電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第204回

富士電機(株) 電子デバイス事業本部 事業統括部長 宝泉徹氏


電子デバイスは16年度1110億円
自動車、ロボット、IoTに注力

2017/1/13

富士電機(株) 電子デバイス事業本部 事業統括部長 宝泉徹氏
 パワー半導体の有力メーカーとして知られる富士電機(株)(東京都品川区大崎1-11-2、Tel.03-5435-7000)は、今後のIoT時代に向けて産業分野、自動車分野、電源分野の新製品開発および量産に注力する姿勢である。2015年度通期の全社連結業績は営業利益率、純利益ともに過去最高を更新し、5年連続増収、7年連続増益という活況であった。16年度上期は為替が円高に振れた影響によって伸び悩んだが、18年度の中期経営計画達成を目指し、パワーエレクトロニクスや産業向けの事業拡大・強化を推進している。電子デバイス事業本部の事業統括部長(常務理事)の任にある宝泉徹氏に話を伺った。

―― 電子デバイス事業の状況は。
 宝泉 電子デバイス事業では、パワー半導体をメーンに磁気記録媒体、有機感光体なども手がけているが、15年度の売上高実績は約1200億円、16年度は1110億円を見込んでいる。いまや電子デバイスは全社売り上げの14~15%を占有する重要分野となっている。15年度の利益率は8.2%と高かったが、16年度は5.3%程度となる見込みだ。パワー半導体の売上高は数年前まで850億円前後であったが、13年度から上昇し、1000億円台に引き上げてきた。勝負は20年度までの3年間とみており、今後の拡大策を真剣に検討している。

―― パワー半導体の事業構成比率について。
 宝泉 産業分野がトップで全体の約53%となっている。次いで自動車向けが約3割あり、そして民生・通信機器分野と続いている。半導体の基本方針としては、産業や自動車向けIGBTに注力するという基本姿勢は変わらない。ただ、民生向けなどではIC、ダイオード、MOSFETなどが必ず一定程度出るため、手は抜けない。

―― アベノミクスの成長の柱となるロボット分野に関しては。
 宝泉 これは実に重要なところだ。産業用ロボットのモーター制御にはインバーターが使われており、富士電機のパワー半導体が大活躍している。いうところのパートナーロボットや医療・介護用ロボットについても常にバッテリー寿命の制御が必要であり、パワー半導体はどうしても必要になる。

―― 当面の売り上げ拡大策について。
 宝泉 残念ながら中国のエアコン、工作機械、スマートフォン向けは、前半戦については不調であった。しかし、足元を見れば、かなり中国も回復している。中国における鉄道の新設計画は今後さらに出てくるとみており、当社もこれに向けた半導体の出荷を急ぎたい。また、自動車分野はここ1年間あまり新車効果が弱まっている。しかし、IoT対応のコネクテッドカーやインテリジェントカーが増えてくれば、当然のことながら電子部品全体市場が伸びてくる。自動車分野はコアとして最大限注力していく分野だ。

―― 注目のSiCパワー半導体については。
 宝泉 パワーエレクトロニクス機器用のSiCモジュールは開発を加速する。すでに産業向けに量産を開始しているが、今後は産業向けだけでなく、電鉄向けモジュールやエアコン向けにも拡大していく。SiCは従来のシリコンデバイスに比べて大幅に損失を低減でき、電力変換装置の省エネに大きく貢献する。歩留まりも非常に良くなってきて、コストも改善されてきた。

―― 海外展開については。
 宝泉 当社の場合、パワー半導体の売り上げの50%以上を海外が占めている。今後の課題は、やはり海外向けマーケットの継続的な拡大だろう。中国ではバスのEV化が進んでいるが、ここには当社のデバイスが使われている。一般的な省エネカーについても、中国はこれから強化していく方向にある。チャージャーにパワーMOSを使っていただくために全力を挙げて売り込んでいく。また、米国でも環境規制が強化されることからパワーデバイスの需要が伸びるとみられ、重要なエリアと認識している。

―― 富士電機は再生可能エネルギー全体に注力しています。
 宝泉 そのとおりだ。再生可能エネルギーによる発電が拡大すれば、必然的にパワー半導体も伸びる。ここに来て風力発電、太陽光発電のパワーコンディショナー向けにパワー半導体の需要が増えてくる状況が高まってきた。IoTの加速で需要が見込まれるデータセンターのUPS(無停電電源装置)のキーデバイスもパワー半導体であり、当社は国内では非常に強いが、海外展開はまだまだで、これから力を入れる。
 また、自動販売機もヒートポンプ採用型などが増えてきているが、ありがたいことに当社はトップシェアであり、この分野に向けたパワー半導体も徐々に増えてくると思う。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2017年1月12日号1面 掲載)

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