電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第505回

第9回電子デバイスフォーラム京都、大盛況で開催


山下副知事は「半導体・電子部品はすべてのインフラ」と発言

2022/11/4

 「日本電子デバイス産業協会が開催する電子デバイスフォーラム京都は、9回目を迎えました。1000年の都である京都でこのような最先端産業のビッグカンファレンスが開かれていることは、誠にすばらしいと思います。半導体・電子部品はすべてのインフラと切に考えています」

 こう語るのは、京都府の山下副知事である。毎年のように参加される副知事は技術にも明るい方で、このフォーラムの重要性をよくご存じなのである。今回の開催は、2022年10月24日(月)~25日(火)、会場はこれまでと同じ京都リサーチパークでなじみのあるところだ。

 「電子デバイスフォーラム京都は、西日本エリアで最大のカンファレンスとなり、展示会ブースも設けていることで来場者の関心を呼んでいる。新型コロナウイルスでウェブ配信が非常に多かったが、今年はリアル参加が約8割と非常に多い。全体は1100セッションであり、昨年に比べては大幅に増加している。来年は10周年を迎えるので、大型イベントを計画していきたい」

 こう語るのは、電子デバイス産業協会にあって会長の任にある齋藤昇三氏である。同氏は、東芝の副社長の任にあった人であり、NANDフラッシュメモリーを東芝のコアとすることに貢献したことで国内外に知られている。

 さて、京都フォーラムの基調講演は実に興味深いものであった。技術研究組合RaaSの理事長であり、東京大学のシステムデザイン研究センターのトップを務める黒田忠弘教授は、次のように発言した。

 「半導体市場の波は、家電、PC、スマホと移り変わり、現在はDX革命の時代に突入している。物理空間と仮想空間の高度な融合が必要である。日本が反転攻勢するためには、DXの投資が何としてもカギを握る」

 黒田氏は、DX革命は素晴らしいことであるが、同時並行でエネルギー危機が迫っていることを懸念する。2030年には現在の総電力の2倍、2050年には2000倍もの電力をIT機器だけで消費してしまうのだ。とりわけAIの演算量は10年で4桁も増大しており、プロセッサーの電力効率は10年で1桁しか改善していないともいう。

 「テクノロジーによる解決としては、3D集積のチョークポイントを押さえることにある。具体的には、パッケージなど後工程に強い日本の出番が来たのである。今後は、後工程への投資でエネルギーを激減させることができる。設計による解決としては、エネルギー効率が桁違いに高い専用チップ(3D-ASIC)の開発を徹底的に進めることだ。我々はここに総力を挙げている」(黒田氏)

 次いで講壇に立たれたロームのCTO、立石哲夫氏は、力を込めてこう述べたのだ。

 「サステナブルな社会に向けて、世界全体で環境を考慮した取り組みが進んでいる。ロームでは、パワーとアナログにフォーカスし、省エネ、小型化に寄与していきたい。とりわけSiCパワーデバイスは重要だ。2026年には世界トータルでSiCパワーデバイスの市場は3500億円までいくと見られている。ロームはこの時点で1000億円以上の売り上げを目指したい。生産能力は2022年3月期に比べて6倍に引き上げる。ローム・アポロ筑後工場の新棟が開所したことで、これが最大の武器になる。設備投資は22年3月期~26年3月期にかけて1200億~1700億円を投入する構えだ」。

 最後に講壇に立ったのは筆者である。講演タイトルは「大国インドが急上昇、メタバース爆裂の時代が到来する!」というものであった。すでに半導体は65兆円、電子部品は32兆円を達成しており、電子デバイス100兆円は目前に迫っている。とりわけ、日本勢が40%以上のシェアを押さえている一般電子部品こそが、日本の牙城であり、ここを徹底的に強化して、世界に貢献していくことが重要だと訴えた。

 そしてまた、主要な電子部品メーカーの生産は、国内半導体トップのキオクシアを上回っているとも指摘した。2022年度売り上げ見込みでいえば、電子部品のトップはTDKであり2兆2000億円、2位の日本電産は2兆1000億円、3位の村田製作所は1兆9300億円となっていることを重視したいと述べた。そして、京セラやニチコンなどの京都企業がものすごく活躍していることを強調したのだ。これは京都で電子デバイスフォーラムが開かれることがいかにタイムリーであり、いかに適切であるかということを言葉の裏に秘めたわけである。

 京都という街は、平安、鎌倉、室町、江戸、明治、大正、昭和などの文化財、街並みをすべて見ることができるというとんでもない街なのである。1000年生き残った日本文化を象徴しているところであり、我が国日本も国家100年の大計に立って、電子デバイスにおける一大躍進を遂げるべき、と例によって筆者はラストに絶叫した。「まったくもって同感」という拍手の嵐が巻き起こったのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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