電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第286回

ミネベアミツミ(株) 取締役 常務執行役員 技術本部 副本部長 兼 ミツミ事業本部 半導体担当 麻生博史氏


半導体好調、18年度も増収増益
センサー強化、IGBTは第4の柱へ

2018/8/17

ミネベアミツミ(株) 取締役 常務執行役員 技術本部 副本部長 兼 ミツミ事業本部 半導体担当 麻生博史氏
―― 旧ミツミ半導体事業の状況について教えて下さい。
 麻生 2017年度(17年4月~18年3月)は前年度比107%の売上高となり、黒字を継続している。世界的に半導体市況が好調だが、その伸び率に沿って当社も好調に推移している状況だ。18年度の売上高も前年度比111%を計画している。第1四半期(4~6月)は好調に推移して受注も伸長しており、良いスタートを切ることができた。

―― 主力製品の保護IC、センサー、DC/DCの状況については。
 麻生 リチウムイオン電池保護ICは、スマートフォン(スマホ)のおおむねすべての客先で採用されており、世界シェア60~65%をキープして底堅いビジネスとなっている。当社の保護ICのうち8割がスマホ向けだ。急速充電や安全機能を付加した製品をメーンに展開している。QCD(品質・コスト・納期)が評価されており、さらにユーザーには技術提案まで実施している。
 センサーについては、従来手がける圧力センサーが堅調に推移している。センサーは技術本部における戦略製品分野であり、当社が持つ技術を活かす新しい製品として、(1)高精度湿度センサー、(2)微風まで検知可能な風量センサー、(3)照度センサー、(4)その他様々なセンサーの開発と市場展開を計画している。(1)と(2)は秋ごろまでに開発を完了し、サンプル出荷を開始する予定だ。
 DC/DCについては、車載向けで数量を伸ばしている。特にUSB周りで採用が進んでいる。

―― 15年度に設備投資したIGBTの進捗は。
 麻生 IGBTはチップ単体を提供していく。この春から出荷を開始し、海外向けで数量を伸ばしている。15年度に裏面装置を導入して開発・製品化を進めてきており、既存の保護IC、センサー、DC/DCに次ぐ第4の事業柱にすべく拡販を図っている。産業機器や白物家電向けに多く搭載されるようで、18年度後半には相当数量が出荷される見通しだ。

―― 生産体制について。
 麻生 前工程は千歳事業所、後工程はフィリピンのセブ・ミツミで手がけている。前工程では6インチを保有し、月産能力は3.5万枚だ。ファンドリービジネスも展開している。
 ミネベアとミツミが統合し、生産効率を向上させる取り組みを強化して生産体制を改善したことで、前・後工程ともに生産効率を15%アップさせ、生産数量を増やすことができた。しかし、フル稼働に近い状態が続いており、設備投資の前倒しを検討している。また、かねて検討項目にある8インチ設備の導入についても、状況を見て投資を判断していきたい。

―― ミネベアミツミとなって1年半が経過しました。両社のシナジーについて。
 麻生 旧ミネベアが中心となり、高感度荷重センサー「ミネージュ」を開発した。ミネベアが手がけていた荷重センサーに、ミツミ技術のアナログフロントエンドを組み合わせて、従来品に比べて感度を5倍以上、大きさを10分の1にした。すでに厚木事業所内に試作ラインとクリーンルームを整備した。パソコンやゲーム、スマホなどへの展開が視野にあるが、新しい分野にも拡販を図り、事業領域を広げていく。

―― 今後の事業展開を。
 麻生 これから到来するIoT社会では、どこでも、何でもセンシングしてデータ化したい、というニーズが出てくる。そのために多くのセンサーが必要とされており、当社もここに訴求する製品を開発・上市していく。将来的には、単にデバイスを提供するのではなく、そこから得られるデータをサービス化するところまで手がけることも視野にある。
 また、M&Aについては常にアンテナを張っており、アナログ製品としてのトータル戦略が組めるような事業拡充を進めていきたい。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2018年8月16日号1面 掲載)

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