電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第345回

NXPジャパン(株) 代表取締役社長 原島弘明氏


次代を担う4大市場に挑む
車載はS32が戦略デバイス

2019/10/18

NXPジャパン(株) 代表取締役社長 原島弘明氏
 NXP Semiconductors(オランダ、日本法人=東京都渋谷区恵比寿4-20-3、Tel.0120-950-032)は、戦略的に4大市場にフォーカスする。具体的には、(1)オートモーティブ(2)インダストリアル&IoT(3)モバイル(4)通信インフラだ。クアルコムによる買収劇破談から1年余り。再度、独自路線を歩み始めた同社の新アプローチを、NXPジャパン(株)代表取締役社長の原島弘明氏に伺った。

―― スマート社会におけるNXPの立ち位置とは。
 原島 スマート社会は市場を問わず、上流にクラウドの世界が、そして下流にエッジの世界が位置する。当社はこの上流から下流までのポートフォリオを有する。つまりプロセッシング、コネクティビティー、安全&セキュリティー、センシングを具現化する最先端技術を提供する。

―― オートモーティブ市場へのアプローチから。
 原島 焦点は自動運転、電動化、コネクティビティーの3要素。共通ポイントは安全性とセキュリティーだが、かつてクルマは外部からクローズされた世界だった。今後は外からのサイバー攻撃に、徹底した防御が不可欠となる。

―― クルマ全体の構造から具体的に。
 原島 これまでは各機能は分散し、必要なECUはその都度追加され、それらをCANなどで接続していた。これからは機能ごとに分割・整理し、5つのドメイン「パワートレイン系、インフォテイメント系、ボディー&快適系、ADAS(先進運転支援システム)系、コネクティビティー系」として統合する。

―― 5ドメインの戦略デバイスとなるのは。
 原島 「S32ファミリー」だ。セキュリティーも含めたファミリーに共通な機能とドメインごとに特化した機能を組み合わせた製品展開で、ハイパフォーマンスMPUから小型MCUまでソフトウエア開発の一貫性を実現し、最終的には自動運転の世界でもクルマ全体に有効なソリューションである。

―― 2番目のインダストリアル&IoT市場へのアプローチは。
 原島 マシンラーニングとAI(人工知能)の技術を生かし、ロボット、工作機械などの領域でのシェア拡大を狙う。ハイエンドMPUをベースに、ミドルウエアも組み込んだソリューションを提供する。そのブランド名は「EdgeVerse」。セキュリティーレベルも車載・産業分野から幅広いIoTまでカバーするため、ヘビィー対応からライト対応に至るまで、顧客ニーズに応えられる様々なレベルを用意した。産業領域に関しては、ドイツにインダストリアルコンピテンシーセンターという専門部隊を持ち、EUを核とするインダストリー4.0のみならず、日本のソサエティー5.0にも威力を発揮するであろう。

―― 3つ目のモバイル市場へのアプローチは。
 原島 スマートフォン(スマホ)と連動する交通系、決済系、金融カード系など、高信頼性を要求される領域。多くの国で採用されているパスポートの認証技術などの非常に高い堅牢性が求められる分野でも強みを持っている。

―― 無線通信の規格は。
 原島 近距離無線通信ではNFC、さらに遠距離無線通信はUWB(ウルトラワイドバンド/超広帯域無線)といった幅広い技術を提供する。両者ともスマホにおいて非常に重要な無線規格である。これらの無線技術は車載事業においても大変魅力的だ。例えばクルマの鍵は、メカニカルの鍵からセキュリティーレベルや快適性を向上させパッシブキーレスエントリー、そしてスマホへの組み込みがされつつある。カーシェアリングなどに利用するスマートアクセスの需要増加が見込まれる。

―― 通信インフラへのアプローチについては。
 原島 第5世代移動通信システム(5G)が好調だ。NXPはハイエンドプロセッサーと、卓越したRF技術を保有する。ハイパワーで3GHz以下はLDMOS(横方向拡散MOS)、そして3~6GHzではGaN、高周波帯域はSiGeを使ったアレイ型のアンテナと、5Gで求められるすべての周波数帯域をカバーする製品を提供していく。

(聞き手・松下晋司記者)
(本紙2019年10月17日号1面 掲載)

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