電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第498回

23年の自動車市場は反動増でプラス成長予測


日系OEMは電動化加速で攻勢に期待

2023/4/7

 国内調査会社の(株)FOURINによると、2022年の世界自動車市場(88カ国)は、前年比1.6%減の8213万台でマイナス成長となった。新型コロナの感染拡大により低迷した20年は上回ったものの、在庫の減少とそれに伴う車両価格の上昇やロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱、ローン金利の上昇、インフレによる可処分所得の減少などにより、欧米を中心とした先進国市場が低迷したことが、市場全体を押し下げる結果となった。

 一方で、23年の世界市場は同2.7%増の8435万台と予測。前年の市場縮小による反動増が主な要因だが、世界経済が大きく悪化しない限りは、市場は回復基調が続き、24年には再び9000万台を超える規模へと成長する見通しだ。

日系OEMではスズキがプラス成長

 22年における日系OEM主要7社(トヨタグループ、ホンダグループ、日産、スズキ、マツダ、三菱自動車、SUBARU)の世界販売台数は、前年比5%減の2328.9万台のマイナス成長となった。各社とも長引く半導体不足による生産調整や、欧米市場の低迷などを受けマイナス成長を余儀なくされたが、スズキでは、アジア(インド除く)や欧州で厳しいビジネス環境にあったものの、同社のメーンマーケットであるインドで20%を超える高成長を記録するとともに、日本でもプラス成長としたことから、前年を上回る販売となった。インドでの販売実績については、ロックダウンによる販売店の稼働制約や半導体不足による減産影響などもあった21年に比べると、22年はそれらの影響が徐々に解消されたことから、同社の販売を大きく牽引した。



■トヨタ自動車
 トヨタ自動車は、22年度通期の連結販売台数見通しを880万台(21年度実績823万台)としており、22年11月の前回予想から変更していない。しかし、地域別では日本とその他地域を上方修正、欧州とアジアを下方修正している。また、トヨタ・レクサス合計の販売台数見通しは940万台(同951.2万台)で、このうちHEVが263.8万台(同256.5万台)、PHEVが8.6万台(同11.6万台)、BEVが4万台(同1.6万台)、FCEVが4000台(同5000台)を見込む。なお、23年(暦年)の生産台数に関して、現時点では1060万台を上限とした生産台数を視野に取り組んでいくが、半導体などの部品供給不足の影響が不透明であることから、1割程度下方リスクの変動幅を想定している。

4月以降の新体制について語る新社長の佐藤恒治氏
4月以降の新体制について語る
新社長の佐藤恒治氏
 一方、同社では、4月1日から佐藤恒治新社長体制へと移行する。「継承と進化」をテーマとし、これまでの商品と地域を軸にした経営を継承するとともに、モビリティー・カンパニーへの変革を目指していく。電動化では、全方位で取り組んでいくが、なかでもBEVは、従来とは異なるアプローチで開発を加速させる考えで、「足元のラインアップを拡充するとともに、26年を目標に、電池やプラットフォーム、クルマの作り方など、すべてをBEV最適で考えた次世代BEVをレクサスブランドで開発していく」と佐藤社長は語った。

■本田技研工業
 ホンダは、22年にN-BOXが新車販売台数第1位を獲得するとともに、FREEDがミニバン新車販売台数第1位を獲得するなど日本市場で好調に推移。また、北米でもAcuraインテグラが、「2023ノースアメリカンカーオブザイヤー」を受賞している。なお、22年度通期におけるグループの四輪車販売台数見通しは、主に中国での減少を反映し、前回見通しから25万台減の385万台へと下方修正している。

 電動化へ向けた取り組みとしては、日本において新型軽商用BEVを、24年春をめどに発売することを発表。さらに、米国では、LGエナジーソリューションとEVバッテリー生産の合弁会社を設立。GSユアサとは、高容量・高出力なリチウムイオンバッテリーに関する協業に向けて基本合意の締結を発表するなど、クルマの電動化に関する取り組みを強化している。

 一方、コア技術の燃料電池システムにおいては、米GMとの共同開発による次世代FCシステムを搭載したFCEVを24年に北米と日本で発売する。FCシステムの普及拡大に向けては、コストや耐久性が主な課題とされるため、両社は、電極への革新材料の適用やセルシール構造の進化、補機の簡素化、生産性の向上などを図ることで、19年モデル「CLARITY FUEL CELL」比で、システムコストを3分の1に低減。また、耐食材料の適用や劣化抑制制御により、耐久性を2倍に向上させるとともに、耐低温性も大幅に向上させる。

■日産自動車
 自動車業界では、半導体の供給不足が大きな課題となっているが、日産では最大限の供給を確保すべく、供給に問題のない車両生産を優先。また、一部地域でディーラー在庫を健全なレベルまで戻すための生産を急ピッチで進めたことにより22年10~12月期には増産が加速し、22年4~12月(9カ月間)の生産台数は、前年同期比2.4%増の256.6万台を確保している。

 22年度通期の販売台数見通しは、前回見通しの370万台から30万台減の340万台へと下方修正。中国と北米の販売台数を調整したことが要因で、中国は主に新型コロナの感染拡大に起因しており、北米は当初の見通しから全体需要が悪化していることに加え、半導体の供給不足が継続していることが要因となる。

 一方、ルノーグループと日産は、インドで生産と研究開発を強化し、BEVの投入とカーボンニュートラルな生産体制へ移行する新たな長期ビジョンを発表した。インドのチェンナイ市を拠点に、2車種の新型BEVを含む6車種(両社3車種ずつ)の新型車を共同で開発し、国際的な輸出ハブへと高めていく。新型車は、チェンナイ市で設計・生産される予定。また、新型車には4車種の新型CセグメントSUVが含まれ、両社にとってインドにおける初のBEVとなる2車種のAセグメントBEVは、10年以上前に両社が切り拓いたグローバル量産型BEVの専門知識を活かして開発される。

■スズキ
 スズキは、21年5月以降、国内生産において部品供給による減産影響が発生していたが、徐々に上向き、22年4~12月期の生産台数は、前年同期比15.5%増の64.9万台と大きく回復している。22年度通期の四輪車世界販売は、半導体不足による減産影響見込みを最大限に織り込んだことから、22年11月の予想から1.8万台減の302.3万台(21年度実績からは31.6万台増)を計画している。

Auto Expo 2023で発表したBEVのコンセプトモデル「eVX」
Auto Expo 2023で発表したBEVの
コンセプトモデル「eVX」
 今後の成長戦略としては、日本において23年度中に軽商用EVを投入。これを皮切りに、小型SUVや軽乗用などのBEV投入を予定しており、30年度までに6モデルのBEVを展開する。また、主力市場のインドでは、Auto Expo 2023で発表したBEVのコンセプトモデル「eVX」を24年度に投入。30年度までに6モデルを展開する。BEVだけでなく、あらゆる製品・サービスを提供すべく、HEVのほかCNG・バイオガス・エタノール配合の燃料などを使用したカーボンニュートラルな内燃機関車も継続的に投入していく。

■マツダ
 マツダの22年4~12月の生産台数は、前年同期比9%増の80.9万台と前年を上回ったが、グローバル販売台数は同15%減の79.5万台と大幅なマイナス成長を余儀なくされた。22年10~12月期の3カ月では、北米を中心に販売が改善し、前年からプラス成長で推移している。なお、昨今の半導体調達不足や輸送船の不足などの影響を受け、同社では22年度通期の連結出荷台数を108.7万台(前回発表比1.3万台減)、グローバル販売台数を116.3万台(同5.2万台減)へそれぞれ下方修正した。

 「米国は、主に半導体供給や輸送船不足の状況を踏まえ下方修正した。当社の販売は高いモメンタムが継続しており、半導体の調達や輸送船の確保に取り組み、1台でも多く米国の需要に応えていきたい。中国は前年比で総需要は同等だが、内燃機関車の需要が減少し、新エネルギー車は増加し、BEVやPHEVなどへのシフトが加速している。23年度は中国でも新商品の導入を進め、反転攻勢を目指していく」と取締役専務執行役員の青山裕大氏は語った。

■三菱自動車
 三菱自動車は、半導体などの供給不足による生産制約が期初見通しよりも拡大していることに加え、世界的な船舶不足もあり、22年度通期の販売台数見通しを前回の90.8万台から86.6万台へと見直した。主要地域別では、ゼロコロナ政策を22年末まで維持していた影響で需要が低迷している中国、上海ロックダウンや半導体不足の影響を要因とする車両供給不足の影響が比較的大きかったASEAN、北米などで販売台数見通しを変更している。

■SUBARU
 SUBARUの22年度通期の生産計画は、半導体の供給課題による制約の解消が難しいことから、前回計画の97万台から88万台へと下方修正している。この下方修正(9万台)のうち、内訳は22年10~12月期で2万台、23年1~3月期で7万台。一部の部品に使う半導体が不足していることが要因だが、同社では交渉や代替品の開発を進めており、遅くとも23年6月ごろには不足が解消する見通しを示した。なお、「車種によって搭載する半導体が異なるため、日米の生産拠点への影響は状況次第だが、部品の供給状況に応じた最適な生産バランスを取るべく、日米間での生産調整を行っている」と水間CFOは語った。

 一方、22年度通期の連結販売台数は、前回計画の92.0万台から5万台減の87.0万台を見込む。生産制約が出ている車種の受注を止めていたことや顧客が希望するグレードと、現時点で受注が可能なグレードのミスマッチなどが背景にある。

※HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車)

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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