電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.2

岩手県奥州市 市長 小沢昌記氏に聞く(下)


近隣自治体と定住促進で提携
都会にない豊かさ・幸せを追求 基幹産業立地の強み活かす

2016/9/7

岩手県奥州市 市長 小沢昌記氏に聞く(下)
―― 2016年度の企業誘致施策について。
 小沢 これまでと同様、パブリシティー展開を強力に実施し、中小機構や岩手県とも連携しながら、誘致重点産業を中心とした企業との折衝を増やしていきたい。また、すでに立地いただいている企業に対するきめ細かなフォローアップにも積極的に取り組んでいく。

―― 企業誘致に関して近隣地域とも連携しているのですか。
 小沢 北上市や金ケ崎町など近隣自治体2市2町の間で、広域定住自立圏協定を締結している。2市2町が連携し、地域の魅力、住みやすさを発信している。それぞれの自治体がWin―Winの関係となるよう連携しており、例えば企業立地は北上市であっても、人材は奥州市に居住することもよくあるため、企業誘致と定住促進で提携していく必要がある。
 そのような地域連携をスムーズに進めるためには、行政サービスに自治体間の格差が出ないようにしていく必要がある。例えば、住民の「足」も大きな課題となる。住みやすさ、暮らしやすさを広域で享受できるようにするためには、あらゆる住民の方が不自由なく活用できる交通手段が必要だ。ここからは私の理想であるが、域内に自動運転システムを使った交通機関を走らせたいと思っている。これにより、高齢者の方も確実に足を確保でき、安心して生活できるだろう。

―― 自動運転車の活用というのは、なかなかユニークな発想ですね。
 小沢 自動運転車を実現するには、AI(人工知能)だけでなく道路自体が情報を発信する「道路のスマート化(スマートロード)」も必要だろう。このスマートロードは、道路とITが融合して生まれる新たなイノベーションだ。
 こうした新しいサービスを創造していくことで、都会にはない独自の幸福感や豊かさを味わえる地域にしていきたい。
 また、豊かさを追求するうえで、エネルギーの面でも新たなイノベーションが必要だ。地産地消の分散型エネルギーが確立できれば、都会にはない豊かさを味わえる新しい生き方を提案できる。
 例えば、自動車の燃料はまだガソリンが主流だが、脱化石燃料に向けて水素も活用していくべきだろう。現在、水素を固体化して保存できる技術も研究されており、実現できれば、コンビニで固形水素を買うことも可能になるだろう。
 また、森林も重要なエネルギー源になりうる。日本は世界第3位の森林率(国土に占める森林面積)を誇るが、それを有効活用できていない。山を適切に整備し、森林資源を木質バイオマス発電などのかたちで有効活用すれば、安定した地産地消エネルギーの供給が可能になるうえ、山を守ることにもつながる。
 こうした分散型エネルギーが確立できれば、エネルギーコストを大幅に低減できる。そうなれば、地方にいても幸福感や豊かさを感じることのできる、新しい価値観を提案できる。都会に住むことが幸せとは限らない。奥州市に住めば都会にはない幸せを味わうことができる、という提案ができるようにしたいものだ。

―― 今後の展望についてお聞かせ下さい。
 小沢 当地域における産業クラスターの発展に向けて、魅力ある工業団地としていく必要がある。これまで、物流面の利便性を高めるため道路を2車線から3車線に拡張するなど様々な取り組みを行ってきたが、今後も様々なメディアを通じて情報発信しつつ、来てよかったと思われるようなサービス面の強化が必要だ。期待をいい意味で裏切れるほどのサービスを行っていきたい。
 また、当市に進出している東京エレクトロン東北(株)、金ケ崎町に進出しているトヨタ自動車東日本(株)を筆頭格に、自動車やエレクトロニクスという世界のイノベーションを創造し、かつ今後も成長可能性を秘める基幹産業に立地いただいている点は大きな強みだ。これからも、その強みを活かして企業誘致を進めていきたい。

(聞き手・編集委員 甕秀樹)
(本紙2016年9月1日号12面 掲載)

サイト内検索