李在明(イ・ジェミョン)大統領は2025年6月の就任後、国家基幹産業である半導体を積極的に育成するための経済外交に奔走している。米サンフランシスコではグローバル・ビッグテックと大規模な人工知能(AI)・半導体協力の基盤を固め、ブラジル、チリ、アルゼンチンなど南米3カ国ではコア鉱物のサプライチェーン構築とエネルギー協力を中心に経済安全保障の領域を広げている。
ブラジル、アルゼンチンとは韓・メルコスール(Mercosur=南米共同市場)貿易協定交渉を26年内に再開することで一致、海外市場拡大の足がかりを築いた。8月2日、韓国大統領室(青瓦台)によると、李大統領は米サンフランシスコおよびブラジル、チリ、アルゼンチンを相次いで訪問する歴訪日程を終え、ドイツのフランクフルトを経て8月3日に帰国した。
サムスン電子とSKハイニックスが米国のビッグテックと締結した9500億ドル(約149兆円)規模の半導体長期供給協力に加え、AIサプライチェーンとデータセンター・モデル・サービス全般にわたる協力拡大の基盤も整えた。南米ではAIと半導体、バッテリー産業に必要なコア鉱物のサプライチェーン確保に注力した。
李大統領(左)とハビエル・ミレイ、アルゼンチン大統領 写真:韓国青瓦台
韓・チリとはビジネス・ラウンドテーブルを 写真:韓国青瓦台
青瓦台国家安保室は「ブラジルとは『核心戦略鉱物に関する共同声明』を締結し、レアアースを含むコア鉱物のサプライチェーンの全周期にわたって互恵的な協力と投資機会を掘り起こしていくことにした」とし、「リチウムと銅の埋蔵量世界1位のチリ、リチウム埋蔵量世界4位のアルゼンチンとはそれぞれ了解覚書(MOU)を締結し、コア鉱物協力体制を構築した」と強調した。
また、メルコスールを主導するブラジルとアルゼンチンとは韓・メルコスール貿易協定の26年内再開を推進することで意見を一致させた。これが妥結すれば、人口2億8000万人の巨大市場を相手に韓国製品の輸出環境が大きく改善されると期待される。
このほか、韓国初の自由貿易協定(FTA)締結国であるチリとは、FTAの現代化協議を本格化。アルゼンチンとは長期間の交渉を続けてきた二重課税防止協定の最終妥結という成果を収めた。李大統領は帰国と同時に歴訪成果を具体化するための後続措置と、国内の経済・民生懸案への対応に乗り出す見通しだ。
米シリコンバレーのVCと協力
李大統領は米シリコンバレーの主要ベンチャーキャピタル(VC)と会談し、世界で最も投資・創業がしやすい環境を造成すると述べ、米韓協力を技術・革新・スタートアップ同盟への拡大を提案した。7月25日(現地時間)、李大統領が会った6つのベンチャーキャピタルは、過去にアップル、エヌビディア、グーグル、メタ、インスタグラム、OpenAIなどに初期投資したビッグテック世界のキングメーカーであり、総運用資産規模(AUM)が3130億ドル(約49兆円)に達する。
資産規模1690兆ウォン(約188兆円)規模の世界3大年金基金である韓国の国民年金公団も、現地のベンチャーキャピタル6社と了解覚書(MOU)を締結し、国内の有望スタートアップの海外投資誘致とグローバル革新企業の育成を後押しする。
李大統領はこの日、サンフランシスコのホテルで開かれた「シリコンバレー・ベンチャー投資ミートアップ」において、「アメリカは世界最高水準のベンチャー投資力とグローバルネットワークを備えており、韓国は優れた技術力と製造競争力、またダイナミックな創業エコシステムを有している」と述べた。さらに、「両国の強みが組み合わされれば、我々は次の世代にサムスン、現代、SK、ネイバー、そして世界をリードする新たなグローバル革新企業をともに作り出すことができる」と胸を膨らませた。
とりわけ、李大統領は「韓国とアメリカは長年の安保同盟を超え、これからは技術同盟、革新同盟、スタートアップ同盟へと協力の裾野を広げていかなければならない」と強調した。アメリカの資本・グローバルネットワークと韓国の技術・製造競争力を結びつけ、世界市場をリードするスタートアップを共同育成する構想だ。「韓国のスタートアップがアメリカの資本と市場に出会い、またアメリカの投資家と革新企業が韓国の技術・製造・人材エコシステムとつながる時、両国はこれからの30年をともに歩む最良のパートナーになるだろう」と李大統領は語った。
大統領直轄の半導体産業競争力強化特別委員会
他方、李在明政府は国家的な半導体産業支援体制を構築し、これを裏付ける法的基盤を完成させた。半導体産業政策の最高意思決定機関となる特別委員会が新設され、地域均衡発展のため非首都圏(ソウル・京畿道以外)の半導体クラスター基盤施設構築費用を国家が最大100%まで支援する。
韓国産業通商資源省(日本の経済産業省に相当)は8月4日に開かれた閣議で、このような内容を骨子とする「半導体産業競争力強化及び支援に関する法律施行令」制定案が議決されたと明らかにした。施行令は26年2月10日に制定された、いわゆる「半導体特別法」から委任された事項を具体化したもので、8月11日から施行される。
今回の特別法施行で注目すべき変化は、半導体政策の強力なコントロールタワーの役割を果たす「半導体産業競争力強化特別委員会」の設置だ。特別委員会の委員長は大統領が直接務め、国家的な政策推進の原動力を確保する。産業通商資源省大臣が幹事を担当し、企画財政省・科学技術情報通信省など関係省庁の大臣級公務員が常任委員として参加する。ここに産業界・学界・研究機関などで半導体産業に専門性と経験を有する人物が委嘱委員として加わり、半導体産業競争力強化や基本計画・実行計画などの核心政策課題を体系的に審議し推進することになる。
地域均衡発展と安定的なエコシステム構築のためのクラスター支援策も具体化した。施行令は半導体クラスター指定を申請する際、基本目標や発展方向、敷地・位置および面積だけでなく、地域半導体産業や基盤施設の現状、インフラ力や人口基盤構築に関する事項をすべて含む総合的な建設計画書の提出を義務づけた。クラスター指定申請時には首都圏以外の地域を優先的に考慮することを明示し、地域産業の要件や特性を反映した半導体エコシステムの構築によって国家の均衡発展にも寄与できるようにした。
また、企業の投資負担を軽減する産業基盤施設への財政支援基準も確立された。クラスター構築に不可欠な産業基盤施設の造成および運営費用は総事業費の50%以上100%以下の範囲で国家と地方自治体が負担できるよう規定した。さらに、二重化施設や供給網の安定、産業安全に寄与する核心施設に対しては費用の全額(100%)を国家予算で支援できる根拠も明示している。
これにより、産業通商資源省は企業のインフラ構築負担を大幅に軽減し、半導体生産に不可欠な基盤施設をより安定的に拡充できると期待している。金正官(キム・ジョンクァン)産業通商資源省大臣は「半導体産業の国家的支援体制のための法的基盤が整ったことから、関係省庁と緊密に協力して法律に基づく主要政策課題を速やかに推進していきたい」と述べた。
電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴 在漢