電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第471回

7月の自動車生産・販売はまだら模様


各社で電動化戦略が進展

2022/9/26

 昨今の新型コロナの感染拡大影響や、慢性的な半導体の供給不足、不安定な海外情勢など、自動車産業を取り巻くビジネス環境は不透明な状況が続いている。国内主要OEM各社では、部品入荷や物流に遅延が生じており、国内生産ラインの一部では依然として生産調整を余儀なくされているものの、グローバルでは着実に挽回が進められている。

 トヨタが発表した9月のグローバル生産台数は、85万台程度を計画(国内約25万台、海外約60万台)している。7月の生産計画公表では、向こう3か月間(8~10月)の生産計画の平均を月85万台程度と公表しており、9月の生産計画台数もこれに沿った内容だ。

 なお、9~11月のグローバル生産台数は、平均で月90万台程度と高い生産計画としているが、同社では「部品供給の状況と仕入先の皆様の人員体制・設備能力などを慎重に確認した計画となっている。ただし、新型コロナの感染拡大による影響、先を見通すことは依然困難であり、引き続き状況を精査・注視しながら、1日でも早く1台でも多くお客様にお届けできるよう、努力していく」としている。

 ホンダでは、ヴェゼルやフィット、N-BOX、N-WGNなどを生産する鈴鹿製作所(第1ライン、第2ライン)の9月度における生産稼働率を、8月の約7割から約8割へ引き上げた一方で、ステップワゴンやフリード、CR-V、インサイト、シビックなどを生産する埼玉製作所(寄居完成車工場)の生産稼働率を8月の約9割から、9月は約6割へと大きく引き下げており、「海外でのロックダウンや半導体不足など複合的な要因により、不安定な状況が継続している」としている。

国内主要OEMの最新動向

 トヨタの販売台数は、国内が前年同月比25.3%減の10万4431台(軽自動車を含むシェアは29.9%)、海外販売が同3.6%減の69万2748台となり、グローバル合計では同6.2%減の79万7179万台にとどまった。なお、レクサスを含む電動車(HEV、MHEV、PHEV、FCV、BEV)の販売台数は同5.7%減の22万2553台としている。

 7月のグローバルの生産台数は国内生産が前年から約3割減少したことから、同8.6%減の70万6547台となったが、「海外生産は関係仕入先による尽力の結果、同4.5%増の48万4760台となり、7月としては過去最高を記録することができた」としている。

 同社では、需要が拡大するBEVの供給に向けて、日本および米国で最大7300億円を投資し、24~26年には車載用電池の生産を開始することを明らかにした。この投資により、日米で最大40GWhの生産能力を増強するもので、日本ではプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)姫路工場、およびトヨタの工場・所有地に合計4000億円、米国ではToyota Battery Manufacturing, North Carolina(Toyota Motor North America, Inc. 90%、豊田通商株式会社 10%出資)に3250億円を新たに投資し、車載用電池生産を増強していく。

 日産自動車の世界販売は、国内が登録車、軽自動車ともにプラス成長となり前年同月比23.2%増の2桁成長を果たしたものの、海外では米国やカナダ、メキシコ、欧州などで軒並みマイナス成長となったことから、グローバル販売合計では、同13.4%減の26万5905台となった。生産台数は、国内で商用車が減産を余儀なくされたものの乗用車の生産が大幅に増加したことから同39.1%増の5万2022台とし、海外もメキシコやその他地域でマイナスとなったが、米国、英国、中国などで大幅な増産を果たしたことから、グローバル生産合計では同9.4%増の28万4755台と2桁近く拡大した。

28年度の実用化を目指す全固体電池の試作生産設備を公開
28年度の実用化を目指す
全固体電池の試作生産設備を公開
 一方、同社は車載LiB事業を展開するビークルエナジージャパン(株)の株式取得について最終契約書を締結したと発表した。(株)INCJが保有するビークルエナジージャパンの全普通株式を取得し、またビークルエナジージャパンが新たに発行する普通株式を引き受け、ビークルエナジージャパンは日産の連結子会社となる。同社はセルからパックまでの一貫した生産体制及びバッテリーマネジメントシステム技術を保有しており、今後成長の見込まれるハイブリッド車向けの車載用LiB、モジュールおよびバッテリーマネジメントシステムの開発・製造・販売を担っていく。

 ホンダの7月度の国内生産は、前年同月比2.7%減の6万1568台と3カ月ぶりの減少。海外生産は同8.0%増の28万1637台と大きく増加し、世界生産は同5.9%増の34万3205台と2カ月連続で前年を上回った。主要地域別では、北米で14カ月連続の減少としているものの、アジアで同57%増の21万505台(このうち中国では同72%増の16万9306台)と6月に続いて増加しており、部品の供給不足、ロックダウンによる混乱から着実に抜け出した。

 一方、ホンダは中国現地法人である本田技研工業(中国)投資有限公司が、東風汽車集団股フン有限公司、広州汽車集団股フン有限公司と共同で、EV用バッテリーの調達を行う合弁会社「衆鋭(北京)貿易服務有限公司(HDG(Beijing)Trading Service Co., Ltd)」を9月末に設立することを明らかにした。また、ホンダと寧德時代新能源科技股フン有限公司(CATL)は、今後の電動化の加速を支えるバッテリー安定調達体制の確立を目指し、パートナーシップを一層強化する覚書を締結。これらの取り組みによりホンダは、中国におけるEV用バッテリーの長期的な安定調達の実現とさらなる競争力強化を目指していく。

 スズキの7月の世界販売は、前年同月比1.0%増の24万8157台となり、3か月連続でプラス成長を果たした。国内では、軽自動車(ワゴンRやジムニーが増加)、登録車(スイフトなどが寄与)ともに増加し同10.0%増の4万7550台の2桁成長。海外ではインドが同6.7%増の14万5666台と2カ月ぶりに増加したものの、その他地域が振るわず同0.9%減の20万607台と微減ではあるがマイナス成長としている。

 生産台数は、国内が同19.8%増の7万9141台、海外が同7.5%増の21万2898台とともに増加。なお、インド生産は、単月での生産が過去最高を記録している。

 一方、スズキは、次世代モビリティー用ソフトウエア開発の強化にむけて、Applied Electric Vehicles Ltd(豪ビクトリア州)へ出資したと発表した。Applied EVは、電動化や自動運転のソフトウエアなどの技術に強みを持つオーストラリアのスタートアップ企業。スズキは21年9月、基本合意書をApplied EVと締結し、将来の協業の可能性について検討を行ってきた。今回のApplied EVへの出資を通じて、両社の関係をさらに強化し、次世代モビリティー用ソフトウエア関連技術の共同開発の推進や事業シナジーの実現を目指していく考え。

 マツダの国内生産は、前年同月比25.6%増の7万25台(CX-5、MAZDA3、CX-30などが増加)となり、2カ月連続の増加。海外生産も同20.2%増の2万9778台(MAZDA2、MAZDA3が増加)と6月に引き続きプラス成長で推移したことから、グローバル生産は同23.9%増の9万9803台と前年から大幅な増産を果たしている。

 一方、国内販売は軽自動車が同11.3%減の2214台となったものの、登録車が同43.6%増の1万2514台となり、合計では同31.4%増の1万4728台。シェアは登録車が5.8%(前年同月比2.3ポイント増)、軽自動車が1.6%(同0.3ポイント減)、総合計は4.2%(同1.2ポイント増)。

 三菱自動車の国内生産は、前年同月比57.7%増の4万3336台(5月以来、3カ月連続で前年同月比増)、海外生産は同17.6%増の5万3026台(6月に続いて2カ月連続で前年同月比増)となり、グローバル生産合計では、同32.8%増の9万6362台と大幅な増産を記録した。海外生産では、中国で同29.5%減の2560台となったものの、タイが同22.2%増の2万4375台、インドネシアが同14.6%増の1万5717台と大幅な増産を果たしている。

軽自動車のEVモデル「eKクロス EV」
軽自動車のEVモデル「eKクロス EV」
 国内販売は、アウトランダーやエクリプス クロスのPHEVモデルが牽引役となり、同70.4%増の8563台と高成長を達成。6月に市場投入した軽自動車のEVモデル「eKクロス EV」も552台を販売しており、今後のさらなる拡販が期待される。

 SUBARUの生産台数は、海外が前年同月比増13.8%減の1万9161台となったが、国内生産が同25.7%増の5万9718台となり、世界生産合計では、同13.1%増の7万8879台と、3カ月振りに前年超えを果たした。

 国内販売では、軽自動車が2月から6カ月連続で前年割れとなり振るわなかったものの、登録車が同48.2%増の9332台と好調に推移し、国内販売合計は同34.8%増の1万794台と2桁成長としている。

 一方、同社では電動化に向けたロードマップの加速に向けて、国内生産体制を再編。25年ごろをめどにBEVの自社生産に着手し、徐々に車種や台数を増やし、27年以降にはBEVの専用ラインの追加も検討している。具体的には、パワーユニット工場の再編として、次世代e-BOXERの生産ラインを北本工場に整備し、大泉工場でのBEV専用ラインの追加(27年以降を予定)へ備えていく。その後、25年ごろに予定しているBEVの自社生産は矢島工場の混流生産での立ち上げを軸に準備を進めていく。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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