電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第653回

FastLabel(株) 代表取締役CEO 鈴木健史氏


AI開発向けデータサービス提供
ロボティクス領域の取り組み強化

2025/11/21

10月に設立したR&Dセンター
 FastLabel(株)(ファストラベル、東京都新宿区)は、2020年に設立されたスタートアップ企業で、AI開発に必要なデータに関する様々なサービスやシステムを提供している。そして直近はAIロボティクス領域での取り組みも強化している。今回、代表取締役CEOの鈴木健史氏に話を伺った。

―― 貴社の事業概要から伺います。
 鈴木 現在のAI開発はアルゴリズムとデータに大別できる。そのうち当社ではデータに関する様々なサービスやシステムを提供している。データ収集、ラベリング(アノテーション)、データコンサルティングのほか、データ作成・管理を効率的に実現する独自製品「FastLabel Data Factory」を用いてAI開発の効率化や精度向上を支援したり、お客様の要望に合わせた最適なGPUリソースの調達および提供なども行っている。
 AI開発においてAIのデータセットを改善することでモデルの精度を改善するアプローチが拡大しており、良質なデータが不可欠となっている。そのなかで当社にはAI領域に知見を持つメンバーが多数在籍しており、様々なご要望に対して柔軟かつ一気通貫で対応し、高品質なデータの提供にこだわって事業を展開してきた結果、国内ではトップクラスの実績を誇る。

―― 顧客の業種について。
 鈴木 製造業のほか、建設業、農業、医療など幅広い業種で実績があり、自動車メーカー、エレクトロニクス、IT企業、システム会社、総合建設業者など、これまでの取引社数は約200社に上る。トヨタ自動車様、ソニー様、NTTグループ様など大手企業もご支援しており、用途は認識AIや生成AIに関する取り組みのほか、自動運転に関するものも増えている。

―― そのほかの傾向はありますか。
10月に設立したR&Dセンター
10月に設立したR&Dセンター
 鈴木 25年からAIロボティクスに関連する引き合いが増えてきた。これまではルールベースでロボットの制御をしていたが、AIモデルの活用、つまりは多くのデータを集めて学習させ、ロボットを人間のように動かすという研究開発が世界中で進んでいる。そうしたデータの収集にはシミュレーションソフトなどを用いて行うものがあり、当社でも取り組みを進めている。また、ロボットを実際に動かしてデータを収集することも非常に重要である。そこでAIロボティクス領域への強化策の1つとして、学習データを生成・収集するためのR&Dセンターを10月に設立した。

―― そのR&Dセンターについて教えて下さい。
 鈴木 セミヒューマノイドロボットやアーム型のロボットなどの汎用ロボットを複数台設置し、実際の活用シーンを再現してロボットを動作させながら様々なデータを収集するため、およびデータ観点での研究開発に取り組むために設立したR&Dセンターである。なお、AIロボティクスで重要なVLA(視覚言語行動)モデルの研究開発を行っている方や、AIロボティクス製品の現場導入を検討している方にむけて高品質なデータを提供していくことも計画している。当社では現在、AIロボットデータソリューションとして、「構想策定・要件定義支援」「ロボット調達」「ロボットセットアップ・動作環境構築」「AIロボットデータ収集・生成」「計算資源最適化」「ロボット動作テスト」といったソリューションを提供しており、ロボット調達や企画などで協業いただける方や一緒に市場開拓していくパートナーなども募っている。

―― 今後の方針についてお聞かせ下さい。
 鈴木 従来取り組んでいる認識AI、生成AI、自動運転の領域でのさらなる拡大に加え、AIロボティクスの領域を新たな成長分野としてPhysical AIに関わる事業をさらに強化していく。そうした取り組みを進めていくことで「AIのデータといえばFastLabel」といった地位を確立し、AIデータに関するお困りごとに対して幅広く対応していきたいと考えており、AIデータに関して何か課題をお抱えの方はぜひご相談いただきたい。また近年は、日本においてもソブリンAI(国家や組織が自国のデータや技術基盤をもとに、外部のクラウドサービスや他国のサービスに依存せずに、自律的にAIシステムを開発・運用する取り組み)に関する動きが出てきており、そうした国産のAIバリューチェーンの一翼を担っていければと思う。加えて、AIデータの品質はグローバルで課題となっており、中期的には海外展開も目指し、グローバルでのプレゼンスも確立していきたい。



(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2025年11月20日号9面 掲載

サイト内検索