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第385回

フェニテックセミコンダクター(株) 代表取締役 社長執行役員 石井弘幸氏


SiC-SBDを量産化
岡山・鹿児島で生産拡充

2020/7/31

フェニテックセミコンダクター(株) 代表取締役 社長執行役員 石井弘幸氏
 トレックス・セミコンダクター(株)の子会社であるファンドリー、フェニテックセミコンダクター(株)(岡山県井原市木之子町150、Tel.0866-62-4121)は、SiCショットキーバリアダイオード(SBD)の量産を2020年度内に開始する計画だ。シリコンデバイスにおいても新製品の開発・量産化を進めているほか、本社近隣の第1工場と鹿児島工場(鹿児島県湧水町)では生産規模を拡充している。6月に代表取締役 社長執行役員に就任した、石井弘幸氏に話を聞いた。

―― 足元の業績から。
 石井 2019年度の売上高は、前年度比約15%減の132億円だった。前半は米中貿易摩擦が影響して北米の産業系の大手顧客を中心に、全体的に不振だった。20年に入ってからは回復に向かい、新型コロナウイルスの影響も年度内はあまりなかった。
 20年度は前年度比でほぼ横ばいを想定する。車載が大きく落ち込んでいる一方で、産業機器向けは回復している。PC関連やディスクリートも堅調で、トータルでは年初計画どおりに推移している。

―― SiC-SBDの量産化を予定している。
 石井 オリジナル製品として開発を進めてきたが、耐圧650V品のサンプル出荷を開始した。1200V品も続けてサンプル提供を開始し、どちらも20年度内の量産開始を予定している。定格電流は10Aからスタートし、順次高電流品のラインアップを拡充していく。鹿児島工場に6インチウエハーラインを整備し、量産に向けて準備を進めている。
 また、つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)に参画し、MOSFETの開発も行っている。オリジナル製品としては開発に時間を要する見通しだが、ファンドリー対応は21年春から開始する予定だ。

―― 酸化ガリウムデバイスも手がけている。
 石井 本社工場の化合物ラインを用いて、一部加工を受託している。また、6月30日にトレックスが酸化ガリウムウエハー、デバイスを手がける(株)ノベルクリスタルテクノロジーと資本提携したことから、当社も今後その開発・生産に関与していくと見込んでいる。

―― シリコンデバイスもラインアップ拡充を進めている。
 石井 オリジナル製品の新製品として、アクティブクランプMOSFETを量産化した。抵抗を内蔵したパワーMOSFETで、リレーやステッピングモーターなど誘導性負荷の駆動に最適なデバイスだ。また、スプリットゲート構造のMOSFETの開発に着手した。以前からファンドリー対応は行っていたが、20年度内をめどにオリジナル製品のサンプル出荷を目指す。このほか、オリジナルのIGBTやスーパージャンクション(SJ)-MOSFETのファンドリー対応についても開発を行っている。

―― 第1工場への統合が完了に近づいている。
 石井 生産性の向上や製造コスト低減による高収益化を目的に、第1工場内に新棟を建設して本社工場の生産を移設する計画を進めている。新型コロナの影響や顧客からの追加サンプル要求などもあり、一部で遅延が生じているが、承認を得られた分から順次量産化している。20年度内には移管完了を目指している。本社工場にはGaAsレーザーを受託している化合物ラインが残っているが、当面は移管せずに酸化ガリウム生産にも使用する。増強余地はないため、酸化ガリウムのボリュームが増えてくるようならば第1工場への移設などを検討する。

―― 鹿児島工場の生産規模増加の状況は。
 石井 15年秋に取得し、16年春に稼働した鹿児島工場は、トレックスのCMOS製品やIGBT、パワーMOSFET、MEMSなどの生産を順次拡大しており、19年度には単月黒字化を達成した。20年度には通期黒字化を目標としており、現在月1万2000~1万3000枚程度の生産規模を同年度内に同1万5000~1万6000枚に引き上げる。月2万枚規模までは拡張可能なため、21年度以降も生産拡大を図る。また、既存拠点にない同工場の0.35μmプロセスはCMOS製品の生産に、0.18μmプロセスはディスクリートの一部加工に利用している。

―― 設備投資計画は。
 石井 19年度は12億円を投資し、第1工場の統合やSiCデバイス関連装置の導入に充当した。20年度の投資は7億円を計画しており、鹿児島工場でのSiCデバイスの量産立ち上げやシリコンデバイスの増産に投じる。鹿児島工場での能力拡大が完了した後には、第1工場での増強や8インチウエハーラインの導入を検討する方針だ。

―― 今後の事業の方向性について。
 石井 まず、トレックスとのシナジー強化では、CMOS製品やディスクリートでの協業を強化する。ただ、当社におけるトレックス製品の比率は10%であり、それ以外は独自に事業拡大を図らなければならない。新規顧客や新規分野の開拓を推進するとともに、社内のIT化を進めてロス削減に注力したい。生産においては第1工場の統合効果を発揮するとともに鹿児島工場との連携を強化し、収益性向上を図る。


(聞き手・中村剛記者)
(本紙2020年7月30日号1面 掲載)

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