電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第63回

フライホイールが本格化の兆し


再エネのアンシラリー用途で導入加速

2014/9/19

 太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギーの普及が進む中、アンシラリー(周波数調整)用途などで期待されるリチウムイオン電池(LiB)、NAS電池、鉛電池などの蓄電池。一方で、欧米を中心ににわかに注目を集めているのが「フライホイール」だ。フライホイールは、電気的エネルギーを回転運動などの物理的エネルギーに変換することでエネルギーを貯蔵し、電力が必要な時に回転運動から発電するもので、「キネティック(運動)・バッテリー」や「メカニカル・バッテリー」とも呼ばれる。もともとNASA(National Aeronautics and Space Administration:米航空宇宙局)が開発した技術だが、国内外の企業が活発に研究開発を進め、製品化している。

 フライホイールの原理は単純だ。大型の円盤(フライホイール)を超高速回転させることで物理エネルギーとして貯蔵し、放出時は物理エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を供給する。

 化学反応により充放電を行う蓄電池と比較して様々な利点を持つ。第一に放電深度による寿命への影響や充放電回数の制限が少ない。充放電回数においてはLiBの1000~2000回(自動車向けで5000~7000回)に対し、20万回以上を実現する。また、入出力特性にも優れており、ミリ秒単位での入出力が可能だ。さらに、LiBがリチウム、コバルトなど比較的高価な金属を使うのに対し、フライホイールは鉄などの一般的な材料を使用しているためコストが抑えられる。

 一方、最大の弱点がエネルギー密度だ。これは入出力特性とトレードオフとなるものだが、LiBが長時間にわたって電力を供給できるのに対し、フライホイールは30分程度しか電力を供給できない。また、定期的なメンテナンスも必要となる。

 用途は、アンシラリーをはじめ重化学工業、自動車、鉄道など様々だ。アンシラリーは、常に変化する再生可能エネルギーの周波数を調節し、系統の安定化を図るものだ。海外ではアンシラリーサービスとして事業を専門的に取り扱う企業もある。

 重化学工業においては石油・天然ガス採掘におけるディーゼルエンジン発電機向けだ。ディーゼルエンジン発電機は常時稼働し、NoX(窒素化合物)などの環境汚染物質を発生させるが、フライホイールをバックアップに使うことでピーク時に電力を供給できる。フライホイールから電力が供給されている間はディーゼルエンジン発電機をオフにできるため、汚染物質の発生が軽減される。また、鉄道においては回生エネルギーの有効利用が可能だ。

テンポラル・パワーのフライホイール
テンポラル・パワーのフライホイール
 導入事例においてはアンシラリー向けを中心に増加している。例えば、カナダ・オンタリオ州に本社を持つテンポラル・パワーは、これまで北米、南米、欧州、中東など10件以上、出力250MW相当のプロジェクトに参画している。最近ではNRStor、Hydro One Networks、アルバ島などの各プロジェクトに導入している。
 NRStorにはアンシラリーサービス向けに同社のオンタリオ拠点に2MWシステムを導入した。今年7月には米エネルギー省長官のBob Chiarelli氏が同拠点を視察したことから話題となった。Hydro Oneには5MWシステムを導入中で、間もなく完了する見込みだ。同社が保有する出力10MW風力発電所のアンシラリー用だ。

 一方、国内では沖縄電力が09年に波照間島に可倒式風力発電設備とともにフライホイールを導入している。フライホイールの出力は30kWで、合計8基設置している。

 また、古河電気工業(株)は、鉄道総合研究所らと共同で次世代フライホイールの研究開発を進めている。これは回転する円盤を非接触で浮上させ、軸受けの磨耗損失をゼロとすることで運転効率を向上させるもの。大幅な高エネルギー密度化が可能になるほか、非接触であるため軸受けの寿命を半永久にできるという。開発のキーとなるのが超電導磁気軸受けだ。超電導バルク体と超電導マグネットで構成され、超電導マグネットで発生する磁場と、それに対する超電導バルク体の反磁性効果により、約4tの円盤を浮上させる。

 同社らは、超電導磁気軸受けを採用した大型フライホイールを早期に開発し、15年度から山梨県米倉山で稼働するメガソーラーと連系する予定だ。同試験に使用するフライホイールは出力300kW、蓄電容量100kWh、最高回転数6000rpmに対応する。

半導体産業新聞 編集部 記者 東哲也

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