(株)KONA'S(東京都渋谷区)は、(株)トリドールホールディングスの100%子会社で、ハワイアンカフェ・レストラン「コナズ珈琲」を全国に51店展開している。「いちばん近いハワイ」をコンセプトに、パンケーキやロコモコ、店内焙煎したコナコーヒーなどを提供し、各店は連日行列を成す。「丸亀製麺」に次ぐ第2、第3の柱としてグループを牽引する存在として期待されており、同事業について代表取締役社長の阿部和剛氏に聞いた。
―― 足元の状況から教えてください。
阿部 本当に好調で、2025年3月期の売上収益は前期比31.8%増となり、売上収益100億円という目標を1年前倒しで達成できた。直近5年間は売り上げ、利益ともに前期比10%以上増加している年も複数ある。客数が大きく増えているため、それが売り上げにつながっている。
業績の拡大は、積極出店以上に客層の広がりが大きいと考える。アサイーボウルの展開をきっかけに10~20代のお客様が大幅に増え、客層が大きく広がった。映画のキャンペーンメニューも奏功している。また、別ブランドとして、ハワイのドーナツ・マラサダのテイクアウト専門店「PALM WAGON」も展開している。
―― 出店の条件について。
阿部 十分な駐車場があり、90~110坪の広い店舗スペースが確保できるロードサイドを狙っている。主要幹線道路や大通りではなく、他店と並びにくく通りがかりに目に入りやすいような、裏に1本入ったところに出店している。ターゲットである30~50代の女性が多い場所を選んでおり、商圏は10kmほどで、エリアの年収も参考にする。店舗デザインはカラフルなハワイアン雑貨やサーフボードが飾られるなど大きな方向性はあるが、1店1店レイアウトを変え、ハワイ風の外装や内装をこだわって作り込むため、物件の決定から出店まで長い期間を要する。
―― 滞在時間の制限を設けていませんが、どんな意図がありますか。
阿部 いちばん近いハワイのコンセプトに基づき、お客様がゆっくりと好きなだけリラックスできることに価値を置いている。滞在時間は平均で2~2.5時間ほどだが、4~7時間滞在するお客様もいる。
行列が長くなるため、一見は機会損失に見えるが、どの時間帯でもいいなと思う空気感を作れるのは、店の中にお客様がいて、活気があってこそ。また、お客様自身も好きなだけゆっくりできるからこそ、順番を待つことができる面もある。時間制限があれば現実に戻されてしまい、時間を気にしてしまう。帰る時の「来てよかった」という満足感が、期待やリピートにつながっていると考える。
―― 6月26日には西荻窪店がオープンしました。
阿部 西荻窪店は東京23区内として3店目で、正直なところチャレンジ物件。業績の伸長や認知度向上を目指す意味でも都心に展開していきたい気持ちはあったが、スペースや家賃などの条件の折り合いがつかないことが多く、出店が難しかった。高架下への出店は初めてだが、オープン日は列が切れない状態で営業ができた。当初は1階のみでの話だったが、コナズ珈琲はメニュー数が50種類以上と多く、キッチンも広さが必要。客席も確保するため、2階も合わせて使用することとなった。小規模店はあまり展開していないが、せめて西荻窪店のような広さがあれば、また出店しようかと考えている。
―― 今後の出店戦略は。
阿部 関東エリアは引き続き強化し、大阪エリアも出店していきたい。東北エリアへのチャレンジも考えている。まだまだ先にはなるが、北海道も視野に入れたい。
また、コナズ珈琲とは少し違う軸の新ブランドを検討している。コナズ珈琲は郊外中心の展開になるが、別業態店を都心に展開していくことも考えている。規模はコナズ珈琲が90~110坪、PALM WAGONが10~30坪、別業態店は30~70坪で展開していく。
―― カフェ業界はコーヒー豆の高騰で難しい状況にあります。
阿部 これだけお客様に来ていただいている中で、値上げはなるべくしたくない。臨機応変に商品変更の対応が可能なメニュー構成を取り、コーヒーメニューに関しては主力商品であるハワイのコナコーヒーの種類や割合は変えず、それ以外の豆のブレンドの仕方を状況により調整するなどして工夫している。ただ、広いテーブルスペースで、何時間でも居ていただくスタイルであることから、元々の価格設定は高くはないと考える。
―― 販促はどのようにしていますか。
阿部 私が社長に就任してから基本的に変えておらず、インスタグラムに力を入れて宣伝などを行っており、刺さる層にポイントを狙い、マーケティングを行っている。また、新店舗のオープンに際し、広告をあまり行っていないのは、工事などオープンまでの過程自体が広告になっているためだ。ロードサイドのため、地元の車ユーザーに通りがかりに気付いてもらうことがポイント。口コミが一番良いマーケティングだと考えている。
―― トリドールHDにおいて、コナズ珈琲の位置づけ、期待は。
阿部 高い営業利益を目指しており、丸亀製麺に続く第2、第3の柱として期待されていると思う。コナズ珈琲は丸亀製麺を支える形で、出店に関しては頑張れるのではないか。しっかり立地を選び、求められ続ける目的性ある店舗として、店舗同士の距離感は保ちつつ、ぶれずに展開していきたい。
(聞き手・安田遥香記者/サリョールサラ記者)
商業施設新聞2607号(2025年8月5日)(8面)
経営者の目線外食インタビュー