電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第528回

キヤノンアネルバ(株) 代表取締役社長 中島卓実氏


23年は売上高1.5倍目標
磁気センサー向けが好調

2023/6/9

キヤノンアネルバ(株) 代表取締役社長 中島卓実氏
 キヤノンアネルバ(株)(川崎市麻生区)は、真空技術をベースとして製造装置を主力事業に展開するキヤノングループの子会社だ。1967年に日電バリアン(株)として設立され、2005年のキヤノングループ入りに伴い、現社名に変更した。スパッタリング装置を主軸に事業を展開している足元で、磁気センサー向けが大きく伸びている。また、X線源や真空計などのコンポーネント事業も大きく育ってきた。足元の現況や今後の見通しについて代表取締役社長を務める中島卓実氏に話を伺った。

―― まずは足元の業績動向から教えて下さい。
 中島 22年度(22年12月期)の売上高実績は当初、300億円を超えるレベルを想定していたが、結果的には若干下回る結果となった。受注は好調であったが、装置やコンポーネントの生産・組立に必要な部材の調達に苦慮したことが大きかった。23年は、現状の受注残に加え、引き続き好調な受注分をしっかりとこなすことで、前年度比で50%程度の増収を見込んでいる。これを達成するために、これまでの受注生産から顧客フォーキャストに基づいた部品の先行手配など、ある程度のレベルで計画生産に近いことを進めている。

―― 現在の事業の中身は。
 中島 当社は装置事業、サービス、コンポーネント、グループの受託事業と大きく4つの事業領域で構成されており、装置事業は全体の約6割を占めている。装置はスパッタ装置を中心に半導体向けに加えて、電子部品向けも手がけている。半導体分野ではメモリー向けで強みを持っており、特に次世代不揮発性メモリーの1つであるMRAM向けでは高いシェアを誇っている。MRAMの本格量産が進めば、当社の事業も大きく拡大すると期待を寄せている。

―― 電子部品向けは。
 中島 以前はHDD向け磁気ヘッドが主力であったが、市場の成長鈍化に伴い、ヘッド向けの需要は縮小してきている。それに代わって現在急速に伸びているのが磁気センサーだ。薄膜のスパッタリング工程は磁気ヘッドとかなり近く、当社の技術的なアドバンテージを活かしやすい。磁気センサーは近年、車載分野を中心に伸びており、当社における成長アプリケーションとして期待を寄せている。

―― コンポーネント事業はいかがですか。
 中島 産業用検査装置向けにX線源が伸びているほか、近年足元で需要が旺盛なのが真空計だ。ここ2~3年中国の太陽電池製造装置向けに伸びており、富士事業所で生産フロアのレイアウトなどを見直すことで生産キャパを2倍に拡張する。

―― 新規分野への取り組みは。
 中島 新たな分野として、数年前からウエハー接合装置の事業化に取り組んでいる。真空技術をベースにした原子拡散接合によるウエハーボンダーで、4/6インチの化合物半導体ウエハー向けを皮切りに、22年に200mmウエハー対応装置をリリースした。23年6月からは300mm対応機種も投入する予定で、すでに欧州大手顧客での採用が決まっている。ウエハー接合工程は半導体製造のあらゆる分野で採用が広がっており、常温での接合が可能という特徴を活かし、積極的に拡販を進めていきたい。

―― 最後に今後の中長期の目標をお聞かせ下さい。
 中島 スパッタ装置を主軸にコンポーネント事業も広がりを見せるなど、事業ポートフォリオは着実にバランスの取れたものとなってきている。今後新規事業のウエハー接合装置も強化することで、まずは売上高500億円の達成を当面の目標としていきたい。同時に事業規模拡大に向けて新卒採用だけでなく、中途採用も積極的に行っていく計画だ。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2023年6月8日号9面 掲載

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