズやクラシックといったジャンルだけではなく、最近のポップアーティストの新盤がアナログレコードとして販売され店頭に並んでいた。

 業界の現状を調べてみると、日本レコード協会の調査では、日本における2024年のアナログレコード生産実績(金額)は、78億8700万円に上っており、金額ベースではここ30年間で最高となり、1989年の実績を上回っているらしい。これは日本だけの現象ではなく、米RIAAの調査によると、アメリカにおいてもアナログレコードの売上額が2015~24年の間に158%増加している。20年にはレコードの売り上げがCDのそれを上回り、差は開く一方のようだ。

 こうした一種のレコードブームが起きていたことについて、自分はつい最近まで全く把握しておらず、恥ずかしい限りではあったが、様々なところで言われる「温故知新」の一つの事例だということを強く感じた。若い世代が昔の音楽をサンプリングしている曲を聴き、元々のルーツを探るという方向で昔の曲、そしてアナログレコードへ流れていくという動きもあるようだ。

 こうした現象は、この件に限らず、様々な場面でも言うことができる。例えば、都市部にある老舗の店舗が今、観光客の間で雰囲気を楽しめるスポットとして人気が出ているように、現在は時代遅れとされている業態や商業施設も、のちに再評価されるときが来るのかもしれない。
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