電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第502回

キヤノン(株) 専務執行役員 光学機器事業本部長 武石洋明氏


露光装置好調、宇都宮に新工場建設
サービス分野拡充へ新機軸

2022/11/25

キヤノン(株) 専務執行役員 光学機器事業本部長 武石洋明氏
 キヤノン(株)(東京都大田区)の半導体露光装置事業が好調だ。足元では半導体市況の悪化が進み、大手半導体メーカーの設備投資削減が表面化しているが、同社においては高い受注残をベースに、2023年も引き続き成長を遂げることができそうだ。新工場の建設も発表するなど生産体制の強化も進めるなか、インダストリアルグループを統括する武石洋明専務執行役員に話を聞いた。

―― まずは、直近の販売動向から教えて下さい。
 武石 22年度(22年12月期)の半導体露光装置の販売台数見通しは180台(前年実績140台)を計画している。うち、i線は132台(同102台)、KrFは48台(同38台)を見込んでいる。i線はセンサーやパワーデバイス、メモリー、電子部品関連など幅広い用途で需要が伸びているほか、KrFはメモリーやセンサー向けを中心に出荷が拡大している。また、ロジック大手顧客での採用が本格化したことも今期業績拡大の一因となっている。

―― 市況悪化の影響で設備投資を削減する動きも広がっています。
 武石 確かに一部延伸などはあるものの、基本的には高い受注残がベースとなって、今期はもとより来期においても高い成長が見込める状況にある。中長期的な視点からも半導体産業は成長を続けていくと見ており、先ごろ宇都宮に新工場の建設を決めた。

―― 新工場の概要について教えて下さい。
 武石 開発・生産拠点を構えている清原工業団地内に新たに工場を建設する。新工場の敷地面積は約7万m²で、投資額は建設費で約380億円だ。23年下期から着工し、25年上期の稼働開始を予定する。当社はこれまで、21年から22年にかけて生産能力を3割引き上げる投資を行っており、今回の新工場稼働により、生産能力は21年比で約2倍に引き上がることになる。

―― 生産体制に加え、サービス分野でも新たな取り組みを始めました。
 武石 半導体露光装置の高稼働率・高歩留まり、サポート業務の効率化を実現するソリューションプラットフォーム「Lithography Plus」のサービス提供を開始した。新サービスは、これまでに蓄積したノウハウなどを集約してエンジニアレベルフリーの情報に再編集した「ナレッジの形式知化」と、ビッグデータ解析を駆使した「データマイニング」をベースに、サポート業務を効率化すると同時に露光装置の稼働率を高め、顧客の生産性向上に貢献することができる。
 具体的には装置の状態をモニタリングし、メンテナンス結果を分析する機能や装置の停止要因を分析する機能を搭載している。ファブオペレーターは、これらデータに基づき部品交換やメンテナンスなどの運用計画を容易に作成でき適切な装置管理が行える。

―― ナノインプリントリソグラフィー(NIL)に関するアップデートがあれば教えて下さい。
 武石 NILそのものはすでに半導体デバイス製造に使えるレベルには到達している。今は使い勝手の向上やセットアップを早くできるようにし、顧客側での導入をスムーズにできるよう努めている。また、並行して用途拡大も進めている。キオクシアとはメモリー分野で協業しているが、産業技術総合研究所とはロジック分野での取り組みもスタートしている。

―― 今年は久しぶりに国内展示会にも出展されます。
 武石 露光装置事業として国内の展示会に出展する機会はここ数年なかったが、チップレットをはじめとする先端半導体パッケージの盛り上がりを受けて、「SEMICON Japan 2022」の同時開催イベントである「APCS(Advanced Package and Chiplet Summit)」にキヤノンアネルバ、キヤノンマシナリーと合同で出展することを決めた。ぜひ、来場者の方にもキヤノングループの半導体製造装置について知ってもらえればと思っている。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年11月24日号8面 掲載

サイト内検索