電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第538回

国内主要自動車メーカーの生産・販売動向


23年の生産台数は軒並みプラス成長で推移

2024/2/2

 国内主要自動車メーカー7社が発表した2023年11月の生産台数は、主力市場であるインドでの減産が響いたスズキがマイナス成長となったものの、その他6社は軒並みプラス成長となった。また、1~11月累計ベースでは7社すべてがプラス成長となるなど、堅調に推移している。

 トヨタの23年11月の生産台数は、前年同月比11.2%増の92.7万台で11カ月連続の前年超え、単月ベースで過去最高となった。このうち国内生産は、同18.3%増の31.5万台で同じく11カ月連続で前年を上回り、海外生産は同7.9%増の61.2万台で2カ月連続での前年超えとなった。

 ホンダの11月の世界生産は、前年同月比27.1%増の41.4万台となり、3カ月連続で前年を上回った。国内生産は同5.7%増と1桁の伸びにとどまったが、海外では米国や中国で30%を超える増産を果たした。

 日産の11月のグローバル生産は、前年同月比27.4%増の31.7万台と大きく増加した。その他地域(台湾、南アフリカ、ブラジル、インド、エジプト、ロシア、フランス、アルゼンチン)は同42%減としたものの、日本、米国、メキシコ、英国、中国の主要マーケットで大幅に増産。なかでも戦略の練り直しを進めている中国では、販売の回復を受けて生産台数が同83%増の8.8万台となった。

 スズキの世界生産は、前年同月比3.2%減の26.3万台となり、2カ月ぶりの減少となった。国内生産は同2.9%増と9カ月連続で増加しているものの、主力市場のインド、その他地域での減産が大きく影響した。販売面ではパキスタンで外貨不足による部品の輸入規制に伴い、主要モデルのアルトなどが生産できず販売減を余儀なくされている。

 三菱自動車の11月の世界生産は、前年同月比18.0%増の9.8万台。このうち国内生産は同57.3%増の5.3万台で2カ月連続のプラス成長。一方、海外生産は中国市場からの撤退などもあり、同9.0%減の4.5万台で6カ月連続で前年を下回っている。

 SUBARUの11月の世界生産は、前年同月比12.2%増の9.1万台で、10カ月連続の前年超えを記録した。国内生産は同2.4%増の5.8万台で2カ月ぶりのプラス成長、海外生産は同35.2%増の3.3万台となり、10カ月連続で前年を上回っている。

23年11月の登録車国内販売台数 第1位はトヨタ「ヤリス」
23年11月の登録車国内販売台数
第1位はトヨタ「ヤリス」
 なお、国内では1月1日に能登半島地震が発生し、国内のエレクトロニクス企業の生産活動にも一部影響が出ているが、自動車の国内生産には今のところ大きな影響はないもよう。トヨタでは、1月10日に「1月15日以降も引き続き、国内の完成車工場における生産稼働を予定どおり行う。今回の能登半島地震の被災域外の在庫部品の活用に加え、被災工場の復旧めどなどを踏まえ、稼働を継続していく」とのコメントを発表している。


■中国市場で苦戦する日系OEM

【トヨタ自動車】
 23年4~9月の連結累計販売台数は、すべての地域で販売台数が増加し、前年同期比14.1%増の474.4万台。また、トヨタ・レクサスの販売台数は同9.1%増の517.2万台となった。このうち電動車(HEV、PHEV、BEV、FCEVの合計)は同38.1%増の182.6万台で、電動車比率は前年同期から7.4ポイント増加し、35.3%としている。なお、中国事業はBEVの販売が減少したものの、同社の強みであるHEVの堅調な需要により、トヨタ・レクサスの販売台数は前年同期比で横ばいの100.5万台を維持している。

 上期の状況を踏まえ、同社では通期販売見通しを前回から据え置き、連結販売台数が960万台、トヨタ・レクサス販売台数が1040万台とした。地域別では、中国、タイ、ベトナムなどは市場の不透明さを受けて減少を見込むも、堅調な成長を見込む北米やその他地域、供給回復を見込む欧州ではプラス成長で推移すると見ている。電動車は、中国市場でのBEV減少を織り込むが、HEV、PHEVが前回見通しを上回り、全体での電動車比率は37.2%を見込む。

【ホンダ】
 23年度上期の四輪車グループ販売台数は、前年同期比8.3%増の193.4万台。米国では、堅調な需要のもと、半導体の確保による生産の回復と、22年に投入した新機種の競争力により、小売台数は同48.6%増の68.6万台と大きく伸長した。一方、中国では新エネルギー車市場の拡大や価格競争の激化を受け、同12.3%減の61.1万台となった。

 23年度通期の販売見通しは、日本では台数の増加を見込むものの、中国での厳しい市場環境を踏まえ、前回見通しから25.0万台減の410万台へ下方修正している。

 一方、電動化へ向けた取り組みとしては、北米向け新型EVのAcura、ZDX、Prologueなどを24年初頭から市場投入する。また、BMW、フォードと、北米でEVを活用して電力ネットワークの安定化に貢献する新会社「ChargeScape」の設立に合意している。

【日産自動車】
 23年度上期におけるグローバル販売台数は、中国市場で前年同期比34.3%減と落ち込んだものの、日本、北米、欧州で2桁成長を果たしたことから、同3.3%増の162万台となった。重点市場における実績を見ると、日本の販売台数は前年同期比10.7%増の22.8万台。23年4月に発売した新型セレナe-Powerに支えられてセレナ全体の販売は前年から62%伸びた。軽EVのサクラの売れ行きは引き続き好調で同37%増としている。北米市場は、ベストセラーであるローグとセントラが台数を牽引。加えてインフィニティも北米の販売増に貢献し同39.2%増の62.8万台。中国市場における販売および生産台数は、引き続き価格競争の激化などを受け厳しい状況にある。

 このような状況を踏まえ同社では、中国市場における26年までの新たな事業戦略として、①NEVのラインアップ強化、②ローカルアセットの活用、③中国から海外への輸出の3つを明らかにした。これらの計画の実行により中国事業を再び成長軌道に乗せていく。

【スズキ】
 23年度上期における四輪車販売台数はインドネシアやパキスタン、タイ、その他地域でマイナスとなったものの、主力市場であるインドに加え、日本、欧州でプラス成長となったことから、グローバルでは同4.9%増の153.5万台となった。

 日本では、半導体の供給不足解消に加え、23年7~9月期は部品供給の回復に伴ってスペーシアやハスラーなどの高価格帯モデルの生産が増加したことで、モデルミックスが改善した。インドでは、22年からSUVモデルを積極的に投入した効果により、同セグメントでトップシェアを獲得。ユーティリティ・ビークルの販売台数は、前年の16.4万台から14.2万台増の30.6万台となった。また、コンパクト、ミドル、ヴァンなどを含む乗用車の販売台数は、同9.2%増の88.9万台となり、前年に引き続き40%を超える圧倒的なシェアを獲得している。

 インド以外のアジアについては、パキスタンで外貨不足による部品の輸入規制に伴い、主要モデルであるアルトなどが生産できずにマイナス成長。なお、現在は外貨の制限は継続しているものの、安定操業に向けた取り組みを進めているとしている。
 上期の事業環境を受け、同社では四輪車の通期販売台数を前回予想から7000台増の318.8万台へ上方修正している。

【マツダ】
 23年4~9月期のグローバル販売台数は、前年同期比20%増の61.6万台。「販売増の半分は米国での増加によるもので、米国では1台あたりの単価も高く、仕向地ミックスの改善にも貢献している。中国市場は新エネルギー車の販売が強く、内燃機関搭載車の価格競争が激化したことから苦戦が続き23年4~6月期は販売台数が大きく減少。7~9月は一部モデルの価格や装備の見直しによる販売強化を図り、将来のBEV・PHEVの導入を見据えた販売ネットワークの維持にも取り組んだことから、販売は前年を上回った」と毛籠社長は語る。

 上期の事業環境(中国やタイでの低調な販売)を踏まえ、同社ではグローバル販売台数の通期見通しを前回発表値から1.4万台減の128.6万台に下方修正した。販売台数全体の40%以上を占める見通しの北米では、CX-90を23年4月に導入しシェアが毎月着実に改善しており、同年9月のセグメントシェアは3.6%としている。CX-50については、同年7月にアラバマ工場を2直化し、24年1~3月期にはフル稼働としている。米国では23年度に38.9万台の販売を計画しているが、達成されれば同社米国販売の過去最高値となる。

【三菱自動車】
 23年度上期の連結販売台数は、日本、北米以外の地域で前年度を下回る結果となった。一部地域において総需要の弱含みや、船腹不足、湾岸混雑および内陸輸送の能力不足、半導体影響などにより、前年同期比8.7%減の38.9万台にとどまった。

 上期の結果を踏まえ、同社では通期の販売台数を前回見通しから4.9万台減の86.8万台へ下方修正した。

 なお、同社では苦戦が続いていた中国事業からの撤退を決断。広州汽車集団(GAC)ならびに三菱商事(MC)との合弁会社「広汽三菱汽車」について、三菱グループの株式持分をすべてGACへ譲渡。三菱ブランド車の現地生産を終了した。22年12月に新型車を投入し、販売の挽回を図ってきたが、計画の未達が続き、撤退の決断に至ったとしている。

【SUBARU】
 23年4~9月期の連結販売台数は、前年同期比17.8%増の46.9万台。同社の主力市場である米国では、引き続き非常に強いモメンタムがあり、23年暦年の米国小売台数は63万台以上を目指す勢いにある。

 通期の連結販売台数は、前回見通しから変更なく101万台としている。「期初計画時点では、23年度は前年度よりも米国市場向けの出荷比率が減り、また上級グレード以外のグレードの出荷が増える見立てをしていた。しかし、生産台数に上限があるなか、引き続き米国市場における需要が非常に強く、期初計画に対し上期実績におけるプロダクトミックス悪化の影響は縮小。今後は物流制約への対応がポイントとなる」と大崎社長は語る。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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