商業施設新聞
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第362回

Fortec Architects(株) 代表取締役社長 大江太人氏


建設視点で経営課題の解決支援
建設業界で唯一のコンサル会社へ

2022/12/27

Fortec Architects(株) 代表取締役社長 大江太人氏
 Fortec Architects(株)は、設計、PM(プロジェクトマネジメント)、CM(コンストラクションマネジメント)などの業務を行う企業。しかし同社は設計会社でも、PMの会社でもない。代表取締役社長の大江太人氏は一級建築士でありながらハーバードでMBAを取得した稀有な経歴の持ち主。この経歴を生かして“建設の視点から経営の課題の解決”を行う。目指すのは建設業界で唯一のコンサルティング会社だという。大江氏に話を聞いた。

―― 貴社の業務から。
 大江 設計士としてキャリアをスタートし、その後ハーバードでMBAを取得した。様々な経営トップの方と経営課題の解決に向けてディスカッションさせていただき、建設関連のお話になった際、ではこうしたらいかがですかと提案する。分かりやすい事例でいうと、トップが抱えている課題が効率的な営業所の運用だった際、運用の改善からオフィス移転までお手伝いをした。手がけたアセットとしてはオフィス、工場、研究所、データセンター、店舗、住宅、大学施設など多岐にわたる。

―― あくまで経営課題の解決手段として設計などをするのですね。
 大江 顧問としてのアドバイスから、設計、PM、CMといった実務まで広範囲にわたって支援する。ただ我々は設計会社ではなく、提供している価値は経営課題の解決。設計などはその手段だと思っている。解決の手段として自分で設計した方がいいと判断すれば設計するが、自らは設計せず設計や施工の入札スキームを提案することもある。

―― 建設視点での経営コンサルは珍しいです。起業した経緯は。
 大江 もともと東大の隈研吾さんの研究室を卒業し、竹中工務店に入社した。竹中工務店ではアッパークラスのマンションなどを設計させてもらい、非常に勉強になった。一方で、大学は院に進まなかったため、いずれ海外の大学院に進みたいと思っていた。当初、大学院では建設関連を研究するつもりだったが、建設の世界でMBAを取っている人がほぼ存在していないことが分かった。当時、父が経営している設計会社を継ぐ可能性があり、加えて建設は大きな投資でもあり、大きな経営判断になると実感していた。設計士で財務三表を読める人はかなり少ないし、MBAを取得することで何か新しいサービスができるのではと思った。
 その後、父の会社に移り2年ほど働いてからハーバードへ入った。ハーバードMBAは1学年900人ほどいるのだが、アーキテクトは私だけで改めて希少性を感じた。院で様々な業界出身の人とビジネスについてディスカッションできたことは、今の仕事で経営トップの人とお話する際に非常に役立っている。
 MBA取得後、一度父の会社に戻ったが、MBAを活かした新しいサービスを始めるために2021年7月にFortec Architectsを設立した。

―― 世の中の建設業務で課題と感じることは。
 大江 これまで建設関連の業務を発注する際、機能性などの品質と金額の裏付けがあまりなく、発注者側の責任者も総務部長などが兼任していた。そうなると「あの会社をいつも使っているから」「大手のあの会社がそう言っているから」というように慣習で進み、適正な品質と金額を担保できていない。しかし今は投資する際、株主へ説明・透明性として「この不動産投資、建設の投資は合理的である」という第三者の証明・裏付けが重要となる。最近は外資系の企業が入る案件も増えているが、そうなると適正な品質や金額であるという裏付けはいっそう求められる。当社はその合理性を証明する第三者になれる。

―― 今の時代に求められるサービスですね。
 大江 最近の流れでいうと、建設の専門家として英語でコミュニケーションを取れることも強みになると思う。外資企業が日本の事業に参画することも増えたが、日本で、特に建設業界では、英語でコミュニケーションを取れる人はかなり少ない。直訳ではなく意訳した上でコミュニケーションを取れる人はさらに少なくなり、気が付いたらミスコミュニケーションがあるまま話が進んでいることもある。当社が間に入ることで交渉がしやすくなるし、実際、ある外資系企業が日本のホテル施設に投資する際、間に入ってコミュニケーションのお手伝いやPMなどを行った。

―― 会社の方向性は。
 大江 大きなことを言うと、建設業界で唯一のコンサルティング会社を作りたいと思っている。企業のトップに経営課題の解決としてアプローチし、建設とビジネスを結び付ける会社は存在しない。これはグローバルに見てもそう。建設は大きな投資であり、経営に大きな影響を及ぼすため、我々の仕事は意義があると思う。今メンバーはアライアンスを含めると約20人で、年内にフルタイムのメンバーが4人になる。1年目から資金調達せずに事業拡大を進められたので、この状態で業務を拡大していきたい。

(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2475号(2022年12月13日)(6面)

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