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第386回

アルプスアルパイン(株) 代表取締役社長 栗山年弘氏


HMIなどで統合効果発揮
ニッチトップ戦略を推進

2020/8/7

アルプスアルパイン(株) 代表取締役社長 栗山年弘氏
 2019年にアルプス電気とアルパインが経営統合して誕生したアルプスアルパイン(株)(東京都大田区雪谷大塚町1-7、Tel.03-3726-1211)。20年4月には吸収分割によりアルパインの全事業がアルプスアルパインに承継され、名実ともに1つになった。自動車業界のCASE、IoT社会の実現に向け、ハードとソフトの融合は進化し続ける。代表取締役社長の栗山年弘氏に現況、新生アルプスアルパインの強み、今後の展望などについて幅広く聞いた。

―― 足元の市況感を。
 栗山 自動車関連はコロナ以前と比較し、4~6月は4割減、7~9月は2割減と見て、上期で3割マイナス、下期は1割減と予想し、通期で2割マイナスと見通している。21年度もコロナ後遺症は続くと見ており、1割程度のマイナスと予想する。
 一方、スマートフォンも台数的には消費マインドの冷え込みもあり、市場では5~10%のマイナス影響が見込まれているが、カメラの高機能化に伴い、当社のアクチュエーターのニーズは今後も増えると見ており影響は薄い。

―― 経営統合の効果は。
 栗山 20年4月にアルパインの全事業を一体化したのを機に、日本国内では完全に統合が果たせた。新規開発プロジェクトなど、旧アルプス、旧アルパインの垣根なく推進できる環境・体制が構築できている。
 日本の統合化は完了したので、今年度は海外の統合が大きな流れとなる。米国、欧州、ASEANでの拠点統合、中国では重複している機能・組織を1つにしてワンマネジメント化を加速させる。
 なお、海外ビジネスは特に車を筆頭に日米欧のお客様が3分の1ずつでバランスしており、今後もこの3地域をバランスさせたビジネス展開を図っていく。

―― 実際の事業推進における統合の強みは。
 栗山 入力(インプット)を得意とする旧アルプスと、出力(アウトプット)がお家芸の旧アルパインが1つの会社となり提案が可能になったことだ。また、ハードとソフトの融合によりセット搭載時に不可欠なインターフェースも含め、当社内で顧客ニーズに沿ったシステム提供が図れる。
 車載のHMI(Human Machine Interface)製品領域「デジタルキャビン」などはその一例だろう。旧アルパインがカーナビをはじめ周辺機器で蓄積した実績・蓄積と、旧アルプスのセンサーをはじめとした電子部品の強みをHMIというかたちで活かせている。

―― 貴社の掲げるニッチトップとも言えそうです。
 栗山 走る・曲がる・止まる、モーター駆動という基本機能は車の根幹となるインフラであり、自動車メーカー、大手ティア1メーカーの領域だ。当社はそこで勝負するのではなく、安心・快適・感動という3つの価値を全乗員にもたらすデジタルキャビンなど、当社独自のHMI領域を中心に貢献していく。この価値を認めてお付き合いいただけるお客様を1社1社増やしていくニッチトップ戦略を推進している。コンセプトは自動車メーカーとすり合わせながら、実際の製品化ではシート専業メーカーやドア専業メーカーと協業しながら仕上げていくかたちだ。電動化、自動運転が進んでもコモディティー化しにくい車の個性・バリューに大きな影響を与えるこの領域が当社のビジネス領域と言える。

―― 非接触操作などユニークな製品が多い印象です。
 栗山 HMIの入力では、メカ式のボタンに加え、ジェスチャーなどのタッチレス、音声など様々な選択肢が出てくる。ただ、音声はAIとディープラーニングによるデータ分析に強いGAFAの世界であり、かつ誤入力も心配される。エレベーターなどパブリックスペースでは、音声よりもタッチレス操作が選択されるだろう。特に車では、音声入力のみではなく、安全性の点からも従来からの手で操作する領域は残ると見ている。
 最近の事例では、ドアの開閉時用の静電技術によるキックセンサーの代替としてミリ波を開発中だ。ミリ波は雨や雪など悪天候時でも誤認識しない。そのため、超近接なミリ波を車室内外向けに開発しており、2年後くらいから実搭載が期待できる。


(聞き手・編集長 津村明宏/高澤里美記者)
(本紙2020年8月6日号1面 掲載)

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