電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第350回

韓国、DRAMの次を夢見る「AI半導体」


サムスンらが開発競争に参戦

2020/5/15

 IoT時代を牽引するであろうコア部品「AI半導体」が、にわかに関心を集めている。サムスン電子のExynos9820、エヌビディアのテスラv100、グーグルのTPU、バイドゥのクンルンなどなど。それぞれの方式は異なるものの、いずれもAI専用プロセッサーである。

 近年になって、AIソフトウエアの技術開発が成果を上げ、応用ソリューションの開発が相次いだことから、これを処理するプロセッシング技術も加速度的に高度化し、グローバルメーカー間の競争は熾烈さを増している。

 いままでAI演算処理に最も活用された技術は、CPUではなくグラフィック向けのGPUである。データの入力手順によって順次処理するCPUは、機械学習や推論のような大規模データを処理するには、演算の速度と電力などに限界があるためだ。

 CPUが中央ですべてのデータを処理・制御するのに、演算の量が多くなれば多くなるほどCPUとメモリー間の遅延が問題になる。大規模なデータを処理する場合、速度は遅くなり電力消耗が多くなることを解消したのが、GPUである。

サムスン、SKが開発・実証に着手

 サムスン電子は、2019年に独自のNPU技術を開発し、Exynos9820のモバイル向けアプリケーション・プロセッサー(AP)に搭載した。また、韓国電子通信研究院(ETRI、大田広域市儒城区)とSKテレコム(ソウル市中区)は、AI応用サービスを提供するクラウドデータセンターなど、高性能サーバーに活用できるAI半導体を韓国で初めて開発。20年下期から知能型CCTV、音声認識などをサービスするSKテレコムのデータセンターに適用し、実証する計画だ。

サムスン電子のExynos9820製品(提供:サムスン電子)
サムスン電子のExynos9820製品
(提供:サムスン電子)
 AI半導体の開発競争は始まったばかりで、韓国勢の条件は有利といえよう。韓国は、米中などに先駆けてスタートしている。数十年間蓄積してきたメモリー半導体技術のノウハウと、産学官を網羅する数多くの人材、サムスン電子とSKハイニックスが達成した規模的経済に至るまで、グローバルな競争力を確保している。とりわけ、AI半導体を実用化していく条件の1つとなる5G通信も、すでに本格化している。

2030年を見据えるサムスンのビジョン

 なかでも、サムスン電子が掲げる「半導体ビジョン2030」は、AI半導体を輝かせるビックプロジェクトであろう。データを処理・伝送する非メモリーの割合が高いAI半導体は、CPUと区分けし「神経網処理装置(NPU)」と呼ぶ。人間の脳のように情報を同時並行して処理できるからだ。AI半導体技術が高度化すると、究極的にはメモリー半導体とプロセッサーが1つに統合する時代が到来する。したがって、サムスン電子がメモリー半導体に加えて、AI半導体の技術でも先行すれば、大きなシナジー効果が出せると期待されている。

 サムスン電子は、来る2030年までに、NPUやGPUなどのシステム半導体(非メモリー半導体)のR&Dに73兆ウォン、関連する工場建設に60兆ウォン、総額133兆ウォン(約11.5兆円)を投じて「非メモリー半導体業界トップ達成」を目指す。

10年後にはメモリーを凌ぐ市場に

 AI半導体市場には、従来のグローバル半導体メーカーに限らず、グーグルやアマゾン、テスラといった非半導体メーカーが参入している。異種企業同士の協業で産業間の壁を崩し、AI半導体市場を先取りするための熾烈な競争が展開されている。

 AI半導体は、将来的には推論・学習、データセンター・デバイスなど、AIシステムの多機能を支援する超低電力かつ超高性能のニューロモルフィック半導体を中心に進化していく見通しだ。ニューロモルフィック半導体は、脳の神経細胞であるニューロンの役割を担い、メモリー半導体はニューロンとニューロンの間をつなげる機能を担当する。


 韓国政府は、19年から向こう10年間、次世代半導体の育成に1兆96億ウォン(約878億円)を投資する。これによって、ニューロモルフィック半導体など次世代の知能型半導体開発に産学官共闘という国家総力戦で取り組み、DRAM神話に次ぐAI半導体神話の実現を夢見ている。

 AI半導体は、向こう5年以内に実用化され、10年後にはメモリー半導体の市場規模を凌ぐ見通しだ。市場調査会社のガートナーの資料によれば、AI半導体市場は20年の121億ドルから23年は343億ドルまで成長すると予想されている。

電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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