東京ロボティクス(株)(東京都新宿区山吹町347)は、2015年設立のロボティクスベンチャー。ロボットによる技術革新を加速させることで、効率的な社会を実現することを目指し、幅広いロボティクス技術の開発を進めている。今回、代表取締役の坂本義弘氏に話を伺った。
―― 現在取り組まれていることを教えて下さい。
坂本 当社では、人間共存ロボットの開発・実現を目指している。ロボットが多く活用されている製造現場だけでなく、倉庫、農場、オフィス、商業施設、家庭などに至るまで、ロボットが活躍し、単純労働や危険作業はロボットに任せ、人はロボットにできない高度な作業に集中するような社会を目指すものだ。そんな人とロボットが共存できるような社会において活躍するロボットの実現を目指し、現在は力制御可能なロボットやビジョンシステムをはじめとした様々な要素技術の開発を進めている。
―― 力制御可能なロボットについて。
坂本 設立時から力制御可能な独自のロボットアームと双腕人型ロボットの開発を進めてきた。当社のロボットは、各関節にトルクセンサーを搭載しており、動作時のトルク値をリアルタイムに取得できるため、インピーダンス制御や素早い衝突停止が実現できる。そのロボットを開発・展開するなかで、ヤマハ発動機(株)(静岡県磐田市)と技術供与に関する契約を20年1月に締結し、共同で量産型の協働ロボットアームの開発を進めている。
―― ビジョンシステムについては。
坂本 「Torobo Eye SL40」を1月に発表した。アクティブステレオ方式を用いた3次元カメラとコントローラーで構成され、カメラヘッドの重さは460gと軽量であるためロボットアームの先端に装着することもできる。業界最速クラスの計測時間150msの性能を備えており、奥行き計測のばらつき誤差は0・06mmを実現。ロボットアームや各種AI技術などを連携させることで、ばら積みピッキング、組立、外観検査、形状測定などに活用でき、採用企業から高い評価をいただいている。
―― そのほかに取り組まれていることは。
坂本 5月にJA(農業協同組合)のアクセラレータープログラム第3期に、応募数211社のなかから当社が採択企業(9社)の1社として選出され、現在実証実験などを進めている。その1つとして、選果場における青果の良否判定をAIビジョンシステムで行い、不良品をロボットアームで個別に取り除くシステムなどを実証している。さらに、左右から挟み込むようなハンドと移動機構を持つ仕分けロボットの開発も進めており、このロボットでコンベアー上に流れてくる段ボールを所定の位置にパレタイズする取り組みもプログラム内で進めている。
このほかに企業間連携も複数進めている。例えば、NTTコミュニケーションズとは、当社のロボット技術とNTTコミュニケーションズの通信技術などを融合し、ロボットを活用した遠隔就労ソリューションの研究開発などを進めている。
―― 今後の方向性について。
坂本 当社では、冒頭にも述べた人間共存ロボットの開発を目指すなか、様々なロボット要素技術を開発しており、力制御ロボットやTorobo Eye SL40など、開発のなかで生まれた技術や製品も提供していくことで事業をさらに成長させていきたい。先に述べたもの以外にも様々な取り組みを進めており、例えば、社内研究用の全身人型ロボットの開発を進めていたが、企業や研究機関などから引き合いがあったため一部外販を開始し、今後本格化する予定だ。そのほかにも22年3月開催予定の「2022国際ロボット展」では新たな製品・技術を複数発表する予定だ。
事業面でも15年の設立から順調に成長を遂げており、創業から毎年増収するだけでなく全期で黒字を計上している。直近の21年9月期も前期に比べて増収を達成。22年9月期もプラス成長を見込んでおり、26~27年ごろにはIPOを目指していきたい。
(聞き手・副編集長 浮島哲志)
(本紙2021年10月21日号11面 掲載)