電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第3回

充実の立地企業優遇策


最大3億円を補助 進む産業集積

2015/9/25

 本紙8月6日号と8月13日号の2回にわたり、岩手県奥州市の小沢昌記市長のインタビューを掲載した。今回は、同市がさらなる産業集積を目指して注力する企業誘致施策を中心に詳述する。

■製造業事業所数は岩手県内トップ
 東北地方のちょうど中央に位置する同市には、東京エレクトロン東北(TEL東北)、フジキン、ファインシンター東北、プランゼージャパン、関東化学、田中貴金属工業、大井電気、TKR、デジアイズ、天乃屋、東北田村米菓といった多種多様なものづくり企業が立地している。中でも、産業集積という点では、TEL東北の立地を契機に同社へのサプライヤー企業が相次ぎ進出するなど、半導体製造装置関連産業の集積が本格化している。
 また、同市の隣の金ケ崎町の岩手中部工業団地には、1993年に関東自動車工業が進出、現在のトヨタ自動車東日本の岩手工場が設立された。以降、自動車関連企業の集積が続いている。こうした産業集積により、奥州市などの北上川流域地域は、岩手県内の製造品出荷額の実に65%を占める。
 同市をはじめとし、北上川流域におけるものづくり産業の集積は、昭和40年代後半から始まった。当時は水沢市、江刺市などに分かれていた現在の奥州市にも大規模工業団地が整備され、先述のような産業集積も始まっている。
 ちなみに、平成24年の工業統計調査によると、奥州市の製造業の事業所数は287となっており、岩手県の中ではトップだ。
 また、従業員数は9300人ほどで、業種別では生産用機械が2000人超に達しており、工業製造品の出荷額は1725億6000万円(平成25年の速報値)となっている。

■生き続けるものづくりDNA
 こうした産業集積が進んでいる要因は様々だが、平安時代以来脈々と受け継がれるものづくりのDNAはその一つとして欠かせない。経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されている南部鉄器や岩谷堂箪笥を通じて、こうしたDNAは現代の奥州市の人材にも受け継がれている。
 また、交通の要衝という点も大きな要因だ。市内の大規模工業団地である「江刺フロンティアパーク」(写真)、「江刺中核工業団地」からは、周辺各自治体の大規模工業団地へ車で20~30分程度の距離であるうえ、トヨタ自動車東日本本社がある第二仙台北部中核工業団地、仙台北部中核工業団地には車で70分の距離だという。こうした地理的条件は、東北地域内での産業集積という観点から考えれば、絶好のロケーションとなっている。

■リース経費の50%以内を5年間補助
 奥州市は、さらなる産業集積の実現に向け、企業誘致活動を一層活発化しており、補助金など立地企業への優遇策を充実させている。
 その具体策を紹介する。まず、「江刺フロンティアパーク」と「前沢本杉工業団地」へ立地した企業に対し、最大で3億円の補助金を交付する。
 また、「江刺フロンティアパーク」のリース活用企業に対し、賃借に要する経費の50%以内の額を5年間補助する施策も打ち出している。さらに、以下の優遇策を準備している。
▽固定資産税は最大で5年間の課税免除
▽岩手県単独の融資制度を利用した場合、融資金3億円を限度に3年間の利子全額を補給
▽「企業立地奨励工業用水補給金制度」の適用地域において、従量料金のうち54円/m3を超える料金を補給
▽空き工場を活用して事業活動する場合、月額賃料の2分の1(月額30万円上限)を3年間補助
 同市は今後も、このように充実した優遇策を、国内での新拠点構築を視野に入れているものづくり企業に対して強力にアピールしていく考えだ。

(聞き手・編集委員 甕秀樹)
(本紙2015年8月20日号3面 掲載)

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