電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第668回

関西の新興DC集積地、京都府精華町


次世代インフラに求められる地域共生

2026/8/28

 生成AI市場の活況で国内でも新設が増加している大規模データセンター(DC)。首都圏では千葉県印西市が集積地として著名だが、関西では大阪市の北東に位置する箕面市・茨木市にまたがるエリアと京都府南部の精華町で新設が相次いでいる。次世代インフラとして欠かせない存在とされながら、新規立地の多い地域では住環境が脅かされるのではと不安の声がくすぶる。「新興DC集積地」ともいうべき精華町を歩いてみた。

■「けいはんな学研都市」の中枢、精華町

 精華町は京都府の南端で、奈良県奈良市、生駒市に接する。西側の生駒山地を越えれば大阪平野だ。精華町と周辺市町を含む1府2県にまたがる丘陵地では1980年代から関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)が整備され、精華町はその中心地区に位置づけられる。国立国会図書館関西館や情報通信研究機構(NICT)などの公的研究機関、NTT、京セラ、ニデック、島津製作所、サントリーといった企業の研究所が立地する一方、新興住宅地や小中学校、ショッピングモール、飲食店、ホームセンターなどが集まる生活空間としての顔も持つ。
国会図書館関西館とDC建設現場のクレーン
国会図書館関西館とDC建設現場のクレーン
 精華町の学研都市エリアは、内陸部であることに加えて町の東に流れる一級河川の木津川から離れた高台に位置しており、水害リスクがないうえ地盤の強固さでも知られる。エリア内には京都市のDC運営事業者のカゴヤ・ジャパンが06年から自社DCを置いているほか、10年代に日本郵政や三菱UFJ銀行の事務センターが立地した。これらは詳細非開示ながら、自社のデータ処理を行うDC機能を備えているとみられる。もともと研究機関の集積エリアとして整備されたことから電力や通信インフラが充実しており、大阪市からも鉄道とバスを乗り継いで1時間程度でアクセスできる。こうした立地条件が昨今の大型DC投資ニーズに合致し、新設が進んだようだ。

■23年以降に外資系DCが進出

 精華町の学研都市エリアの中心部には、けいはんな学研都市の中核的交流施設でオフィスやラボ、貸しホール、ホテルを備えた「けいはんなプラザ」がある。その北隣に23年に開設されたのがColtデータセンターサービスの「京阪奈データセンター」で、開設当時は関西最大級のDCだった。24年に第2期を竣工させ、45MWのIT容量を持つ。同社は欧州や日本、インドでDCを運用する事業者で、京阪奈データセンターは精華町における大規模DCの先駆けとなった。

建設中のSTACK&ESRのDC
建設中のSTACK&ESRのDC
 その西側、22年に譲渡されたパナソニックの研究開発拠点跡地に建設が進められているのが、シンガポールの大手DC運用会社のSTACKと不動産アセットマネジメント企業のESRが共同で整備するキャンパス型DCだ。STACKとESRは、韓国の仁川でのDCプロジェクトでも協業している。けいはんな学研都市ではまずIT容量18MWの1号棟を建設し、27年4~6月期に運用開始を予定する。その後の追加整備でIT容量は72MW規模となる計画だ。旧パナソニックの敷地のうちDCの建設が進められているのは一部のため、残る用地を利用して追加でDC棟が整備されていくものとみられる。

■日系は関電やNTTがDC整備

 けいはんなプラザからバス通りを挟んで南側、けいはんな学研都市の中核的研究機関である国際電気通信基礎技術研究所の南で建設されているのが、関西電力と米のDC運営会社であるサイラスワンが合弁で建設しているDCだ。関西電力はグループ会社で都市型DCを運営しているが、ハイパースケールDCにはサイラスワンとの合弁を通じて参入した。IT容量48MWの規模で、27年度の運用開始を予定する。関西電力は電力インフラおよびグループ会社の不動産開発ノウハウを武器に、サイラスワンとの合弁でハイパースケールDC事業の拡大を志向する。30年代前半までに1兆円を投資し、総受電容量900MW規模を目指す計画だ。第2号案件として大阪府箕面市でもDCを建設する予定という。

関西電力サイラスワンのDC建設現場
関西電力サイラスワンのDC建設現場
 関西電力のDC建設現場のすぐ南には、26年2月に運用を開始したNTTデータのDCがある。IT容量30MWの規模で、次世代AI対応のDCとして設計されている。先進冷却技術などグローバル水準の高度な設備、セキュリティー性を備え、AIワークロードの需要増加に対応する。また、西側にNTTグループの研究開発施設が隣接しており、IOWNをはじめとする次世代技術の研究開発にも活用される予定だ。

■DC立地のカギは地域共生

 今回取り上げた4施設は、いずれもけいはんなプラザから徒歩5~10分圏内に位置する。近隣では13階建てのけいはんなプラザラボ棟が最も高い建物で、DC建設現場にそびえるクレーンは遠目からでも目立つ。高層のマンションもなく戸建て住宅中心の閑静な街並みであり、ここ数年で一挙に大型DCが出現することになる近隣住民からは否定的な反応もある。

 関西ローカルメディアによると、ColtのDCに併設されている非常用のディーゼル発電機が定期的な試運転時に騒音と排煙を出し、地域住民から対応を要請される事態になった。その後、騒音や排煙を抑える対策が講じられたというが、DCに対するマイナスイメージを醸成してしまった印象は否めない。実際に現地を歩いてみたところ、発電機はDC裏手の路上からよく見える場所に設置されており、知らない人間には圧迫感を与えるだろうと思われた。

 こうした地域の不安を踏まえてだろう、NTTデータのDCは非常用発電機を最上階に設置し、外から目立たないように配慮している。関西電力サイラスワンのDCも、設計段階から騒音を抑え、煙突や発電機を外部から隠すようにしていると周辺環境との調和を強調する。工事現場にも、地域との調和を重視している旨をアピールしたパネルが設置されていた。

地域共生をうたうDC工事現場のパネル
地域共生をうたうDC工事現場のパネル
 筆者は約20年前、一時期であるがこの街に通勤していたことがあり、本紙記者になってからもたびたび取材で訪れている。近隣エリアに知人が住むなど馴染み深い地域だ。それだけに、この静かな街の住民からDCを「迷惑施設」と捉えて否定する心情が出てくるのはよく分かる。一方、半導体エレクトロニクス産業に携わる身としては次世代インフラであるDCの重要性もまた明白な事実で、その整備が進むことは長い目で見れば地域にとってもメリットがあるものと考える。

 北米や国内の先進DC集積地である千葉県印西市ではDC整備をめぐり住民との対立が深まり、法的闘争に発展したケースが出ている。感情的な諍いに陥るのは、誰にとってもメリットがない。DC整備にあたっては、その意義の説明や十分な騒音、排煙などの環境対策など、地域との対話を尽くして欲しい。

電子デバイス産業新聞 副編集長 中村 剛

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