半導体材料において日本企業が持つ強さは際立っているのだ。かつては世界シェア60%を持っていたが、現状においても50%強のシェアを持ち、国別で言えば独走状態である。もともと素材系については半導体に限らず、日本は得意技にしてきたという歴史がある。
半導体材料における世界ランキングトップは信越化学工業であり、一番大きな分野であるシリコンウエハーで世界首位の座にあり、フォトレジストにも強い。第2位は住友化学であり、半導体プロセス材料、化合物半導体材料さらにはオプト系の材料に強いことで定評がある。世界3位はレゾナックであり、後工程材料のほとんどを揃えられる会社として国内外にその名を知られている。
シリコンウエハーについては、前記の信越化学工業が世界シェア首位であるが、2番手のSUMCOもここにきては追い上げてきている。佐賀県神埼郡吉野ヶ里町で予定していた300mmシリコンウエハーの新工場建設は延期しているものの、既存拠点の高度化投資を強化している。
シリコンウエハー上に回路パターンを作り込む際に不可欠なのは、感光材となるフォトレジストである。この分野における日本企業のパワーは凄まじいものがある。何と世界シェア9割を握っているのだ。現状におけるトップは東京応化工業であり、シェア29%。これに次ぐのがJSRであり、同28%となっている。3番手が信越化学工業で同16%、4番手が住友化学で11%、5位が富士フイルムで8%となっている。ここまでのシェアを持つと実に大変なことになるのだ。日本企業の作るフォトレジストが止まれば、世界の半導体が全く作れなくなるからだ。
フォトマスクという分野も凄まじい伸びを示しており、世界市場は1兆円を超えてきた。外販向けフォトマスクの市場シェアはTOPPANのフォトマスク事業をルーツとするテクセンドフォトマスクが首位を握っており、シェア40%を持っている。世界3位に位置するのが大日本印刷(DNP)であり、21%のシェアを持っている。
レゾナックは昭和電工と日立化成の合弁で作られた会社であるが、半導体の後工程材料の分野では世界トップにランキングされている。エッチング系のガスという分野で見れば、レゾナックは世界で一番強いカンパニーなのである。また、SiCパワー半導体のエピウエハーの分野においても世界トップの技術と量産体制を確立しており、外販企業としてはトップシェアを持つ。
日本のプラスチックのパイオニアである住友ベークライトは、半導体封止材において世界トップシェアを獲得している。後工程のパッケージ基板、半導体メモリーに使うウエハーコート樹脂も高いシェアを持っているのだ。
半導体という製品は基礎素材という点でも多くの材料を使い、製造するプロセスにおいても多彩な材料を必要とするのだ。半導体材料で世界トップを走る日本企業の今後の設備投資、開発動向には、しっかりと注意を払わなければならない。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。