日東紡(東京都千代田区)は、高性能半導体パッケージ基板や電子機器に搭載されるメーン基板用途のハイエンドガラスクロスの世界トップベンダーだ。特にスペシャルガラス(NE/Tガラスなど)では業界デファクトを握り圧倒的シェアを誇る。AI向けGPUの急拡大で反りに強いTガラス需要が急激に膨らみ、供給逼迫が続く。国内外で大型投資を敢行する同社の執行役 電子材料事業本部副本部長兼電材ユニット長兼マーケティング部長の三上雄広氏に景況感や今後の事業戦略を聞いた。
―― 足元の市況について。
三上 AIサーバー関連市場が依然旺盛なため、GPUやCPU向けの低熱膨張(低CTE)のTガラス、さらには高速信号処理に優れる低誘電/低ロスのNE/NERガラスの需要は絶好調で推移する。供給は非常にタイトな状況が続いており、歩留まり向上を図りながら少しでも出荷増を目指し、日々努力している。
―― Tガラスの地域別の需要は。
三上 当社の直接の顧客にあたるCCL(銅張積層板)メーカーをベースにすると、以前から薄物系のFCCSPとFCBGAのCCL基材は日系が圧倒的に強く、メモリーやモジュール用途のCSPでは韓国系も強い。
―― 旺盛な投資を国内外で継続しています。
三上 予定どおり進んでいる。まず、原糸となるヤーンの増強では台湾を中心に溶融炉の増設を進めており、Tガラスのヤーンは社内評価を進めており、27年度以降にも量産が寄与してくる。出荷をできるだけ前倒ししたい。国内では、よりスペシャルガラスの供給能力を上げていくためにEガラス炉を廃炉とする計画を打ち出している。何を生産するかは市況を見て決めていく。同時にガラスクロスも増産を進めているが、クロスを織る工程までは南亜プラスチック社と協業を進めていく。
需要がとにかく旺盛だ。1年前まで聞いていた数値がどんどん切り上がっており、27年度までの投資を上方修正した。従来比400億円増の1200億円とした。Tガラスで25年度比3倍の生産能力を確保する。
―― 競合他社も本格的な参入を計画しています。
三上 Tガラスで競合が台頭してきていることは承知している。市場が急拡大しているので当社のシェアは今後、若干下がるかもしれないが、金額ベースは右肩上がりで伸長している。27年度から供給量を引き上げていく。30年以上も安定した品質のTガラス製品を供給してきた実績は大きな差別化ポイントであると認識しており、日東紡品質にこだわっている。
―― さらなる需要が継続する場合は。
三上 足元では、推論用AI需要に火が付き、従来よりもCPUの数が増えそうだ。既存の半導体企業のスイッチ系やGPU系のデバイスに加え、サービスプロバイダーらの専用ASICやCPUなども増加している。パッケージ基板の大判化やコアの多層化ニーズも出てきた。コアの厚みは2.4~3mmへと現状より倍増する。
Tガラスなどスペシャルガラスへの旺盛な需要は当面続くだろう。顧客の長期フォーキャストを見ても設備投資の継続は不可欠であるが、29~30年度の需要を精査し、次期投資について検討している。
―― 次世代品の開発状況は。
三上 データセンターにおいてはメーンボード向けのスペシャルガラスへの要求も一段と切り上がっている。高周波対応などで電気特性の向上が求められ、Low-Dk/Dfに優れたNER/NEZなどを推奨している。一部の製品は量産している。次々世代の「DXⅡ」は石英ガラスグレードとなっており、28年度にもサンプル出荷を行いたい。一方、Tガラスの次世代品として「Vlex」の開発を進めており、低CTEに加え、低損失化など電気特性に優れた製品を開発中だ。28年ごろから本格出荷が見込まれる。
ガラスクロスだけで基板材料の特性は決まらず、新たな樹脂との組み合わせや基板の設計思想もポイントになってくる。今後は、現在の増産計画を実現することを重点に置くとともに、半導体メーカーや基板メーカーへのマーケティング活動とCCLメーカーとの協業により高付加価値の製品を供給していきたいと考えている。
(聞き手・編集長 稲葉雅己/特別編集委員 野村和広)
本紙2026年10月15日号1面 掲載