半導体製造装置(SPE)市場は、AI半導体をはじめとする先端領域での需要拡大を受けて、かつてない規模でスケールアップしている。2026年も過去最高の市場規模を形成することはほぼ確実だ。こうした拡大局面においては、生産・調達分野がこれまで以上に重要な領域となる。SPE国内トップの東京エレクトロン(株)は事業規模もさることながら、生産・調達・物流でも先鋭的な取り組みを進める一社だ。担当役員の佐々木貞夫副社長にその取り組みを聞いた。
―― 想定を上回る規模で市場が拡大しています。生産体制とのギャップはありますか。
佐々木 振り返ると、我々のキャパシティーを超えて需要が拡大した局面が過去2回あった。現在はそれを教訓にさまざまな面からてこ入れを行い、来期(27年3月期)の需要拡大に向けても生産面ではまったく問題ないといえる状況だ。ただし、中東情勢は注視が必要で、市場の変化に適正に対応していく。
―― サプライヤー企業の生産体制も十分ですか。
佐々木 各拠点で年に複数回、サプライヤー向けの生産動向説明会を実施しており、我々のフォーキャストをリアルタイムで発信している。サプライヤー企業にとっては、ダウンサイクルがどうしても懸念材料となるが、過去にそういった局面で当社がどう振る舞ってきたかはしっかりと理解してもらっている。発注したものはキャンセルせずに調達しており、信頼関係はしっかりと築けている。ただ、売り上げの推移と在庫の推移が合わないという課題があるのは事実で、ここはDXを入れてより効率的な運営を図れる余地はあると思う。
―― 具体的には。
佐々木 結局のところ、在庫管理などは調べるのも、シミュレーションするのも大変だ。ここをDX化することで、より精度の高い経営判断が行える。1カ月分の精度が高まるだけで経営に与えるインパクトやダメージはずいぶんと変わってくる。
―― 海外同業他社との違いはありますか。
佐々木 経営・財務的な部分のDX化は、海外大手は進んでいるところが多い。生産・調達面では当社は国内での調達比率が90%以上、生産も国内主体のサプライチェーンを確立しているのに対し、海外企業はEMSなどアウトソースを活用したモデルが多い。それぞれメリット・デメリットがあるが、コロナなどのパンデミックの際は当社のモデルが有利に働いたのは事実だ。
―― 貴社は各拠点でも生産に関する方針・コンセプトが異なる印象です。
佐々木 九州は外部の協力会社を活用した分業モデルを推進し、非常に効率的な運営・生産が図れている。一方で山梨・宮城・東北に関しては、どちらかといえば現状は自社拠点に引き込むスタイルを図ろうとしている。どちらが正解というわけではないが、それぞれ一長一短があり、現在はそれぞれのモデルにより磨きをかけている段階だ。
―― 内製志向の強い東北、宮城で新拠点がオープン、あるいは建設中です。
佐々木 東北生産・物流センターは従来サプライヤーに委託していたサブアセンブリーの工程を、サプライヤー企業にも同センター内に入ってもらって一緒に進める。同時に、倉庫も従来は外部の大型施設を活用したかたちから、自社拠点での物流に切り替えていく発想だ。宮城の新生産棟はまったく新しいコンセプトを導入したもので、各工程の機械化・自動化を強力に推し進める。将来的にはヒューマノイドロボットが装置組立を行うなどのフィジカルAIの導入も検討している。宮城でまずこのコンセプトを確立し、この要素技術を他拠点にも広げていければと考えている。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2026年4月2日号1面 掲載