商業施設新聞
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No.715

ブームとマナーに物申す


岡田 光

2019/7/23

 大阪駅の周辺で昼食を取ると、よく見かける光景がある。それが、大阪駅の駅ナカ商業施設「エキマルシェ大阪」に出店する、お茶とタピオカ専門店「TEA18」の行列だ。同店は対面式の店舗で、テーブルや椅子がない、ティースタンド形式を採用しており、いつ見ても人が並んでいて、時間帯によっては付近の共用部まで列が続くこともある。世間がタピオカブームとはいえ、そこまで必死に並ぶ必要があるのか、と疑問に感じることもしばしばだ。

ティースタンド形式を採用した店舗(写真は本文とは直接関係ありません)
ティースタンド形式を採用した店舗
(写真は本文とは直接関係ありません)
 このタピオカブームから感じるのは、カフェにおける業態の多様化と、テイクアウト需要の広がりだ。従来のカフェといえば、フルサービスやセルフなど形式は異なるものの、テーブルや椅子を配置して、ゆったりと過ごす空間を作ってきた。しかし、タピオカ専門店の多くは前述のようにティースタンド形式を採用し、顧客はスタンディングでドリンクを楽しむ。特に、訪日客はこのスタンディングを好む傾向が見られる。右手にタピオカドリンク、左手に唐揚げやフライドポテトなどを持って歩く訪日客をたびたび見かけるが、カフェ業態でティースタンド形式が増えるのは、訪日客が増加する日本ならではの傾向と言えるだろう。

 もちろん、ティースタンド形式は店舗の運営側にもメリットが多い。例えば、商業施設内に出店する場合、テーブルや椅子を配置すると、店舗面積が増えてしまい、賃料負担が増加する。それに対して、ティースタンド形式は厨房とカウンターのみで出店できるため、賃料を抑制できる。そのため、駅ナカや駅ビルなど、十分な店舗面積が確保しづらいところでは、最適な形態と言える。加えて、カウンターで商品を手渡すため厨房兼レジスタッフを配置するだけでよく、人員不足に悩まされることもない。さらに、テイクアウトが基本なので、10月から施行予定の消費増税でも、8%の軽減税率が適用される可能性もある。このように、カフェにおけるティースタンド形式は、店舗運営者にとって多くのメリットがある。

 しかし、筆者はこのティースタンド形式に警鐘を鳴らしたい。確かに、訪日客が多い地域や場所では、ワンハンドで食べ歩きができる商品を提供する店舗が喜ばれるので、この形式は理に適っていると言える。だが、駅ナカ商業施設のように日本人の利用機会も多い場所では、ティースタンド形式を出店するのは、デベロッパー側に少し考えが足りないと感じてしまう。

 ひとつは行列への対応。ティースタンド形式は椅子がないので、顧客は必然的に店舗の前に列を成す。SCのような大型商業施設であれば、行列も話題性があると感じるが、通路幅が狭い場所では通行人の妨げになってしまう。また、店やデベロッパー側は列を誘導する人員も割かなければならない。そして、これが一番述べたいことであるが、飲み終えたドリンク容器の後始末で、マナーが欠けていると感じる。男性トイレに入ると、小便器の上の荷物置き場に、飲み終えたドリンク容器が置いてある光景をよく見かける。一概には言えないが、容器の後始末についても、提供したテナント、デベロッパーにも責任の一端があると思う。これからもスタンディングで楽しむ飲食店は増える見込みだが、こうしたマナーはきちんと守る体制を整えてほしい。
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