電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第485回

不透明な世界自動車市場、22年市場はまだら模様


依然続く半導体不足、日系OEMは相次ぐ下方修正

2023/1/6

22年の世界新車販売台数は微増

 国内調査会社の見通しによると、2022年の世界新車販売台数は、前年比2.7%増の8490万台と、微増での成長になるとしている。半導体の供給不足については、徐々に解消されているが、一部製品でタイト感が継続しているもよう。なお、今後の自動車市場については、新型コロナの影響により、乗用車の需要が想定よりも低調に推移していることから、23年も楽観視することはできない。

 世界最大の自動車マーケットである中国では、22年11月の自動車販売は、前年同月比7.9%減の232.8万台となり、6月以来5カ月ぶりのマイナス成長となった(中国自動車工業協会:CAAM発表)。内訳は、乗用車が同5.6%減の207.5万台、商用車が同23.4%減の25.3万台。また、このうち新エネルギー車は、同72.3%増の78.6万台と好調に推移し、新車販売台数における構成比率は25%にまで高まっている。CAAMは「ディーラーの成長鈍化、消費の低下により自動車市場の下押し圧力は明らか。23年も乗用車の車両取得税の優遇などを継続することを建議していく」とコメントしている。なお、1~11月の自動車販売台数は、前年同期比3.3%増の2430.2万台で推移している。

 米国市場における22年11月の乗用車販売台数は前年同月比10.5%増の111万台となったが、昨年は半導体の供給不足真っ只中であり、販売台数が非常に低かったということを考慮する必要がある。OEM別では、GMが11月の首位で、トヨタグループを約2.7万台上回った。それでも、トヨタは米国で人気のブランドであり、フォードを約1.7万台上回っている。11月の販売レートは年換算で1400万台、10月の1520万台から減少した。これは前月からの減速を表しているが、11月の結果は依然として、22年の月次で4番目に高い数値となる。なお、22年の1~11月までの累計販売台数は前年同期比9.2%減とマイナス成長で推移している。

 欧州市場における22年10月の新車販売台数は、前年同月比14%増の90.4万台を記録し、8月以降3カ月連続でプラス成長を果たした。しかし、この3カ月間の好調な結果は、7月までの低迷を補うには不十分で、1~10月の累計販売台数は前年同期比8%減の909万台となり、20年の967万台も下回るレベルにある。JATO Dynamicsのアナリストは、「経済的、地政学的な不確実性とともに、販売店での新車在庫不足の影響は、20年のロックダウン時よりも販売台数に大きなダメージを与えている。自動車メーカーがこの新しい現実に適応するにつれ、消費者も納車までの期間が以前より長くなっていることを理解してきている」とコメントしている。

日系OEMは販売台数見通しを下方修正

 日系自動車メーカー各社の22年度上期(4~9月)の業績が発表されたが、その中で通期の販売台数見通しの下方修正が相次いだ。中国では、ゼロコロナ政策(現在では方針転換されている)によるロックダウンで主要都市における販売店の稼働日が減少、米国や欧州市場でも半導体・車載部品不足により日系の主要OEMは生産調整を余儀なくされ、需要に見合う車両を生産できなかったことが響いている。

【トヨタ自動車】
 トヨタの22年度上期(4~9月)における連結販売台数は、前年同期比1.6%増の415.9万台とプラス成長を果たした。地域別では、日本や北米、欧州などにおいて生産制約の影響からマイナス成長となったものの、アジアならびにその他地域は、新型コロナからの回復により、2桁成長で推移した。上期の事業環境を踏まえ、同社では22年度通期の生産台数見通しを前回見通しから50万台引き下げ、920万台へと修正した。また、販売台数見通しは5万台引き下げ、880万台としている。「長くお待たせしているお客様に1日でも早く、1台でも多くお届けできるよう、970万台という計画を掲げて頑張ってきたが、半導体の調達リスクなど、先を見通すことが依然困難な状況であり、計画を50万台引き下げ920万台とした」と取締役・副社長の近健太氏は語る。

 なお、同社では、リーマンショック以降、商品軸の経営に注力し、商品力もさることながら、仕入先や生産現場におけるクルマづくりに取り組んできた。開発、販売、生産効率の向上にも大きくつながり、その結果、損益分岐台数をリーマンショック前と比べて30%以上、引き下げることができたとしている。


【日産自動車】
 日産の22年7~9月期における生産状況をみると、中国では半導体の供給不足と新型コロナに起因するロックダウンにより厳しい生産が続き、前年同期比23.5%減の24.2万台となった。この結果、グローバルの生産台数は同0.8%減の80.6万台にとどまった。また、世界の小売販売台数は、同21.4%減の75万台と大幅なマイナス成長となった。「これは主に、在庫状況の差によるもの。欧州向けのエクストレイルや米国向けのアリアなど、今期の輸出車両の生産は納入後、10~12月期以降の販売に計上される。最も減少幅が大きかったのは中国で販売台数は同30.2%減の24.7万台となった。一方、国内の販売台数は複数の新型車と増産に支えられ、前年から9.8%伸長した。しかしながら、在庫がひっ迫した北米における小売販売台数は同25.4%減の20.4万台、欧州では同20.9%減の6.4万台と振るわなかった」とCOOのアシュワニ・グプタ氏は語った。

 なお、同社では下期の販売台数を上期比で35.5%増と見込んでいるものの、回復のペースは緩やかな状態が続いている。このため、22年度通期の販売台数見通しを、前回計画の400万台から370万台へと下方修正。状況を注視しながら、事業の最適化を図っていく。

2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した軽自動車EV「サクラ」
2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーを
受賞した軽自動車EV「サクラ」
 一方、同社の軽自動車EV「サクラ」が、2022~2023「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。日本独自の軽自動車規格を採用し、現実的な車両価格でバッテリーEVを所有するハードルを下げ、さらに走行性能についてもハンドリングと動力性能が従来の軽自動車を凌駕するとともに、安全性能も360度セーフティーアシストを搭載している点が評価された。

【本田技研工業】
 ホンダの22年7~9月期における四輪車の販売台数は、前年から5.3万台増の97万台となった。日本や中国で前年を上回ったが、米国では特定の半導体不足が主要車種の生産に影響し、販売店において在庫を保有していた前年を大幅に下回り、前年同期比35.8%減の22万2000台となった。

 同社は、米国においてオハイオ州にある3つの既存工場を、北米におけるEV生産のハブ拠点へと進化させることを決定するとともに、EV用バッテリー生産合弁会社の設立をLGエナジーソリューションと合意した。また、最大のマーケットである中国においては、東風汽車集団・広汽集団とEVバッテリー調達を行う新会社を22年9月に設立した。現在、ホンダの中国における四輪車生産販売合弁会社である東風本田汽車有限公司、広汽本田汽車有限公司は、それぞれが独自にCATLからバッテリーを調達しているが、今後はバッテリー調達を新会社に一本化することで調達効率を高める狙いがある。主要マーケットにおける生産・調達体制を強化することで、電動化をさらに加速させていく。

 なお、ホンダでは上期の生産・販売状況を受け(主に北米での減少を反映)、22年度通期の四輪販売台数見通しを前回見通しから10万台減の410万台へと下方修正している。

【マツダ】
 マツダの22年度上期(4~9月)の生産台数は前年同期比8%増の50.3万台、連結出荷台数は同6%減の45.0万台、グローバル販売台数は同22%減の51.4万台となった。22年7~9月の3カ月間では、生産台数・連結出荷台数ともに回復が進んだものの、目標としていた30万台以上の生産・出荷台数に対しては、不安定な半導体調達や輸送船不足などを受け、未達を余儀なくされた。グローバル販売は、上海ロックダウンによる部品調達不足を受け、前年を下回ったものの、22年8月以降は前年並みの水準を確保している。

 上期の事業環境を受け同社では、22年度通期におけるグローバル販売台数の見通しを、22年5月の公表値から13.3万台引き下げ、121.6万台へと修正した。

 半導体の調達状況などを踏まえ22年度下期の生産見通しについて、「半導体については、汎用品への設計変更やダブルソーシングなど様々な手を打ってきたことで、比較的安定的に調達できるようになった部品もあるが不安定な状況は継続している。現状、月10万台以上が生産できている。下期もこのレベルでの生産を図りながら、台あたりの収益単価を改善し、北米など単価の高い地域で利益を獲得していきたい」と代表取締役社長兼CEOの丸本明氏は語った。

【スズキ】
 スズキの22年度上期(4~9月)における世界販売台数は、前年同期比16.6%増の146.3万台となった。地域別では欧州で同43.5%減の7.4万台、アジア(インド除く)で同1.6%減の13.6万台となったものの、インドで同34.4%増の81.4万台、日本で同6.1%増の28.4万台、その他地域でも同38.4%増の15.5万台と大幅に成長し、欧州・アジアのマイナス成長をカバーした。

 一方、国内工場の稼働状況を見ると、21年5月以降、部品供給不足による生産調整が継続しているが徐々に上向いてきており、上期の国内完成車生産は前年度上期から5万台増の40万台にまで改善している。

22年8月にインド・ハリヤナ州カルコダに建設予定の新工場の定礎式を実施
22年8月にインド・ハリヤナ州カルコダに
建設予定の新工場の定礎式を実施
 同社の主要市場であるインドでは、新型「ブレッツァ」や新型SUV「グランドビターラ」の投入などにより販売が好調で、バックオーダーが40万台を超える状況にある。25年の稼働を目指してハリヤナ州カルコダに新工場を建設中で、初年度25万台、最大で100万台の生産能力を確保する計画だが、そこに至るまでの期間は、マネサール工場で10万台の能力追加や、グジャラート工場のCラインを10月から2直化させることで、年換算で12万台程度の追加を確保する。さらに、細かな生産効率の積み上げなどにより、生産台数を伸ばして好調な受注に対応していく考え。

【SUBARU】
 SUBARUの22年度上期(4~9月)における生産台数は、前年同期比24.3%増の42.5万台、連結販売台数は同6.4%増の39.9万台となった。「半導体の供給不足による生産制約のリスクは依然として残るものの、柔軟な生産計画の調整などにより生産台数を確保した」と代表取締役社長 CEOの中村知美氏は語る。なお、生産については、下期も半導体の供給を中心に不透明な状況は継続。そのため、通期の見通しは、チャレンジ目標としていた100万台から97万台へ修正。下期単独ではコロナ前の水準である54万台レベルの生産にチャレンジするとしている。

 一方、連結販売台数では、生産台数の増加に伴い連結売上高に結びつかないパイプライン在庫が増加しているが、重点市場である米国を中心として堅調に推移しており、前年同期から2.3万台増とプラス成長を確保した。通期の連結販売台数見通しについては、生産台数の修正に伴い、期初の94万台から92万台へと下方修正している。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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