シムテック(SIMMTECH、韓国・清州市)は、1987年の設立以降、半導体パッケージ基板の開発および量産を展開している。最近は超薄型基板、Cuポスト、放熱対策などを開発しているとともに、SOCAMM、LPCAMM、CXLなど次世代メモリーモジュールのフォームファクターも開発から量産まで対応し、競争力を高めている。韓国・仁川で9月に開催された「KPCA Show2025」に出展した同社のCEOである全永善(チョン・ヨンソン)氏に事業状況や戦略などを伺った。
―― 主力事業の状況について教えて下さい。
 チョン 当社は半導体パッケージ基板でグローバルトップメーカーとして、メモリー向けの圧倒的技術および市場支配力を背景に、SoC向け高付加価値パッケージ基板製品の売上拡大が継続している。メモリー分野では世界トップを維持しており、モバイル向けDRAM、NANDフラッシュ、GDDRなどスペシャリティーメモリー向けのMSAP基板部門でも確固たる地位を維持している。最近はAIやHPC向けで需要が増加しており、同部門のトップメーカーとして売り上げの拡大が加速している。また、FCCSP部門で安定的な売上成長を持続しており、RF-SiPやBTベースのS-FCBGAなどの開発および量産に力を入れている。
―― S-FCBGAとは。
 チョン 当社は既存のABFベースのFCBGAではなく、BTベースのS-FCBGAを展開し、差別化した戦略を推進している。BT素材を使うことで、より効率的な電気的特性を実現し、機械的安定性も同時に保証できることが強みとなる。25年から回復局面に入っていることからターンアラウンドが予想されており、26年には、韓国、中国、日本、マレーシアなどグローバル生産拠点で需要が拡大基調に入るとみている。
―― 売上構成比について。
 チョン 25年上期でみると、売上高のうち、パッケージ基板部門が約70%、モジュール・PCB部門が約30%を占めた。そのなかでMSAP基板の売上割合は、FCCSPが約10%、SiPが約5%、GDDR6/7が約15%、MCPが約40%だった。モジュール・PCBは、サーバー、SSD、PC向け製品で安定的な成長が継続しているなか、今後はSOCAMMやCXL向けなど次世代基板製品の売り上げが本格的に成長すると予想される。
―― 生産体制と投資計画について。
 チョン 当社は大別すると、メモリーモジュール事業部とパッケージ基板事業部で構成され、メモリーモジュール事業部は、韓国、中国、マレーシアで、主要メモリーモジュールPCBを量産している。韓国工場では新技術検証およびプレミアム製品を生産しており、中国とマレーシアの工場では大量生産品を中心に生産する役割を果たしている。
 パッケージ基板事業部は、韓国、日本、マレーシア工場で主要製品を量産しており、韓国では高付加価値製品の量産および技術開発、日本は高付加価値スペシャリティーメモリー向けを、マレーシアはDRAM向け製品を中心的に量産・対応している。4月には今後の需要増に対応するため、マレーシア第2工場が竣工し、グローバルな大量生産拠点として展開する計画だ。また、インドにおいて新工場の初期検討段階にある。
―― SIMMTECH GRAPHICS(STG)について。
 チョン 長野県茅野市にあるSTGでは、GDDR向け製品を中心に、モバイルDRAMおよびNAND向けなどスペシャリティーメモリー向けMSAP基板を主に量産している。最近はSoC向け高付加価値製品の量産準備をするなど技術難易度が高い製品を担当しており、当社グループ全体の技術強化の主要拠点となる。現在稼働率が急激に上昇しており、25年末にはフルキャパシティーに到達すると予想されることから、中長期的には日本国内の車載半導体向け高付加価値基板の需要へ積極的に対応し、売り上げの拡大を推進していく。
―― チップレットなど大型パッケージ基板について。
 チョン すでにSoC向け大面積パッケージ基板の開発および量産に成功しており、専用の量産設備に対する投資も完了した。今後もこのような技術力と量産経験を背景に、チップレットなど大面積・高密度パッケージ基板の需要に柔軟に対応していく。
―― 25年下期の見通しと中長期計画は。
 チョン 25年下期は、スペシャリティーメモリー半導体の需要回復によって、関連製品の売り上げの成長およびSoC向け高付加価値製品の売り上げが本格拡大し、業績が改善すると予想する。当社の25年下期の成長の主要要素を3つで要約すると、1つ目はグラフィックDRAMがGDDR7に世代転換したことで、日本のSTG工場のターンアラウンドが本格化される。2つ目は、FCCSP、SiPなどの非メモリー向け高付加価値製品の基板の売上が改善されると予想する。3つ目は、SOCAMM向けの新規売上高が下期から反映され、新しい成長モーメントを提供する。
 中長期計画としては、SoC向けSAP基板の技術開発および売上拡大を継続し、中長期的には全社売上高の40%の水準に拡大させる予定だ。
(聞き手・嚴 智鎬記者)
本紙2025年10月30日号6面 掲載