半導体製造装置のリードタイムは最大24カ月になってきた。まさに、パニック状況なのである。この要因は、なんといっても半導体設備投資が一気に急増しているからだ。2026年の世界全体の半導体設備投資は当初30兆円くらいが見込まれていたが、上方修正される見通しであり、約40兆円とも言われはじめた。
筆者がいつも指摘することであるが、仮に今期の半導体投資が40兆円になったとしても半導体生産額が240兆円になるわけであるからして、健全な範囲にとどまっている投資だと言えるのだ。生産に対する設備投資の割合が20%以内であれば、いうところの半導体の大不況は決して起きない。26年の場合は、48兆円以内に抑えられているわけであり、問題のない水準なのである。
装置メーカー最大手のASMLは、27年のLow-NA EUVの予約が完売しており、生産能力を30%拡大することを検討している。28年の供給分も凄まじい量の注文が入っており、さらに30%増産を検討するほどなのである。キヤノンやニコンなど日本勢が得意とする液浸露光装置の生産能力も27年に30%拡大する見込みであり、28年には追加増設を検討するほどなのだ。そしてまた、エッチング・薄膜成膜装置の納期は従来の2倍の12カ月に延長されている。先端パッケージング・テスト装置の納期も18カ月超えとなっている。
筆者は先ごろ、京都エリアの装置メーカーの調査に乗り出してみたが、これまた凄いことになっている。SCREENは、4~6月期受注高が過去最高水準であり、27年3月期の純利益の見通しを50億円引き上げている。AI向けを中心に高いレベルで引き合いが殺到しているのだ。後工程装置で知られるTOWAもまた、受注高は前年同期比2.1倍の218億円で過去最高となり、世界シェア6割を持つ封止装置は2.6倍の112億円に達する見込みであり、増産に次ぐ増産を強いられている。
こうした状況を見て、中国の半導体製造装置メーカーは納期を武器に追撃に出てきた。中国の主要エッチングメーカーであるAMECは9カ月、CVD装置メーカーのPiotechは10カ月で製品を供給できるという。グローバルの装置メーカーの納期である12カ月よりも2~3カ月短いのだ。
これに加えて、中国の主要半導体メーカーによる積極的な増設も中国の装置メーカーに利得をもたらしている。SMICは装置関連の設備投資を1.3兆円以上にする。CXMTもウエハー生産能力を月産5万~6万枚増やす計画であり、これに必要な装置購入額は1兆円にもなるのだ。YMTCも第3期生産施設を建設中。中国の装置メーカーはここにきて、短納期を武器にビッグチャンスを迎えたのである。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。