東京レストランツファクトリー(株)(東京都目黒区)は、高級和食を中心に、ミシュランの星獲得店から専門業態、大衆料理屋まで展開する。今般、外食産業では後継者問題などにより事業の継続が困難となっている店舗が増えている。同社は店舗(事業者)と提携し、事業を継続させ、後世に残す取り組みを本格化している。陣頭指揮を執るFC事業部 事業推進部長の川俣雄二氏に聞いた。
―― まずは沿革から伺います。
川俣 当社代表取締役の渡邉仁が商社から転身し、2002年に会員制のバーを開業し、03年6月に東京レストランツファクトリーを設立した。職人を配置した会食などに利用できる日本料理を提供しており、業態としては高級和食業態「鳥幸」や「ぬる燗佐藤」などがある。
―― 「未来に残したい日本 継なぐプロジェクト」を推進されています。その概要について教えて下さい。
川俣 当社は「妥協なきJAPAN QUALITYを創造し続け、社会に貢献する」を経営理念として、世界から評価される「モノづくりへこだわり」「研ぎ澄まされた美意識」などのジャパンクオリティを発信し、世界に日本のファンをつくることを目指している。今、担い手がなく、ジャパンクオリティが継承されることなく消えていく問題が起きている。そこで当社はアライアンスを組み、継承に課題がある店舗のメニューの分析などを通じて、FCに継承していく事業を始めた。継承した店舗に利益が循環するような仕組みとし、1店を継ぐだけでなく、ビジネスモデルとして仕上げる。日本の中で価値があるものを我々の力で世に広げていけるようなビジネスモデルとして取り組み、社会に良い影響を与えていきたい。
―― 第1弾が渋谷発のスープスパゲッティの元祖「ホームズパスタ」ですね。
川俣 ホームズパスタは代表の渡邉が大学時代からのファンで、足しげく通った店舗。同店の「絶望のスパゲッティ」を求めて、渋谷・宇田川町の店舗はいまだに行列ができる人気店だ。しかし、コロナ禍などで厳しい状況に陥り、渡邉がアライアンスを打診した。1からメニュー分析し、一つひとつ再現した結果、オーナーから合格をいただいた。22年5月にアトレ品川の当社店舗をホームズパスタに変更したのを皮切りに、FC店を含め7店に広がった。
―― ここでも職人を配置するのですか。
川俣 実際にオペレーションを担当するのは若い人たち。経験の少ない人でも味の再現性を高められるように、レシピをパッケージ化した。併せてオートメーション化やIH化により、プロセス管理と温度管理精度を高めた。
―― ホームズパスタのその後の展開は。
川俣 7月に新潟県長岡市内、東京・池袋、東京・成増にFC店をオープンした。25年3月末には名古屋・栄にオープンする予定だ。今期から3カ年で国内50店の出店を目指す考えで、うち東京は15店を開業する計画で、全国の主要都市に展開する予定だ。
―― 第2弾は。
川俣 大阪鶴橋の「鶴橋串焼き 松よし」だ。1974年に鶴橋駅のガード下で開業し、韓国系串焼を提供する屋台で、高(コ)姉妹による門外不出の秘伝のタレとオモニの笑顔が愛され続ける名店である。東京で認知を広めるため、24年6月に新宿西口店を開業したところ、評判となり、9月26日には東京2号店「鶴橋串焼き 松よし 三軒茶屋店」をオープンした。
―― 松よしとの出会いは。
川俣 今回は飲食関係者からの紹介だった。名店が減少していく中、この味を次の世代に残したいと感じ、当社の取り組みに共感していただき紹介を受けた。また、こうした情報を得られるように、商工会議所などに事業承継について登録するなどし、ネットワークを広げている。
―― 従来の和食業態については。
川俣 和食はユネスコ無形文化遺産に登録され、インバウンド客の人気が一層高まっている。なかでも海外で日本酒の需要が高まっていることから、日本酒マーケットを攻めたい。「ぬる燗佐藤」はデベロッパーからも引き合いがあることから、杜氏とコラボしたイベントを検討している。
―― 貴社の今後の方向は。
川俣 従来の和食を中心とした事業と比べ、FCなどの新規プロジェクトはスピード感があり、また直営とFCではPL構造が大きく異なる。外食企業は直営を中心とする場合、営業利益率は10%程度。だが、FCは営業利益率が高く、知的財産を活用することで利益率を高められる。従って、和食を中心とした従来からの事業と、新規プロジェクトはいずれ別会社として展開していく可能性も検討している。
(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2575号(2024年12月10日)(8面)
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