電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第571回

東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター長 遠藤哲郎氏


車載・光電融合のMRAM
IEEEフェローのダブル受賞

2024/4/12

東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター長 遠藤哲郎氏
 東北大学にあって世界にその名を知られる国際集積エレクトロニクス研究開発センター(仙台市青葉区)は、MRAMをコアとするスピントロニクス半導体の先がけ的な存在である。同センターを陣頭指揮し、東北大学発の半導体ベンチャー企業であるパワースピン(株)の代表でもある遠藤哲郎教授は、先ごろIEEE(米国電気電子学会)の電子デバイスと回路の2つのSocietyからフェローの表彰を受けている。今回はスピントロニクス半導体の方向性や同センターのエポックメーキングな事象について話を伺った。

―― 国際集積エレクトロニクス研究開発センターの最近のトピックスは。
 遠藤 まずは175℃の耐熱性を持つ20nmのMRAMの実証に成功したことであろう。いよいよ200℃という壁を乗り越えることに道筋がついた。車載向けMRAMの世界がはっきりと見えてきた。世界有数の自動車グループとMRAMを使ったAIプロセッサーの開発を進めているが、これにも十分貢献できると思っている。

―― NTTが進めるIOWNとのクロスオーバーについては。
 遠藤 これは実に重要なことだ。エッジコンピューティング、メタバース、AIという分野においては、やはり光電融合デバイスが必要になってくる。NTTはこの分野で世界の先頭を走っている。ところが、10Gbpsという光の超スピード、そして大容量のデータという世界では、既存のSSDは容量はなんとか入っても、スピードがとにかく遅い。頭出しスピードが特に問題だ。スピードの速いSRAMバッファーを追加すると、電力を多く消費してしまう。ローパワーを追求しつつ、大容量対応も可能、そしてウルトラスピードとなれば、MRAMの出番だ。このIOWNとのクロスオーバーを加速するために、NTTのリサーチ・プロフェッサーも拝命している。

―― さて、IEEEフェローを2つお持ちですね。
 遠藤 ダブル受賞というのは名誉なことだと思っている。回路系とデバイス系の2つのSocietyから表彰していただけたことは、そう多いことではないと聞いている。3D-NANDフラッシュメモリーやMRAMの開発と、ロジック系スピントロニクス半導体の開発を同時並行でやってきたが、これが世界に認められたわけであり、もっと精進しなければと気を引き締めている。

―― パワースピンの現状については。
 遠藤 第三者割当増資の資金調達が着々と進んでいる。ジャフコ、三菱UFJキャピタル、トヨタ系のスパークス、JICキャピタルなどが増資してくれている。現在、多くの仕事が来ているので、100人くらいまでは拡充しないといけない。そして、アジア圏・米国に新たな海外ブランチを作ることも検討中だ。キャッシュフローおよび業務受注など経営状態が急速に強くなってきているので、人材獲得、他企業との連携もしやすくなってきた。ぜひともユニコーン企業を目指したい。

―― 台湾の半導体ファンドリーであるPSMCが仙台エリアに進出しますね。
 遠藤 PSMCの狙いは、台湾半導体を一大発展させた新竹のエコシステムを宮城で作ることにある。東北大学の技術・知見とPSMCの量産能力をかけ合わせれば、産学連携、人材育成という点でもメリットが大きい。PSMCは、車載半導体やAI半導体など成長分野への展開を目指していると聞いている。そして、MRAMを含むスピントロニクス半導体や、ウエハー・オン・ウエハーの実装技術、AIチップの設計などの分野での東北大学との連携を打ち出している。

―― 東北への半導体集積がさらに進みますね。
 遠藤 岩手県にはNANDフラッシュメモリー大手のキオクシアや、車載向け半導体のデンソー岩手があり、東京エレクトロンもいる。青森県では富士電機がパワー半導体の増強を進めている。いうところの東北シリコンロードの時代が本格的に幕開けしたといってよいだろう。トヨタ自動車をはじめとする東北エリアへの自動車産業の集積も考えれば、新たなビッグウェーブが巻き起こってくると期待したい。


(特別編集委員 泉谷渉)
本紙2024年4月11日号1面 掲載

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