電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第686回

国内半導体メーカーにファブライトの時代がやってきたのだ!


ソニーはTSMCにCMOSセンサーを依頼、ルネサスも高崎工場閉鎖

2026/8/28

 水平分業と垂直統合という図式で言えば、世界の半導体産業は水平分業が依然として主役だ。実際のところ、2024年段階で見れば、すべてを一社の中でまかなうIDMは全半導体生産の44%になっている。ファブレス、つまりは工場を持たないで生産を外注する企業は37%を占めている。そしてまた、ファブレスから受注するシリコンファンドリーは14%を占めており、後工程専業のOSATは5%を占有している。

 ファブレス&ファンドリーのカルチャーが急台頭してきたのには訳があるのだ。自社内で設計した半導体を量産すべく、大型設備投資を実行するのにはいつだってリスクが伴う。工場を立ち上げたは良いが、半導体市況が悪化し、この稼働が遅れることにより大きな損失を被ることになる。好きな時に好きな分だけファンドリーに外注すればリスクは回避できるのだ。

 一方で、シリコンファンドリー側にもメリットは多い。まず、ファンドリー企業には営業所は必要なく、向こうから注文してくるからして楽チンなのである。そしてまた、発注する企業からあらゆる開発の状況を知ることができるわけであり、研究開発投資も非常に少なくて済む。しっかりとした半導体の受注生産ができれば、まさに笑いの止まらないビジネスなのである。

 それはともかく、ここにきては国内の半導体大手がファンドリー発注を軸とするファブライトに向かっていることには驚かされるばかりだ。直近の例で言えば、国内第2位の半導体メーカーであるソニーがTSMCと組んで、熊本に合弁会社を設立し、29年からスマホ向け画像センサーを量産するのだ。ソニーは約4650億円、TSMCは約2820億円を新会社に拠出する。量産に向けては、日本政府の支援も受けることになっている。具体的には、熊本県合志市にあるソニーの工場内に主力のCMOSイメージセンサーの開発機能と生産ラインを整備する。

ソニーの合志新工場はTSMCと合弁化
ソニーの合志新工場はTSMCと合弁化
 この合弁会社の名前は「アドバンスド・ビジョン・セミコンダクター・マニュファクチャリング」(略称AVSM)。ソニーの連結子会社となり、代表取締役もソニーから選任する。つまりは、ソニーは100%自前による工場建設をほぼ断念したかたちであり、ファブライト志向を強めていることがうかがえる。

 一方、国内半導体企業ランキングで第3位の地位にあるルネサスもまた、自前の工場生産をほぼ諦めつつあるといってよいだろう。かつての主力生産拠点であった群馬県高崎工場について、2~3年後をめどに閉鎖するのだ。同工場は、パワー半導体などを生産してきたが、いかんせん設備が老朽化しており、どうにもならないのだ。敷地内のパワー半導体などの研究開発機能は、近隣施設への移転も検討する。

 ルネサスはAIインフラ向けのデジタルパワー製品の増産に向け自社工場の積極投資を行うなど、「内製」と「外部委託」を使い分けたハイブリッドな生産モデルを志向しており、一概に「ファンドリー任せ」といえるかたちではない。しかし、こうした日本企業のリスクを回避するファブライトの路線は、決して素晴らしいとは言えないだろう。リスクをとって投資するからこそ、死に物狂いで開発し、自社のエンジニアのスピリッツも鼓舞し、立ち上げるという気風が失われる。ひたすら、ファンドリー頼みでは日本の伝統伎が泣いている、と思うのは筆者ばかりではないだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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