電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第488回

半導体製造装置業界、23年は次のサイクルに向けた「助走期間」


生産効率改善や次世代製品開発の好機

2023/1/27

 半導体市場はインフレの進展や金利上昇などマクロ環境の悪化を受けて、2022年後半から在庫調整局面に入ったことから、23年は年間通じて厳しい状況が続くと見られている。WSTSが公表した23年半導体市場見通しも金額ベースで前年比4.1%減を予測。調査会社ガートナーも同3.6%減を予測しており、19年以来4年ぶりのマイナス成長になる見通しだ。

 半導体メーカー主要各社の設備投資もメモリーを中心に弱含んでおり、23年設備投資金額(CapEx基準)では前年比18%減、WFE(Wafer Fab Equipment)基準では同2割超のマイナスが予想されている。メモリー大手の米マイクロンテクノロジーの23年度(23年8月期)設備投資金額は70億~75億ドルとミッドポイントでは前年度比30%減、WFEに限れば50%超の減額になるとしており、大幅に投資計画を見直している。

 ロジック/ファンドリー分野も足元の状況を反映して、投資を抑止している。台湾TSMCの23年投資金額は320億~360億ドルを計画。ミッドポイントでは前年比6%減となっている。22年末から量産を開始したN3プロセスの立ち上がりがスローペースになっていることなどが減額要因の1つと見られている。

 こうした状況を反映して半導体製造装置市場も、これまでの高い成長率から一転して23年は足踏みを余儀なくされそうだ。業界団体のSEMIでは23年半導体製造装置市場を前年比16%減の912億ドルと予測。22年7月時点では1200億ドルのプラス成長を見込んでいたが、これを大幅に下方修正したかたちだ。地域別販売額では台湾、韓国、中国がトップ3を引き続き形成。20年にトップに立った中国は23年もその地位を維持するとしているが、米国政府が打ち出した対中新規制の影響などを受けて、24年は台湾がトップに返り咲くと予想する。

キャプション「SEAJ主催の新年賀詞交歓会には多くの人が詰めかけた」
SEAJ主催の新年賀詞交歓会には多くの人が詰めかけた
 日本半導体製造装置協会(SEAJ)がまとめた日本製半導体製造装置の23年度(23年4月~24年3月)販売額は前年度比5%減の約3.5兆円。今後個別に公表されるであろう23年度見通しも減収を想定する企業が多いと思われる。こうした下降局面において、23年1月12日に東京都内でSEAJ主催の新年賀詞交歓会が開催された。参加企業からは足元の厳しさから悲観的なコメントが大勢を占めると予想されたが、今のこの踊り場を24年以降の次の波(サイクル)に向けた良い「助走期間」になると前向きに捉える向きが多かった。


 周知のとおり、20~22年は半導体製造装置市場が歴史的な高成長を遂げた期間であり、この間製造装置メーカーの多くがフル生産に追われ、そして部材不足に見舞われた。積み上がった受注に対応するのが精一杯というのが本音のところで、工場の生産効率改善や次世代、次々世代に向けた製品開発など腰を据えて行う取り組みを満足にできなかった側面もある。

 装置メーカーでは今の調整局面をこうした改善活動や研究開発などに充てる好機と考えているところが意外にも多く、24年以降の回復期に向けてしっかり体制を整えていきたいと考えているところが多いようだ。当日の賀詞交歓会も装置メーカーを筆頭に、部材メーカーなどのサプライヤー企業が数多く参加し、大きな盛り上がりを見せた。

 昨年12月の「SEMICON Japan 2022」も、足元が調整局面ながらも会場の雰囲気は高揚感に包まれていた。国策ファンドリー会社「ラピダス」が設立されたこともあり、会期初日は岸田首相が直接会場入り。業界に対する期待をオープニングメッセージで述べるなど、半導体業界が内外から大きく注目される存在になったことを印象づけた。

 短期的には厳しい局面を迎えている半導体市場。ただ、中長期での成長トレンドは不変で、デジタル化や脱炭素化を背景に、今後も高い成長が期待されている。この調整局面をうまく「助走期間」として利用したところが、次の回復期により一層飛躍できることになりそうだ。

電子デバイス産業新聞 編集長 稲葉雅巳

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