電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第456回

東京ドロウイングは半導体設計などのアウトソーシングで最大シェア


地域貢献では音と光で注意喚起する製品を石川県能美市に10台寄贈

2021/11/5

中央は東京ドロウイングの小宮社長、左は同寺岡会長、右はシリコンアーティストテクノロジーの班目社長
中央は東京ドロウイングの小宮社長、
左は同寺岡会長、右はシリコン
アーティストテクノロジーの班目社長
 「東京の町工場の集積地として知られる蒲田・大森ゾーンに本社を置くだけに、この地域に特有のカルチャーをしっかりと維持していきたいと思っている。地域貢献としては、コルボという製品を開発した。活用例としては、音と光で消毒液の場所を伝えるという製品。当社の主要拠点が置かれている石川県能美市に10台寄贈させていただいた。このコルボは、200カ国以上の言語に対応することができる」

 こう語るのは、東京ドロウイング(株)(東京都大田区山王2-36-12、Tel.03-5742-8111)にあって取締役社長の任にある小宮純一氏である。同社は、半導体設計、回路設計、プリント基板設計などのアウトソーシングカンパニーとして発展を続けてきた。この分野においては、国内で最大シェアを持つことで知られている。

 また、筐体・構造設計、組み込みソフトウエア、各種シミュレーションをベースとして通信・画像、映像・情報インフラ、車載・医療などの分野において、システム開発から各種プロセス設計、試作からODM供給などを展開している。とりわけ注目されるのは、顧客が実現したいFPGA/ASICを仕様検討から開発を支援し、コンサルティング、ゲートレベル検証まで対応している。つまりは、デバイス開発を一気通貫でできる体制を持っているのだ。

 「コロナ禍にも関わらず、当社の発注は急増しており、フル操業が続いている。現在の事業構成比率は、デバイス、システム開発、プリント基板がいずれも約3分の1ずつとなっており、その他製造10%となっている。非常にバランスがよくなっている。今後も、特定の分野に特化するのではなく、全天候型の企業経営を進めていきたい」(小宮社長)

 同社は、180人の設計リソースを持っており、とにもかくにも短納期設計に強い。仕様検討から製造までの一貫対応も可能であり、RoHS対応もできる。構造設計では65年以上、プリント基板設計では45年以上、回路設計では35年以上、デバイス設計では25年以上の長年培ってきたノウハウを持っており、技術力には自信を持っているという。

 最近になってM&Aも実行している。すなわち、シリコンソーシアムというカンパニーを買収し、子会社のシリコンアーティストテクノロジーの傘下とし2021年5月に発足させた。同社の代表取締役社長に就任した班目広二氏はこう語るのだ。

 「この会社は、台湾のウエハファンドリーでの試作・量産などを支援しているカンパニーであり、東京ドロウイングにとっても今後の事業戦略において重要なポジションを占めるのだ。シリコンファンドリーとの協業をさらに強めていきたい。とにかく目指していることは、ターンキーサービスなのである」

 さて、東京ドロウイングの2021年度上期は前年比22%増の売り上げを達成しており、10%以上の営業利益を確保している。中長期的には過去最高の売り上げである42億円をどこかで超えていきたいという思いがある。ただ一方で、売り上げのアップダウンに左右される経営は目指しておらず、1954年の創業以来、この会社は毎年黒字を続けているのだ。もちろん、雇用をひたすら守っていくという姿勢も強い。

 「東京ドロウイングの創業以来のスピリッツとは何であろうか。それは、『優れた品質と技術で社会貢献』といことに尽きるだろう。また、社員と経営は一体化しているとも考えている。『共育』というキーワードも重要であり、ともに育み、人間性を培い、発展していく、という考え方なのである」


 こう語るのは、同社にあって代表取締役会長の任にある寺岡一郎氏である。寺岡氏によれば、日本のものづくりは後退していると言われるが、チームプレー、団結力、品質の良さという点ではまだまだ世界の信頼を十分に得ているという。そしてまた、東京ドロウイングは、誠実さを武器として、常に選ばれる企業になりたいと思い続けてきた。同社が多くの電子デバイスのユーザー企業に信頼感を得てきたのは、何と言っても嘘をつかない誠実さにあると言えるだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2020年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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