広島エリアにおいては、同時多発的に半導体製造装置関連の設備投資が一気に出てきている。この背景は言うまでもない、AIの一大ブームにより半導体産業は200兆円を超える巨大市場になってきたからである。それゆえに、製造装置関連の投資は全世界で活発化している。
しかしながら、広島エリアという狭い地域に数件の大型設備投資が出てくることは非常に稀であると言ってよいだろう。もちろん、このエリアは中国地方の中核的な存在であり、また四国エリアとも深く結びついているため、古来より経済は繁栄しているところなのだ。
さて、半導体の後工程装置の世界トップメーカーともいうべきディスコは、ダイシング装置、バッググラインディング装置の分野で比類のない強さを誇っている。そのディスコが呉市の郷原エリアに新工場を立ち上げている。3期に分けて建設されるが、第1期分は延べ13万3570m²のスケールで投資額は330億円、2028年4月の竣工を予定している。第2期以降は、市場の動向を見て適宜に判断していく。
広島県福山に本拠地を構えるローツェは、半導体工場向けに様々な自動化・搬送装置を開発・製造している。売上高はすでに1000億円を超えており、次の目標として2000億円を想定している。
同社の海外拠点はベトナムに集中しており、まずはベトナム・ハイフォンの敷地23万m²に延べ18万m²の建屋を建設する。半導体ウエハー搬送ロボットや製造装置、モーター制御機器の生産を行う計画で、生産能力は従来の2倍に拡大する。一方、本社の福山においても敷地6万7000m²に新社屋の建設を予定しており、総投資額は約205億円。29年夏の完成を予定しているという。
また、広島の備後エリアに本社を置くタツモは、ボンダーや洗浄装置を展開している。ここにきては、台湾企業と先端パッケージ分野で提携するなど、後工程に注力している。そしてまた、井原市内で新工場用地を取得しており、敷地面積は約1万8000m²、半導体設備投資需要の頃合いを見て、着工に持ち込む考えだ。
広島県福山に本社をもつアドテックプラズマテクノロジーは、製造装置向けRF制御電源などを得意としており、30年までに売上高400億円の目標を掲げている。そのためには、生産キャパを3倍、設計キャパを2倍にし、海外売上比率80%以上を目指すというのだ。とりわけ、半導体製造装置分野には集中する考えであり、積極的な設備投資を展開していく方向だ。
時あたかも、半導体の大手であるマイクロンの広島新工場で1.5兆円という巨大投資が実行されようとしている。広島エリアの半導体の活況は地元経済にも大きなインパクトを与えていくだろう。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。